(望月幸平)
JR東京駅
ここは首都東京の表玄関であり日本各地に延びる国内主要幹線の拠点である
一日に発着する列車の数は東海道東北上越長野新幹線が約850本
特急各種250本
在来線を合わせると約4000本にのぼる
広さは東京ドーム3.6個分
利用客数一日約37万人
この巨大ターミナル駅である東京駅にはJR職員関連企業の社員合わせて常時約1000人が働いている
我々東京駅遺失物係通称お忘れ物預り所職員ももちろんその一員であり…
じゃ出口君よろしく。
(出口一郎)はい!あでもどうしてみんなこういうものを忘れてきちゃうんですかね。
(嶋田福男)どうだい?イケメン新人君。
それぞれのお忘れ物にそれぞれの人生感じるだろ。
え?へへへ…。
はぁ…。
おっあと5分だよ5分。
ハハハ…。
(出口)いいなぁこれから皆さん慰安旅行なんですよね。
富山行くんだ。
富山の温泉!富山はね僕のふるさとなんですよ。
フフ…。
1泊2日なんだけどね。
そうそう。
(村尾由希子)正確には寝台特急の車中1泊入れて2泊。
(嶋田・望月)だよね〜!
(出口)寝台特急かぁ〜。
あと3分…。
3分?東京駅お忘れ物預り所本日もまもなく無事に業務終了!終了!うん。
ハハよかったね。
(伏見康之)すいません。
なんだよ…。
どうされましたか?どうも財布を落としてしまったようなので…。
お財布ですか。
はい。
なくなってるのに気づかれたのは?つい今しがたです。
たぶんこの東京駅構内のどこかで…。
(伏見聡子)どう?あ…。
今落としたばかりだからまだ届いてないかも…。
落としてしまったのは仕方ないわ。
(伏見)うん…まいったなぁ…。
あ家内です。
お世話かけます。
あいえいえ…。
あのお財布の特徴は?あのこのぐらいの縦長でグリーンの革製です。
グリーン…。
あ隅に「Y.F」とイニシャルで。
あ…「Y.F」ですか。
はい。
え〜っと現金やカード類は?現金は8万ほどでカード類や免許証は別にしてありましたから。
8万…。
あと列車の切符。
そのお財布に入れてたのよね?切符ですね。
そうだ…。
何やってんだ俺は…。
仕方ないわよ…。
とにかくどの辺りで落としたか詳しい事思い出しましょうよ。
うん。
よく出来た奥さんですね。
いやホントだよねぇ。
こういう場合さぁ奥さんのほうは大抵ねご主人をさ罵倒したりバカにしたりな。
派手な夫婦ゲンカ始まったり。
ところがさぁこの奥さんさ責めるどころかさ優しく慰めてくれてるじゃないの。
おい!妻とはこうあるべきか…。
ホント!いい奥さんだしさぁ…。
美人だしな…。
(携帯電話)そんなに構内を歩き回ったという記憶はないんですが…。
ああそうですか。
(携帯電話)ご心配でしょうが…。
はい伏見です。
お財布の落とし物ってね案外きちんと届けられる事が多いんです。
(伏見)そうですか。
この仕事やってますとね結構世の中にはいい人が多いんだなって実感出来ます。
そうであってほしいですね。
とりあえずこちらのほうにご記入を。
はい。
(聡子)どうしよう…。
(伏見)え?どうした?多重事故の急患が何人も救急搬送されたらしいの。
私に応援看護に来られないかって。
非常勤の君までにか?そう…。
まあそういう事情だったら行ったほうがいいだろう。
(聡子)でも…。
発車時間まではまだ3時間あるから応援看護を終えてから上野に向かってもまだ間に合うよ。
…そうね。
奥さん看護師さんなんですか?ええ非常勤ですけど麻布中央総合病院の。
ああ…だったらねぇタクシーで15分もあれば…な?ええ。
早く行ってあげたほうがいい。
わかった。
あこれ。
今買い直してきたから。
あなたの分。
ありがとう。
はい。
君は?
(聡子)発車時間までには絶対戻ってくるから。
(聡子)お財布の事はもうしょうがないから。
ね?あいやあきらめないでください。
落としたものはきっと落とし主のもとに帰ってきます。
帰ってきたがってるんです。
(聡子)そうですね。
そう信じたいですね。
ね!ああ。
じゃあごめん。
行くね。
ああ。
(聡子)すいません。
あとよろしくお願い致します。
気をつけて。
あの…後学のためにあの伺っておきたいんですがね…。
(伏見)はい。
あのいつどこでどうやって知り合ったんですか?あんな出来た奥さんと。
しかも美人のねぇ…。
(嶋田満江)嶋田!!うわー来たー!
嶋田さんじゃないけどまだ独り者の自分から見ても素敵な奥さんだと思った
うらやましい夫婦だと思った
ところがそんな夫婦の間にその後とんでもない悲劇が訪れる事になったのだ…
おぉ…もうすぐ入ってくるぞー!何年ぶりかなぁ寝台車の旅!アハハ。
どうしよう!私着くまで楽しくて眠れないかも!
(3人の笑い声)うんわかった。
じゃあそうしようか。
ああ…はい。
(3人)あ…。
いやぁこれはこれは…。
上野発23時ぐらいって伺ってたのでもしかしたらって思ってました。
あ…じゃあ寝台特急「北陸」でご旅行だったんですか!まぁ旅行というか里帰りなんですよ。
え?里帰り?はい。
法事なんです。
富山の実家で父の十三回忌法要がありまして。
それが明日の朝9時からなんで私のようなサラリーマンにとっては夜遅く出て朝早く着く寝台特急のほうが都合がよくて。
いや〜わかります。
あのねぇ僕もね僕もあの富山出身なんですよ。
(伏見)あそうなんですか!そういえば奥様はまだ…?それが今連絡がありましてさっき病院を出たんですがやはりギリギリ間に合いそうにもないと…。
あら…。
どうするんですか?調べたら「北陸」が出たあと23時33分発の急行「能登」の列車があるようなので家内にはそれに乗ってきてもらう事にしました。
あぁ急行「能登」で!それで富山で待ち合わせしようという事に。
なるほど…。
そうですか…へぇ。
あ!おい来たよ!寝台特急「北陸」!嶋田さんはい写真写真…。
はいチーズ。
代わるよ。
あ代わって代わって!いくよ。
でも残念でしたねぇ。
夫婦水入らずの寝台車の旅が出来たはずなのに。
ええまぁ。
でも2人で休みが取れただけでも…。
じゃあ乗りましょうよ!乗りましょう!さぁさぁ乗りましょう。
え〜8番ここじゃない。
ここですか?これ7番だよ。
9番どこだ?あ!嶋田さん9番ここ…。
俺7番。
ここ7番。
あそれ7番?ああよかった。
なんだぁ〜。
お〜ラッキーセブンか!あどうも…。
また…どうも。
(アナウンス)「…富山高岡津幡終点金沢の順に止まります」
(西野妙子)ねぇ…どうするの?予定と違うじゃない。
うん大丈夫。
私は乗ったけど…。
(発車ベル)
寝台特急「北陸」は23時3分に上野を出て約6時間半で関東から北陸へ日本列島を横断する
(3人の笑い声)これだ!あぁ〜!キャ〜!アハハ!え〜!え〜ちょっと…。
そして事件は午前5時頃…魚津を過ぎてしばらくした頃に起こった…
(ノック)はい。
え…!?どうして君が…。
(車掌)お客さん…?お客さんどうしましたか?お医者さん…!お医者さんはいらっしゃいませんかー!
(車掌)お医者さん…!お医者さんはいらっしゃいませんかー!何…!?な…何?
(車掌)しっかりしてください!お客さんしっかり!嘘だろ…!?
(車掌)お医者さんですか?違うけど…!康之さん…!康之さん!おい…。
ふ…伏見さん!?だ…誰かー!誰か…手…手を貸してください!ティッシュとか…タオルとか!なんでも…!康之さん…!おいおい…。
どうして…!?ちょっとすいません。
あすいません!あの次の停車駅の富山まであと何分ですか?約15分です!救急車の待機を。
警察にも連絡してください!はい!康之さーん!
(救急隊員)すぐ救急車乗りますからね。
大丈夫ですよ〜。
ゆっくりな。
はいもうすぐ病院に着きます。
回るよ。
(救急隊員)はい乗せます。
(救急隊員たち)せーの…!俺病院まで付き添うから。
村尾さんあとお願いね。
わかった。
頼む。
私ともう1人の男性が車内で応急処置を…。
あれ…?あとにかく急いで病院へ!
(救急車のサイレン)大変な事になったなぁ…。
強盗かしら?う〜ん…とりあえず僕らはねぇホテルに向かいますか。
そうですね。
おいおい…!俺の鞄…俺の鞄だよ!コラ〜!奥さん…!あらあなた東京駅の…。
実はご主人が大変な事に…。
え?どうしたんですか?主人が何か?
(心電図モニターの音)
(看護師)先生ドゥルック下がってます。
(医師)輸血全開。
(看護師)はい。
(医師)リドカイン投与して!
(医師)はい!お願いします!
(扉の開く音)どうなんですか?伏見さんの容体は…。
依然意識不明の状態です。
大丈夫ですよね?た…助かりますよね?全力を尽くしておりますから。
ご家族の方は?奥さんが1本あとの急行で到着するはずなんです。
(工藤哲夫)富山県警富山東署の工藤です。
あの失礼ですがお宅さんは?望月と申します。
あ望月さん。
あの…被害者とはどういう関係ですか?はぁ今日たまたま知り合ったといいますか…。
私JR東京駅の遺失物係で…。
奥さん!主人は…主人は助かるんですか?出来る限りの事はしております。
あ…しっかり!伏見さんの奥さんです。
嶋田さんは?警察。
警察…!?鞄置き引きされちゃって。
置き引き!?あらら…。
(増岡裕介)工藤主任!おう。
ガイシャの身内の方が…。
(伏見初枝)聡子さん。
あんたどうして康之と一緒にいなかったの?一緒に来るはずだっただろ。
それは…。
申し訳ございません!あの…あの…聡子さんは出かける直前看護師として急な仕事が入ってですね…。
(初枝)誰?あ…いや私…?私はその…たまたまなんですけど…。
(初枝)聡子さん。
今日が伏見家の法事の日だって事は重々承知のはず。
申し訳ございません。
あんたほとほと運のない女だね。
6年前の事といい今回の事といい…。
お義母様…。
(初枝)お前伏見家を潰す気か!顔も見たくない!聡子さん…!いらっしゃいませ。
ごゆっくりどうぞ。
そうか…伏見家っていうのはあの「おわら酒造」の…。
はい。
主人は東京支社の支社長で。
それはそれは…。
嶋田さん知ってるんですか?いや知ってるも何もねぇ伏見家っていうのはなこの富山じゃ200年から続いた造り酒屋の老舗おわら酒造の事なんだよ。
地元の人間なら知らない者はいない名家だよ!へぇ〜!そうか。
その伏見家のその御曹司が襲われたってのか。
これ大変だなぁ!あの…聡子さん一応お部屋1室取りましたんで。
ありがとうございます。
そういえば聞きましたよ。
嶋田さんも大変でしたね。
鞄置き引きされたんですって?いやいや…大した事ないよ。
あんなものは。
ハハ…。
え?はいはいはい…。
ヒィ〜!!置き引きだと?いやいや…な…なんで…?いやいやちょっ…!それが大した事ないだ?コラ!助役?どうしたんですか?私もね有休もらったのよ。
えっ!?え?どうしたの?何?目がどうかしたの?うわぁあれ…あれが蜃気楼…。
わぁすご〜い!ミステリアス〜!幸平。
幸平知ってるか?この初夏に見える蜃気楼ってのはなぁあの黒部の山々からこの富山湾に流れ込んだね冷たい雪解け水と空中の暖かい空気が層になってなそれで光が屈折して起きる現象なんだよ。
わかった?はぁ…。
本当はそこにはないはずなのにあたかもそこにはあるかのように現れる…!あぁ…不思議ねぇ!お前が蜃気楼だといいのにねぇ。
いちいちいちいち…!
(満江)寝台特急の中で傷害事件?ビックリですよ!大丈夫かなぁ?1人にしておいてさぁ。
一緒に来りゃいいのに…。
ご主人があんな事になってるんだからそんな気になるわけないじゃないですか。
ん〜まぁ…まぁね。
あんた性懲りもなく今度は人妻に手を出そうっていうの?あのねぇ何言ってんのよ。
僕は純粋にだねぇ彼女が心配で…。
まぁまぁ…!せっかくの慰安旅行ですから!夫婦ゲンカはよしましょうって。
あなたね何が慰安旅行よ。
これが一緒じゃさぁちっとも慰安になんかなりゃしないよ!なんだと…!な…ちょっと待って…!待ってよ!なんだよ〜!ちょっとちょっと…!
(原田賢一)聡子さん。
はいチーズ。
はいはいはい…。
こっちこっち。
いきますよ〜いいですか?はいチーズ〜!はい!えっ…?あ〜…。
(原田)先日は東京の職場まで押しかけてしまってすいませんでした。
(原田)でもまたどうしてもお会いしたかった!部屋で休みたいので。
お知らせしておく事が…!やはりあの寝台特急「北陸」にはご主人の交際しているあの女性も乗っていました。
見たんです!僕も同じ列車に乗って来たんです!ええっ…!?あんなご主人とはもう別れるべきです!あの人の気持ちはもうとっくにあなたから離れてるんです。
西野妙子。
おわら酒造東京支社でご主人の秘書をしている女性です。
(聡子)主人と同じ列車で?じゃあこの人が主人を…。
(刺す音)
(原田の声)まさかそんな。
ご主人とこの女は愛し合ってるんですよ。
忘れないでください。
僕はあなたの味方ですから。
あ聡子さん…。
(満江)聡子さん?あれ?あの人…。
あの人…!康之さん!康之さーん!
(望月の声)なんであの人が…。
ではこの話はまたいずれ…。
あ…あの…!あ…ちょっと待ってください。
今のあの人お知り合いだったんですか?あの人が一生懸命車内でご主人の救命処置を。
あの人が…?お前が一緒の列車に乗っていながらどうして康之を守ってやれなかった?申し訳ありませんでした。
この役立たず!お前の父親がうちの杜氏頭だったよしみでお前を雇ってやってるんだ。
(原田)はぁ…。
いつも康之から目を離すなと言ってるだろう!万一の事があったらどうするつもりなんだ!220年続いたこの伏見の家が終わってしまうんだ。
(原田)申し訳ありませんでした。
そもそもがあの嫁のせいだ。
あの女と康之が一緒になってから災難続きだ。
(聡子の声)富山本社の原田さんは当主の初枝さんの命令で私の身辺を調べさせられていたんです。
あなたをご主人と別れさせるために?私にとって決定的に不利になる事を見つけ出してそれを理由にして…。
でその役目をあの原田さんが?どうしてそんな事までして…。
もともと主人の母は私たちの結婚に反対だったんです。
(聡子の声)主人は急性盲腸炎で私の勤めてる病院に救急搬送されてきて…。
それが私たちの出会いでした。
でもお義母様にとっては伏見家の跡取りがそういう形で結婚相手を決めてしまうなんてそもそもそれが許せなかったんです。
ところが原田さんは調べてるうちに逆に主人のほうの裏切り行為を見つけてしまったんです。
ご主人の…?主人に愛人がいたんです。
ええっ…!?主人の秘書のようです。
あ…。
(聡子)原田さんが隠し撮りしたものです。
主人の裏の顔を知って原田さんは逆に私のほうに同情してくださるようになって。
主人やましてや伏見家からは離れたほうがいいと進言してくださるんです。
そうだったんですか…。
きっとはた目には私たち仲のいい夫婦に見えてたんでしょうね…。
(妙子)あ…。
どちら様?東京支社で支社長の秘書を務めさせていただいております西野と申します。
ああ康之の秘書ね。
用件は?
聡子さんは1人東京に帰った
「夫婦の事は他人にはわからない」とは言うけどあの2人の関係が冷え切っているようには俺にはどうしても思えなかった
(ため息)いやこれだ!これですよ僕の鞄ですよ!間違いありませんか?ええ大丈夫です。
ちょっと待って…!嫌だもう!こんなに汚れちゃったじゃないの!川に捨てられていました。
あそう川へ?でもよかったじゃないですか見つかって。
中の確認をしたほうがいいと思います。
ああそうだよ。
ちょっと私がしてあげるから!危ないな君は…。
ここ?ここ?ここなの?これはダメ…!危ないなぁ!もう…これ!ちょっと〜!あー!ちょっと全部現金が抜き取られてる!嫌だ!嘘…!だってさぁ今月のあの…あの…ねぇあのお小遣いの残り分がさ全部入ってたんだよ!えー!?なんですって!?被害額はどれくらいですか?約…3500円。
犯人は…犯人は見つかってないんですか?うちの大事な3500円を強奪した犯人は…!実は1人引ったくりグループのメンバーを任意同行で引っ張ってきてるんですが犯行を否認していまして。
それでぜひ面通しをしてほしいんですが。
え…?面通し?女の子…。
(相沢早苗)「だから言ってんだろ。
私はやってねえって!」
(警察官)あんたの仲間がねぇ昨日の朝富山駅近くうろついてんの何人も見てんのよねぇ。
(早苗)知らねえよ!大体私はもうとっくにあのグループからは抜けてるし!正直に言いなさい!
(満江)許せない!あんな小娘にうちの大事な3500円を…!どうですか?お宅さんの鞄を盗んだグループの中にこの子いたでしょ?う〜ん…どうかな?う〜んそうねぇ…。
(増岡)相沢早苗16歳。
去年鑑別所から出てきたばかりで。
鑑別所…。
(増岡)以前から万引きをしたり周囲に嘘ばかりついてどうしようもない少女なんですよ。
親御さんは?それがね物心がつく前に駅のホームに置き去りにされてたらしくて。
え…?
(警察官)「いつまで黙ってるつもりよ!」「どうせ私が何言ったって信じてくんないじゃん!」「やった事はやったと認めればいいの!」「もうどうでもいいよ…!」
(増岡)今日のところは帰してやるが必ず証拠をつかんでまた鑑別所に送ってやるからな。
もうすぐ保護司さんが迎えに来るからここでおとなしく待ってなさい!
(増岡)どうしようもねえな…。
ちょっと望月さん…。
どうでもいいなんて言っちゃダメだ。
やってないなら「やってない」って言い続けなきゃ。
大人たちはとかく育ちや過去の事を持ち出して君を疑ってしまうのかもしれない。
でも君がやってないなら絶対に負けちゃダメだ。
なんだよあんた…。
関係ねえだろ!実は俺もね子供の時親に駅のホームに置き去りにされたんだ。
(保護司)早苗。
(保護司)はぁ…ほれ。
早苗ちゃん…だよね?絶対…絶対に投げ出しちゃダメだ。
やけにならないで。
この早苗という少女が後にあの伏見さん夫婦の事件とまさかあんな形でかかわりを持つ事になるとは…
(心電図モニターの音)康之…。
康之死なないで…。
康之…お願い死なないでおくれ…。
(増岡の声)物心がつく前に駅のホームに置き去りにされてたらしくて。
(望月の母の声)幸平ここで待ってるの。
いいわね?あら?これって…。
出口君これ。
(出口)ああそれ皆さんが旅行に行かれた時に子供が拾ったって届けられたんですけど。
あそう…。
あ望月さん。
あ…。
「縦長緑色の牛革製隅にY.Fのイニシャル」ここ。
あっ…間違いない!伏見さんのご主人のだ。
いやだったら早く知らせなきゃさ聡子さんに。
ほら。
あ…はい。
(電話をかける音)
(電話)う〜ん出ないな…どうしたんだろう?もう嶋田さん昼間っからかけ通しじゃないですか。
きっとお出かけなのよ聡子さん。
いや留守電にもなってないんだよ。
(満江)ちょっと待った!うわぁ!おおお…。
うわぁ…。
助役も今お帰りですか?あんた!またどさくさに紛れてその白線を越える気ね!え…どさくさって…。
うるさいなぁ。
どうもすみません。
今ほら大事な業務中だよ。
見てわかんないの?業務中。
コラー!
(満江)でもあれだね。
これまでの話を総合するとその伏見さんご夫妻っていうのはいわゆる仮面夫婦ってやつね。
仮面夫婦?だってそうでしょう。
ご主人に愛人がいるんでしょう?みたいですねぇ…。
許せないよ…!あんなさぁ優しくてねぇ美人の奥さんいる…。
うちと一緒だ!えっ…?でもさ実はその奥さんのほうもその原田っていう男と不倫関係だったりして〜!何を言うかい!嘘〜。
彼女はねぇ彼女はそんな人じゃないの。
彼女に限ってそんな…。
なんでそこまで言い切れるのよ!いや僕にはわかるよ!ね?僕の好きになる女はねあのさ心の清らかさっていうかさ…あの…なんていうかな…あのその…あれ?「僕が好きになる女」…?あ…。
今夜は長くなるわよ!いやあのさ…今夜は無理だよ…。
(満江)何勘違いしてんのよ!
(嶋田と満江のケンカする声)
(電話)ったく痛えよな…ホントに。
何見てんの?いや…あ…。
あの…伏見さんという方からお電話ですけど。
え?聡子さん?ねえ!あちょちょちょ…。
あもしもし?見つかったんですか?主人の財布が。
ただ規則上お忘れ物預り所にて手続きをしていただかないとお渡しは出来ないんですが。
だったら私のほうからお伺いすればよかったですね。
お会い出来てよかったです。
いやあんな形で富山を出られてその後どうなさってるのか気になってて…。
その後いかがですか?ご主人の容体は。
まだ意識不明の状態が続いてるようです。
そうなんですか…。
警察のほうの調べは?寝台特急の中でご主人を襲った犯人はまだ見つかってないんですか?実は望月さんにいらしていただいたのはその事で…。
え…?今日これからある人に会う事になってるんです。
でも1人じゃ不安で…。
この事をお話し出来る人もいなくて。
誰に会うんですか?おそらく寝台特急「北陸」の中で主人を襲った人。
え…!?
(聡子)西野妙子。
主人の秘書で…愛人です。
主人はあの日その女性にもあの寝台特急に乗るよう言ってあったらしいんです。
愛人を連れて里帰りを…!?お義父様の十三回忌の法要が始まる前に話をつけたかったんだと思います。
そんなの耐えられません。
だから私あの時応援看護の要請が入ったって嘘をついてあの寝台特急には乗らなかった。
あの病院からの電話…嘘だったんですか。
ごめんなさい。
皆さんの事も騙してしまって。
っていう事はあなたがあの寝台特急に乗ってなくて離婚話に決着をつけられないと知ったあの西野妙子という愛人とご主人が車内でもめてそのあげく…。
(聡子)想像ですけど。
ダメです!そういう事は早く警察に言わなきゃダメですよ。
それだけは絶対に。
どうして…?なんで私まで引っ張り出されなきゃなんないんですか。
だって女と女の対決になるから。
もしもの時は同じ女性の村尾さんがうまく割って入って…ね?冗談じゃないわよ!嫌よ私は。
何かあったらすぐ110番しますからね!おっ来た…!西野妙子さんね?はい。
あの日あなたが主人と同じ列車に乗ってた事は警察には言ってません。
(妙子)どういう事ですか?私が康之さんを襲ったと思ってらっしゃるんですか?とぼけるおつもりですか?何か証拠でもあるんですか?勘違いしないで。
(聡子)私はあなたを告発したりはしません。
その代わりもう主人との関係は終わらせてください。
嫌です。
奥さんこそ早く康之さんと別れてあげてもらえませんか?彼が退院したら私たちの結婚話進めさせていただくつもりでいます。
何言ってるんですか!私…妊娠してるんです。
え…?もちろん康之さんの子です。
ゆくゆくは伏見家の跡取りになる子。
(電話をかける音)あもしもし私です。
妙子です。
はい。
ええ今お会いしてます。
あはい…。
あ聡子さん?お義母様!?あんたも聞いたでしょう。
(初枝)「妙子さんは康之の子供を身ごもってるの」康之とは別れてもらいます。
お義母様…!?あんたとはもう縁を切らせてもらいます。
(電話が切れる音)もしもし!?もしもしお義母様?6年前の事私も伺っています。
あなた方ご夫婦はもうとっくに終わってるんじゃありません?…あの時に。
聡子さん…!どういう事ですか?6年前って何ですか?
(聡子)ごめんなさい。
(聡子)原田さん…!
(原田)聞きました。
西野妙子と会ったそうですね。
会ってみてもうわかったでしょう。
伏見家はもうあの女を籍に入れる事にしてるんです。
康之さんの後妻として伏見家の跡取りのために。
私はまだ康之の妻です。
伏見家の人間ですから。
これから先もずーっと。
聡子さんもっとご自分の身の上の事を考えるべきです!帰ってください!自分でもわかってるでしょう!このまま伏見家の人間として居座ってもあなたにとって何もいい事はない!僕なりにあなたの事を思っているんです。
原田さん!やめて!やめて離して!
(原田)好きなんです聡子さん!あんなご主人と別れて僕と違う未来を…!僕は本気なんです!
(携帯電話)嫌…!
(携帯電話)
(原田)もしもし?え…?康之さんが…危篤…。
まさか…。
(初枝)康之…康之。
康之…!
(初枝の嗚咽)
(初枝)康之…。
嘘…。
見て伏見さんのご主人が…!え?えっ…!?亡くなった…?
(妙子)お義母様。
本当に葬儀会場のほうにはお出にならないんですか?皆様がお待ちです。
妙子さん…。
もう最後の望みはあんただけだ。
あんた今まで耐え忍ぶだけの人生だった。
これからは私が味方だ。
お前を伏見家の籍に入れる。
伏見家の女としてそのお腹の子を…跡継ぎを産んでおくれ。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
(初枝)頼みますよ。
(妙子)なんですか?順調なの?赤ちゃん。
何か月?待って…!
(妙子)なんなんですか?大事にしてね。
伏見家の大切な跡取りになる子だから。
元気な赤ちゃん産んでね。
前置きはなしにして話しましょうか。
警察には言いませんから。
何って…?あの日の寝台特急の中での事だよ。
言うとおりにしてくれたらそれ相応の見返りがあなたにもありますから。
では改めてまた連絡します。
(パトカーのサイレン)
(工藤)男女どっちけ?
(警察官)男です。
どうぞ。
あぁ一突きか…。
(聡子)私が疑われてるんですか?いえいえそういう事ではなくてですね一応あの事情を…はい。
これは殺された原田さんの携帯です。
調べましたらこの数か月頻繁にあなたの携帯にかけてるんです。
ご説明願いたいんですが。
原田さんにはずっと付きまとわれていたんです。
ななんですって?付きまとわれてた?それまたどうして?主人と別れて…伏見家と縁を切って結婚しようって…。
あなんだ不倫関係だったんですか。
だから付きまとわれてたって言ったじゃないですか!あなたは断り続けていたというわけですね?
(ノック)うん?主任…。
(工藤)ん?何?
(増岡)任意で出頭してもらいました。
(増岡)第2調室です。
(工藤)あそう。
じゃあ今日のところはこれで結構です。
ありがとうございました。
またお話伺うと思いますが。
君ちょっとご案内して。
ね。
(工藤の声)殺された原田さんの持ち物の中に入ってました。
(工藤)これは先日亡くなったおわら酒造の御曹司ですよね?
(妙子)はい。
(工藤)こういうご関係だったんですか?あ…それと原田さんが殺された事と何か関係があるんですか?この事で原田さんから脅迫めいた事があったとか…?まさか。
私は…正式に伏見家の籍に入れていただける事になったんです。
伏見家当主の初枝さんのご意見です。
あなるほど。
それではあの…御曹司の康之さんのほうの事件ですがあの夜あなたも「北陸」に乗ってたんじゃないですか?あっ…私が殺したって事ですか!?私のお腹には康之さんの子供がいるんですよ。
なんで結婚まで約束した人殺さなきゃいけないんですか!冗談じゃありません!康之さんの浮気相手なんかを…。
ましてはそれが産む子供なんかをおわら酒造の跡取りにするなど言語道断!しかも殺人の容疑がかかってる女だろ!しかし代々伏見家の跡取りが社長を継ぐのが決まりだ。
社長うちはね何年も前から株式会社なんですよ。
いまだにそのような身勝手が通ると思われては困ります。
緊急動議を申し立てます!現社長の解任決議案を!
(賛成する声)んーバッカみたい!もう…!
(工藤)伏見康之さんと原田賢一さんの事件は同一犯による殺人事件として捜査しております。
大変ですねぇ。
あの早速ですが例のものを…。
あっ幸平。
あはい。
ただ今。
これだ…。
これです。
はい。
これも今となっては遺品か…。
ね…?えっと…。
まず現金が8万。
8万。
はい。
そして寝台特急「北陸」の乗車券が…。
あれ?どうしたの?3人分…。
やっぱりあれだよ。
例のほら…愛人の分だ。
夜分遅くにすいません。
どうしたんですか?ご主人のお財布なんですが警察が押収していきました。
そう…。
あのお財布の中に寝台特急「北陸」の乗車券と寝台券が3人分入っていたんです…。
やっぱり…。
あなたがおっしゃっていたとおりご主人は愛人の西野妙子さんの分の切符まで用意していた。
でも俺はどうしても納得がいかないんです。
亡くなったご主人はあの日…寝台特急で富山に出かける日俺らと上野駅で一緒になって…。
(望月の声)その時すごく聡子さんとの旅行を楽しみになさっていたんです。
とても同じ列車に愛人を乗せていこうなんて考えてるようには…。
(聡子)あなたはこの人の本性知らないから。
6年前…この人と私はもう終わってたんです。
6年前の夏主人には当時も愛人がいて…。
前にも…!?里帰りのふりをしてその愛人と富山へ旅行に出かけたんです。
どうしても我慢出来なかった私は9歳になったばかりの娘の明日香を連れて主人のあとを追いました。
(聡子の声)本当は娘は連れて行きたくなかった。
でも生まれつき娘はぜんそくが持病で1人にはさせられなかった。
(咳)どういうつもりですか?お前こそなんなんだよ!こんなところまで追いかけてきて…。
(聡子の声)その時後ろから明日香の悲鳴が…。
(伏見明日香の悲鳴)
(聡子の声)それから数日地元の警察や漁師さんたちも漁船を出してくださって捜索が続けられました。
でも3日経っても4日経っても明日香は見つからなかった。
(聡子の声)そして1週間が過ぎた日…。
言いそびれていたが…明日から1か月アメリカのシアトルで開かれるジャパンフェアでうちのおわら酒造の新作をお披露目する事になってるんだ。
(伏見)どうしても行かなくちゃならない。
他の人に代わってもらえないの?明日香はまだ見つかってないのよ!もうあきらめたほうがいいって!漁協の皆さんだって本来の仕事があるし…!いいの?それでいいの?いいの?そんな事が…。
そして明日香の七回忌の前にあの人はまた私を裏切ったんです。
(清掃員)幸平ちゃん。
幸平ちゃん!ああどうも。
フフフ…。
さっきの掃除の時そこの女子トイレに落ちてたの。
拾っといた。
ああどうもどうも。
わざわざありがとね。
ちょっと幸平。
ちょっと見せて。
ほうきれいなスワトウだね。
これねかなり高価なもんだよ。
うん。
あっねぇって事は…朝9時の消毒掃除の時にはなかったわけだから持ち主が落としたのは…。
その次の掃除に入った11時の間だね。
そうね。
そうね…。
はい…。
こんなきれいなスワトウの持ち主とさ会ってみたいよなぁ。
ああいい香り。
たまんねえなこれ。
やめてください嶋田さん。
変態ですよそれ。
失敬だね君は。
あっこれ!あっこれさ…!どうしました?これ聡子さんのだよ。
(望月・由希子)えっ!?ほら名前が刺繍してあるんだよ。
ほらね?「SatokoFushimi」だろ?
(工藤)あすいません。
ちょっとすいません。
どうもどうも…。
あの富山東署の工藤といいます。
すいませんちょっと拝見。
えーっと…。
ああ間違いないわ。
西野妙子だ。
(工藤)あの死因はなんですか?
(捜査員)手首を切っての自殺でしょうな。
(工藤)あ自殺。
ああ…これか。
主任これを。
遺書か…。
あパソコンに?ちょっと…ちょっと待ってくださいね。
えーっと…。
ああ…。
「伏見康之さんを寝台個室で襲ったのも原田さんの背中を刺したのも私です」「もう何もかも人生に絶望しました」ハンドバッグの中にこんなものが。
なんで切符を…。
いえいえこれはあれですよ。
あの…寝台個室の切符ですよ。
(工藤)乗車券じゃないから改札を出る時に返さないで自分で持ってたんでしょう。
やっぱりあの夜「北陸」に乗っとったんやな。
死亡推定時刻はおそらく今日の朝9時頃から11時くらいの間ですね。
朝9時から11時ね…。
(聡子)ああこれです。
よかったぁ。
誰かが持っていかなくてよかった。
(聡子)はい。
そうか…今朝10時ぐらいかしら。
夜勤明けで帰る途中ここのトイレに寄った時…。
夜勤明けでお疲れだったんですね。
もうそれこそ朦朧としてました。
はあ…。
本当にありがとうございました。
いえいえ。
どうも。
お気をつけて。
(聡子)はい。
聡子さん!いやあの…昨日はすいませんでした。
気に障るような事ばっかり言ってしまったようで。
あいえ。
とんでもない。
あっ早苗ちゃん…!?やっぱりそうだ。
早苗ちゃん…どうして東京に?保護司さんには伝えたの?関係ないだろ。
あっちょ…ちょっと待って!私の居場所は富山にはないから。
どういう事…?もういいんだ。
警察も町の人も保護司さんもみんな私の事なんか信じてくれないから。
早苗ちゃん…。
東京の歌舞伎町で楽に働けてたくさんお金をもらえる仕事があるって教えてくれた人がいるの。
ダメだよ!それはいけないよ。
いいからほっといてよ!私は独りで生きてくんだから。
いやダメだ!
(早苗)離して!あっ…待って!早苗ちゃん待って!どうした?早苗ちゃん…?どうした?大丈夫か?早苗ちゃん俺の背中に乗って。
いいか?乗れるか?よしこっちだ!よし乗って。
よし!行くぞ。
よし行くぞ。
しっかりな。
(ため息)ぜんそくね。
ぜんそく…。
もう大丈夫…。
少し休んでいくといいわ。
いやぁ…でも本当会えてよかったよ。
本当はおじさんにもう一度会いたいって思ってた。
あ…おじさん?フフ…おじさんね。
あの話本当なの?おじさんも子供の時ホームに捨てられてたって。
ああ…。
ああ本当だよ。
そうなんだ…。
そんなのって世界中で私だけかって思ってた。
ハハ…そうだね。
あ俺もそういうふうに思った事あったな。
なんか信じらんない。
短い間に2人の人に助けてもらっちゃった。
2人…?
(早苗)ほらあの…置き引きしたんじゃないかって私疑われたじゃん。
ああ…。
あの前の日の真夜中糸魚川で世話になっている家ケンカして飛び出しちゃったの。
でもやっぱりまたこのままだったら今度こそダメになるって思って…。
(早苗の声)引き返そうと思って…。
でも勇気が出なくて。
急にさっきみたくぜんそくの発作が始まって。
そしたらどこからか女の人が現れて…。
その女の人が応急処置してくれて助けてくれたの。
へぇ〜。
あんな時間だったのに…。
朝の3時過ぎよ。
え…?ちょっと待って。
その事を警察や保護司さんに話した?その話が本当なら…そんな時間まで糸魚川にいたんなら朝の5時半過ぎに富山駅の近くで置き引きなんか出来ないって証明になるじゃない。
あそうか。
いやそうだよ!話したよ!話したけど誰も信じてくれなくて…。
でも私はハッキリ覚えてる。
白い服を着た優しい人だった。
えっ?白…。
白い服…?まさか…。
信じてもらえなくても仕方ないんだけどね。
これまでさんざん大人をバカにして嘘ついてきたから…。
ねぇおじさんは自分を捨てた母親の事を忘れられない?え…?私は忘れようと思ってる。
どうして?その女の人がね言ってくれたの。
いつまでも忘れ物にこだわる人生なんてやめなさいって。
忘れなきゃ生きていけない事だってあるんだって。
(保護司)さあ帰るぞ!
(早苗)帰るよ。
帰るけど…。
私はあの日置き引きなんかやってないから。
信じて。
前の晩から朝まで糸魚川の公園で女の人といたの。
またそんな作り話を…。
おじさんありがとう。
糸魚川に戻ってやり直すよ。
おじさんに生きる勇気もらったみたい。
早苗ちゃん…。
頑張って!
(早苗)じゃあね!
ゆうべの早苗ちゃんの言葉が脳裏から離れなかった
いつまでも忘れ物にこだわる人生なんてやめなさいって。
(早苗の声)忘れなきゃ生きていけない事だってあるんだって。
おい大変だよ幸平。
あの女…愛人が死んだぞ。
えっ!?えっ!?嘘…!殺された原田っていう男がなあの妙子と共謀して聡子さんのご主人に愛人疑惑を仕掛けてで例のおわら酒造の当主初枝さんをゆすろうとしていたらしいんだよ。
でも康之さんが亡くなってしまった事で計画変更。
康之さんの子を妊娠した事にして…。
あげく仲間割れになり原田を殺し自殺…。
じゃもともと聡子さんのご主人と西野妙子って人愛人関係じゃなかったって事ですか?ねぇもしかしてこれって…。
一連の事件の真犯人は別にいてすべての犯罪を西野妙子がやった事にしようとしてるんじゃ…。
(望月・嶋田)え…?一連の事件の真犯人って…?うん…。
ねぇ望月さんあとで時間ちょうだい。
ああ…。
(男性)すいません。
携帯電話落としたんですが…。
あっはい。
こちらのほうにご記入を…。
いい?これからある仮説を基に推理するわよ。
うーんまずは聡子さんのご主人の康之さんの財布の件。
えっ!?そっから始まるの?いいから黙って聞いて。
あれは私たち東京駅お忘れ物預り所が偽装工作に利用された可能性がある。
えっ?あの財布は東京駅に着いてから聡子さんがわざと康之さんから抜き取って…。
そして聡子さんはそれをずっと隠し持っていて。
応援看護に行くと言って預り所を出てからその財布に事前に用意してあった一組のチケットを加えて…。
それがよくわかんないんだよ。
なんのために?ご主人があたかも愛人の分の切符も用意していたかのように見せるため。
え…?あとで発見される事になるその財布の中から三組の切符が見つかれば夫の愛人疑惑は決定的になる。
でも実際には康之さんには愛人はいなかった。
その時の聡子さんは西野妙子が康之さんの愛人だと本気で思っていたとしたら?え…?6年前と同じように康之さんに愛人が出来たという原田の言葉を信じてしまっていた。
前例があるから…。
ああ…明日香ちゃんの七回忌の前にまた康之さんに愛人が…。
そう。
それが原田と妙子による謀略の一部だとは気づけなかった。
つまり聡子さんは康之さんの裏切り行為を示した上で夫を殺し…。
聡子さんが康之さんを襲ったっていうの?聡子さんはそんな…夫を殺すような人じゃ絶対ないよ!それに聡子さんは寝台特急「北陸」には乗ってなかったんだ。
うん…そう。
そこが謎。
ああ…でもね私は康之さんを襲ったのも原田を殺したのも聡子さんじゃないかって思ってる。
村尾さん…。
もしかしたら西野妙子の事も…。
ちょ…ちょっと待って。
西野妙子もって…。
ねぇ村尾さんこれ新聞読んだでしょう?ほら。
西野妙子の死亡推定時刻は朝の9時から11時くらいだって。
スワトウの件でしょう?なんだわかってるのか。
この件があったから余計怪しいのよ。
トイレにスワトウが落とされたのもえーっと…午前9時から次のトイレ掃除に入る11時の間。
今朝10時ぐらいかしら。
夜勤明けで帰る途中ここのトイレに寄った時…。
聡子さんが言ってたように10時にこの東京駅のトイレに入ったっていう証拠でしょ?西野妙子のマンションが国立だから移動時間考えるとアリバイは成立だよ。
うん…。
そうだよねぇ…。
でも出来すぎっていうかわざわざアリバイを作ってるみたいな気が…。
そんな事…。
たぶん…そのアリバイ工作だ。
あっ!?嶋田さん…。
いたんですか?気がついちゃったんだよ…。
僕は気がついちゃったんだ。
気がつく気はなかったけど気がついちゃったんだ。
どういう事ですか?あのスワトウが朝10時から11時までそのトイレにあったって事はあり得ないんだよ。
どうして?だってあの日はね午前9時に消毒掃除があった日だよ。
もし朝10時にあのスワトウをそこに落としたとしたらスワトウはだね消毒液を吸ってその薬品のにおいがすごかったはずだよ。
ああ…!でもね僕があのスワトウをクンクンした時はね消毒液のにおいなんかしてなかったよ。
あの薬品臭は強烈だよ。
なあ?ほら前にもあったろ?同じようにさ消毒液を吸った布製のポーチな…。
その落とし主がさ相当な剣幕であの…クレームつけてきた。
ほらあったろ?ああはいはいはい…。
あったんだよ。
つまりあのスワトウは10時からあそこにあったのではなく11時前に…。
直前に落とされた…。
という事は午前9時から11時の間に西野妙子のマンションにいる事は十分可能。
同じような時間差トリックを聡子さんは使ったのかも。
あの日の朝早苗ちゃんと糸魚川で一緒にいたのが本当に聡子さんだとしたら…。
だからそれは無理だよ。
だって聡子さんは急行「能登」で…。
そう。
寝台特急「北陸」に乗れなかった聡子さんは急行「能登」で富山に5時41分に到着した。
ほらこれ見て。
そんな時間に聡子さんが糸魚川にいるなんて無理だよ。
もしも本当に上野駅の始発から急行「能登」に乗ったんだとしたらね。
そっか…ダイヤトリックか。
幸平村尾君行ってこい。
嶋田さん!ああそうだ…!有給休暇全部使っちゃったんだ。
えーっ!?そんな事は…。
えーい…出発だ!行ってこい!
(由希子・望月)はい!
(聡子)お話というのは…。
(初枝)これを…。
康之の遺品の中にあった。
あて名も書いてないし封もしてなかったから中の手紙を読んでしまった。
康之からあんたにあてた手紙だ。
だが渡す前に死んでしまった。
(初枝)今度の事ではずいぶんあんたにつらい思いをさせてしまったがすべて伏見家を第一に考えての事だった。
どうか今までの事許しておくれ。
お義母様…。
(伏見の声)「聡子今さら謝っても許してはくれないと思う」お義母様…話を聞いていただけますか。
(満江)ねぇ…何やってんの?いやお前の許しが出るまでねこの白線越えない。
え…?いや僕がね金輪際浮気なんぞしないと信じてくれるまでその約束は守るよ。
だから1つ頼みがあるんだよ。
え〜何よ…?いやあの幸平もね村尾君もさ今度の富山の事件にね首を突っ込みすぎて…。
それでもう気持ち的に後戻り出来なくなってんだよ。
みたいね。
だから…助役お願いします。
助役の権限で2人に1日…休みをやっていただけませんか。
えぇ〜?あんた…。
このとおりだ。
20時12分発上越新幹線「とき347号」には十分間に合う。
実際に同じ新幹線に乗りましょう。
越後湯沢駅には21時22分着。
越後湯沢駅で21時30分発の「はくたか号」に乗り換える。
東京駅を8時過ぎに出て10時半過ぎには糸魚川にいられるんだ。
聡子さんがここで朝まで過ごせば4時34分糸魚川着の寝台特急「北陸」に乗る事が出来る。
聡子さんが自分で買い直した切符だから康之さんの個室番号は知っていた。
え…!?どうして君が…。
そのあと5時13分聡子さんは次の停車駅の魚津で下車。
「北陸」に遅れる事7分5時20分に着く急行「能登」に乗る。
あたかも上野からずっと「能登」に乗ってきたかのように富山に着き…。
(由希子の声)そこで初めて事件を知ったふりをし…。
実はご主人が大変な事に…。
聡子さんはここで朝の4時過ぎまで時間を潰す必要があった。
この時間になると人っ子一人いないわねぇ。
そうだね。
ここだ。
早苗ちゃんが発作を起こしていた…。
母親と子供…?
(咳)大丈夫?私たちの推理が正しければここで早苗ちゃんを介抱して一緒にいてあげたのは聡子さんに間違いないはず。
望月さん。
あっ…。
(ブザー)ゆうべ聡子さんはここにいた。
えっ?入れ違いだったんだ…。
東京に帰ったんですか?いいや。
病院も辞めたし東京の家も処分してしまったらしい。
えぇっ!?
(初枝)これからどうするつもりなのかなんにも話してくれないし私も心配している。
もはや…伏見の姓を名乗る気もこの家を継ぐ気もないだろうし…。
康之の手紙を読んでからひと言も口を利かなくなってしまった。
手紙…?康之から聡子さんにあてたわび状だ。
ご主人からのわび状…?あ…。
(伏見の声)「聡子今さら謝っても許してはくれないと思う」「6年前僕はどうかしていた」「本当に申し訳なかった」「失ってしまった君からの信頼はこれから僕の生き方で償っていくしかないと思っています」「今度父親の十三回忌で君と一緒に実家に帰る時僕はそこで母親に富山には戻らないと宣言するつもりです」「東京で自分の力で生きていきたい」「聡子と二人で」「そしていつか老人になった時きっと君が僕の過去の過ちを許してくれる事を信じて」聡子さん!聡子さん戻って!ここね…「親不知・子不知」っていうの。
昔ここはひどい難所で…。
あまりに難所すぎて旅をしていた母親が娘の手を離してしまって娘は海に落ちて死んでしまったんですって。
(聡子の声)明日香も6年前ここから落ちてしまったんです。
聡子さんバカな事考えるな!もし罪を犯してしまったのならきちんと償って…!償い…?主人からの手紙にもそんなような事が書いてあった。
償いって何よ…。
一生謝り続けられたって私は許せない。
ご主人は悔やんでたんじゃないですか。
謝ってたんじゃないですか。
一生をかけて償いたいって。
だから償いってなんなのよ!自分が楽になりたいだけじゃない。
でもご主人は心を入れ替えて…。
実際今度の事だってご主人に愛人なんていなかったんです!そうね…。
6年前の事がなかったら信じていられたのかもしれない。
あんな原田の嘘も信じなかったかもしれない。
(原田)ご主人には今交際してる女性が…。
(聡子の声)あれがその原田と西野妙子の仕組んだ嘘だったなんてまったく疑いもしなかった。
私が何も知らないと思って普段どおりにしている主人が許せなかった。
決定的だったのはある日の朝主人が口にした言葉…。
今度富山の実家で法事があるんだ。
2人で休みを取って行こうじゃないか。
明日香の七回忌の供養もしよう。
行ってくる。
(聡子の声)信じられなかった。
(食器の割れる音)
(聡子の声)6年前と同じようにまた他に女を作っておきながら明日香の供養をしようだなんて…。
(刺す音)ああっ…!その前にご主人に真意を確かめようってどうして思わなかったんですか?問いただしさえすればご主人はきっちりと否定をしたはずです!私がそんな主人の言葉を信じられたと思いますか?そのあとあの事を聞かされて…。
妊娠してるんです。
(聡子)ああそういう運命なんだって思い知った。
(聡子)その時思ったんです。
私次第で彼女のお腹の赤ちゃんの将来が決まってしまう。
同じ生まれてくるのならきちんと伏見家の子として生まれるようにしてあげたほうがその子のためにはいいに決まってる。
だから私は彼女に会って私が伏見家の籍から抜ける事を伝えようと…。
なのに…それなのに原田さんが…。
何って…?あの日の寝台特急の中での事だよ。
言うとおりにしてくれたら…。
(原田)「それ相応の見返りがあなたにもありますから」
(原田)見たんですよあの寝台特急の中で。
あなたがご主人の個室に入ったのを…。
あなたのおかげで計画はおじゃんですよ。
計画…?僕ね妙子と組んである計画を進めていたんです。
おわら酒造を乗っ取るという…。
いつまでも初枝ばあさんの使い走りじゃ…。
俺をガキ扱いしやがって…。
もう耐えられなかった!
(原田)だからご主人の浮気をでっちあげたんです。
でっちあげるって…。
主人には愛人はいなかったって事?そうです。
妙子は…私の女です。
あなたがした事は警察に黙っておきますから手を組みませんか?
(聡子の声)許せなかった。
私は原田の誘いに乗ったふりをして…。
あんたも伏見家には相当な恨みがあるんじゃないですか?ばあさんには子供の事でずいぶんつらく当たられてきたじゃない。
おわら酒造を売り払えば相当な金が…。
(刺す音)
(聡子の声)そしてあの朝…。
嘘なんでしょ?主人の子供を妊娠してるなんて。
あ〜あ…支社長の子供を産みたかった。
(妙子の声)支社長の事がずーっと好きだったから。
だから…なんかもうズタズタ。
はい。
おっしゃるとおり。
全部原田が計画したの。
支社長の子供がいるって言ったらあのばあさんなんとか無事に支社長の子供を産んでくれって。
跡継ぎ産んでくれって泣いちゃってさ…。
で私を伏見家の籍に入れてくれるって言ってたのにさ。
フフ…そしたらゆくゆくは伏見家の財産も全部私のものになるはずだったのに。
(妙子)支社長に対する復讐。
でもさ取締役会で猛反対されて私は追い出されちゃうし原田は殺されるし…。
なんかもうバッカみたいな話よ。
(妙子)あっ…!
(苦しむ声)
(聡子)許せなかった。
伏見家を乗っ取ろうとしたあの2人が…。
お義母様が懸命に支えてきたおわら酒造を…。
伏見家は本当は私と主人が一緒に守っていくはずだった。
だから6年前の裏切りにも耐えてやってきた。
でも…信じたい人を信じられなくなる事がどれだけ苦しい事かわかる?裏切られた記憶は消せない。
忘れたいのに…思い出す。
ある少女が言ってました。
いつまでも忘れ物にこだわる人生なんてやめるべきだ。
忘れなきゃ生きていけない事も…。
あなたの言葉ですよね?その少女はあなたのその言葉に救われたんです。
お願いです。
その少女のために1つだけ証言してほしいんです。
あの日あなたが糸魚川にいたという事です。
なんの事ですか?糸魚川の母子像のところでぜんそくに苦しむ1人の少女を助けてあげた事ですよ!その事をあなたが証言してくれたら彼女の疑いが晴れるんです。
自分の故郷を捨てずに済むんです。
人を信じる気持ちをもう一度持てるんです!明日香のところに行きたいの!その少女はやっと自分の意思で立ち直ろうとしてた!でもこのままじゃまた嘘つき呼ばわりされて人を信じられない人間になってしまう!そうならないために彼女を助けてやってほしいんだ!もしここで亡くなった娘さんが生きていたらあの子と同い年ぐらいなんじゃないんですか?彼女は亡くなった娘さんと同じようなぜんそくの発作に苦しんでいた。
そういう彼女を介抱してあげたんでしょう?それはあなたが看護師だからじゃない!母親の気持ちになったからではないんですか?あの少女は母親を知らずに育ちました。
あの夜きっとあなたを通して母親を感じた。
(明日香の声)お母さーん!あなたはあの子の事を娘さんのように思えた。
あの子はあなたを母親のように感じた。
お願いだ…。
彼女の未来を…早苗ちゃんを助けてはくれませんか!お願いします!聡子さん!死なないで。
聡子さん。
あんたが康之を手にかけた事は許せない。
しかしあんた康之と私のために伏見家を守ろうとしてくれた。
今でも立派な伏見家の嫁だ。
お義母様…。
あんたが自由の身になるまで早苗ちゃんは私が預かる。
(初枝)ここで死んだ明日香が早苗ちゃんと聡子さんを会わせてくれたんだ。
明日香…!
(明日香の声)お母さーん!
それは確かに優しい母の微笑みだった
その日富山湾にまた蜃気楼が現れた
これまで見てきた事今見えているものこれから見えるはずの事…。
それが聡子さんには明日香ちゃんの七回忌前だって事で見えなくなっていたのねぇ。
ご主人が過去に一度裏切ってしまった報いって事なのかなぁ。
(ため息)愛する人に一度裏切られたらその事をどうしても忘れられなくなってしまう。
どんな償いをされても消える事はない。
うん…私はわかる気がする。
愛ってもともと蜃気楼みたいなものだから。
な〜んちゃって。
(2人の笑い声)ああ…よし。
その後聡子さんの強い要望で早苗ちゃんは初枝さんの養女として迎えられ将来は杜氏になるべく修業を始めたという
なんで財布を落とすのよ!そんな事言うんだったら…!
そして東京駅お忘れ物預り所は相変わらず何かと忙しい日々が続いている
いやあの…。
もう…やめなさーい!2014/04/05(土) 12:00〜13:55
ABCテレビ1
東京駅お忘れ物預り所[再][解][字]
寝台特急『北陸』〜裏切りの13番ホーム!!狙われたA個室の乗客、富山湾・蜃気楼の女の殺意…
詳細情報
◇番組内容
東京駅お忘れ物預り所の職員・幸平たちが慰安旅行で富山に行く日、切符の入った財布を落としたという夫婦が現れて!!ところが、その夫・伏見康之が幸平たちの乗った寝台特急『北陸』の車内で刺され、意識不明のまま富山の病院に運ばれる!! 人気シリーズ第3弾!
◇出演者
高嶋政伸、櫻井淳子、高橋ひとみ、北村総一朗、藤真利子、筒井真理子、大浦龍宇一、馬渕晴子、春田純一
◇スタッフ
脚本:寺田敏雄
監督:吉田啓一郎
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0×0818)
EventID:56725(0xDD95)