高木 彬光


成吉思汗(ジンギスカン)の秘密


高木 彬光

角川文庫





2013/8/19

昭和48/7/10 発行
 連戦連勝の闘いのヒーローだった源義経の最後には、多くの疑問と作為がちらばっている。−−−義経の首を挙げた鎌倉勢は、蒸し暑い6月に43日もかかって凱旋しているのはなぜか。偽者を頼朝に届けるための首を腐らせる長道中ではなかったのか。アイヌ民族の”ホンカイサマ”伝説が意味するものは。衣川の戦いで義経は落ちのびた!?源氏の白旗とジンギスカンの九りゅうの白旗は単に偶然の一致にすぎないか・・・・・・・・
”蒙古平原の星・ジンギスカンは源義経である”という一人二役の大トリックの謎を、病床の神津恭介はどう解く。

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 名探偵といわれた神津恭介が東大病院に入院し、探偵作家の松下研三と暇つぶしに義経=ジンギスカン説の推理を始める。
 今までは荒唐無稽な説だと思い込んでいたが、こんなにもたくさん、説得できる事柄があるとは思わなかった。ロマンだ。
 雑誌「宝石」に連載した時は、「天城山輪廻の第二部」の章で終わっていて、最終章「成吉思汗という名の秘密」は後で書き加えられたのだそうである。連載終了後、手紙を送ってきた仁科東子を登場させている。以下の内容について、追加された。
 成吉思汗ーーこの名前を、固有名詞と考えずに、日本流の漢語として読む下すと
「成レ吉思レ汗ーーー吉成りて汗(水干)を思う」水干は、白拍子の衣装。ーーー吉野山の誓い成りて静(しずか)を思うーーーとの意味が隠されている。むう!
 『しずやしずのおだまきくりかえし
   むかしを今に  なすよしもがな
  吉野山 峰の白雪ふみわけて
   入りにし人の あとぞ恋しき』   静御前の詠じながら舞ったこの歌も大いに関係しているらしい。
 万葉読みすると、成吉思汗(なすよしもがな)と読めなくもないーーー!返歌なのか?

 スケールの大きな歴史ミステリーだ。


ノストラダムスの大予言の秘密