アフリカ中部・ルワンダ南部の小さな町ニャマタ。美しい丘が連なり、パピルスが茂る湿地が広がる。中心部の小さな教会に、手投げ弾でこじ開けられた扉、血で染まった祭壇の布や人々の衣服が保存されていた。20年前、ここに避難したツチ族の住民約2千人が殺害され、流れ出た血が教会の外で池になった。

 1994年にこの国で大虐殺が始まってから、7日で20年。多数派のフツ族と少数派のツチ族の対立で人道危機に国際社会の対応は遅れ、約100日の間に80万~100万人が殺された。

 教会の近くに住む女性シャンタルさん(46)は、自分の集落がナタやオノを持った民兵の襲撃を受けた4月7日の朝を鮮明に覚えている。前日にフツ族の大統領が乗った飛行機が撃墜されたのを機に、ツチ族への虐殺が始まった。ラジオが盛んに殺害を促していた。

 シャンタルさんは、顔や胸など全身に刃物で切られた傷が残る。「20年前、誰も止めてくれなかったのになぜ今、話を聞きたいのか」と記者に言った。