事例紹介
救急車の“たらい回し”を解消せよ! 佐賀県のiPadを使った取り組み
モデルケースとして全国拡大中
(2014/4/7 06:00)
近年、救急医療の受け入れが問題になっている。救急車が病院に連絡しても次々断わられて搬送できない状況が続き、搬送時間も年々悪化。2012年には平均搬送時間が38.7分になったという。受け入れ不可が30件以上続いた結果、助からなかったという痛ましいケースも起きている。
佐賀県では2011年4月に、病院の受け入れ状況をWebベースのシステム「99さがネット」で見える化するとともに、全救急車50台にiPadを配備して検索できるようにすることで、搬送時間を短縮した。この活動の話で、「TEDxFukuoka」にも出演。さらに、佐賀県の事例を見た全国の都道府県にも広がりつつあるという。
その成功を受けて佐賀県では、CIOの森本登志男氏を中心に、行政でのIT活用を次々に進めている。2014年4月からは、モバイル機器を使った1000人規模のテレワークにも取り組み始めた。
こうした佐賀県庁の行政におけるIT化への取り組みについて、森本氏および各担当者に話を聞いた。
救急医療の“たらい回し”解決へ
「まず現場を知ろう」。2010年4月に佐賀県庁の健康福祉本部 医務課に着任した円城寺雄介氏は、さっそく救急車への同乗を希望した。とはいえ、救急医療の現場は忙しく、また管轄の問題もあり、5月に一晩だけ「研修中」の腕章を付けて救急車に乗り込んだ。
救急車に乗ってわかったのは、「病院の情報がない」ことだった。救急隊員は、かたっぱしから電話をかけて受け入れてもらえる病院を探すしかない。6回連続で病院に断わられる様子も目にした。搬送が遅れるのは、救急隊員が悪いわけではないと身をもって知った。
では、病院側に問題があるのだろうか。円城寺氏は同じく受け入れる病院にもお願いして、一晩だけ現場を体験した。そこでわかったのは、短時間で救急の受け入れ要請が次々と来ることだ。たまたまということもあるだろうが、20分で3件の受け入れ要請が来るところにも出くわした。これでは対応不可能だ――。佐賀県では特に、特定の病院に患者が集中しがちなこともわかった。
この経験から「ホテルや飛行機を予約するときのように、空いている病院を見える化する」ことを円城寺氏は考えた。
現場の救急隊員の視点を反映した「搬送先検索」
問題は、救急隊員が検索するデバイスだ。ノートPCを持ち込めないか、顔見知りになった救急隊員に相談したところ、「バカ言うな」と叱られた。車内は狭くてマウスやキーボードの操作は難しい。ではスマートフォンはというと、小さくて情報が見えず、揺れる救急車の中では誤操作しやすく、「もっと使えない」と叱られた。
意気消沈していたところ、ちょうど2010年5月末にiPadが日本で発売され、「これなら使えるのではないか」と飛びついた。「知事がさっそく買ってみんなに見せていたので(笑)、触らせてもらい、いけると思いました」(円城寺氏)。
現場の緊張感を経験したことから、操作の手間は極力減らしてシンプルにした。地区と症状、外科・内科などの診療科目を選ぶと、それだけで候補の病院の候補が本日の搬送実績件数とともにリストアップされる。その病院の最近の搬送実績もワンタッチで表示できる。これなら、闇雲に何件も電話で問い合わせずに済む――。
さらに、“ビニール手袋を取ってから操作する”といった一手間を省くため、手袋のまま使えるように工夫、スタイラスペンも用意した。「最初にプロトタイプを救急隊の人に操作してもらい、『ボタンが小さい』などとまた叱られながら(笑)、不満のあった部分を直して、現場が使いやすいものにしました」(円城寺氏)。
搬送実績の入力についても、できるだけ手間をかけないように工夫した。救急搬送を受け入れる医療機関は忙しいため、入力項目が多いと入力できない。入力されないと使われない、使われないとますます入力されない、と悪いスパイラルになってしまう。
そこで、佐賀県のシステムでは空き状況のリアルタイムな入力をあきらめ、24時間以内の搬送実績を表示することで代替した。この搬送実績も救急隊員にお願いし、搬送を終えた帰りの車内で、報告書類を書くついでに入力してもらっている。この入力でも、入力する項目を最小限にし、さらに大きなボタンで確実に操作できるように工夫した。一方、病院にも、1日2回だけ医師の勤務の情報を入力してもらっている。
「救急隊員は今でも100%入力してくれています。現場に合ったシステムと、彼らの使命感の両方によるものだと思います。ただし、検索は必要がなければ使わなくてもいい、と私は言っています。経験と勘は否定しませんので、最初の電話でうまくいかなそうなときや、域外搬送のときなど、困ったときに使ってくださいと」(円城寺氏)。
今では救急隊員もiPadに馴染んできて、「99さがネット」以外にも活用するようになった。耳の不自由な人と筆談したり、日本語を話せない外国人との会話に翻訳アプリを使ったり、子供を動画であやしたりしているという。
活発に使ってもらうために、アプリは基本的に規制していない。むしろ、救急車1台に1枚ずつ1500円のiTunesカードを配って、自由に使えるようにしている。そのかわり、ギャンブルやアダルトなど公務には不適切なアプリをインストールしないよう、株式会社アイキューブドシステムズのMDM(モバイルデバイス管理)システム「CLOMO MDM」を導入し、アプリのインストールをモニターだけしている。また、同じシリーズの「CLOMO MOBILE APP PORTAL」も導入し、基本アプリを一括配信している。
「99さがネット」の成果として、搬送時間を平均で1分短縮した。一刻を争う患者には1分でも大事だ。また、搬送する病院の集中を緩和したほか、クラウドのシステムによって年4000万円分のコストを削減した。
さらに、年齢や時間帯などデータを分析して政策にも活かせるようになった。たとえば、現場到着に比べて現場から病院までに時間がかかっている地域が存在することがわかった。これは、救急車はあるが病院はないことによるものだと分析され、佐賀県で2014年1月からドクターヘリを導入した。
佐賀県の事例に影響を受けて、ほかの都道府県でも同様のシステムを導入する動きがある。取材した2014年3月時点で、佐賀県を含めた8都道府県が導入し、26都道府県が導入を検討している。
それぞれのシステムは別物だが、群馬県では「99さがネット」をベースにしたシステムを導入し、同じ場所のサーバーを利用しているという。「群馬県のシステムでは、重症度の指定やドクターヘリの運航状況など、独自の機能を追加しています。また、端末もドコモのタブレットを使っています」(円城寺氏)。群馬県では受け入れ不可件数が112件から76件に下がったという。
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