日本の話芸 落語「三道〜鉄道・芸道・仏道〜」 2014.04.05

では明日からのお話もどうぞよろしくお願い致します。

(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(三遊亭圓歌)おつきあいを賜ります。
もう長いことやってるんでねくたびれちゃってね。
(笑い)お客笑わせてる場合じゃないよ本当。
俺がそっち行って笑いたいやね。
(笑い)68年やっちゃったよ。
一遍こっち来てやってごらんなさい。
面白くも何ともない仕事だから。
横に戒名がぶら下がって。
(笑い)この間のお客みたいに檀家って読みやがってね。
(笑い)もっとすごいのは「待ってました歌奴」って。
俺は圓歌になって50年だよ。
この間腹立った客がいたよ。
「『山のあな』やれ」ってやがんの。
忘れちゃったよもう。
(笑い)「山のあな」で売り出したのは昭和25年だよ。
その時生まれた人がいらっしゃると六十幾つでしょ?後期高齢者に近いんだよ。
そんなに穴ばかり掘っちゃいられないよ俺だって。
だからね我々昔はまぁ我々って事はないけど私は下町の生まれでねよく親父に言われましたよ。
「お前他の事はいいけどね三道楽だけはするんじゃねえぞ」。
昔の人はこれで分かったの。
三道楽で。
今分からない。
だって道楽しようにも無いんだから。
ね?まず「飲む打つ買う」。
これは今で言うと「焼酎パチンコデパートで何か買う」。
(笑い)こうなっちゃうとね落語もやっちゃいられないばかばかしくて。
でもね私は今回出したのはね本当に三つの道歩いちゃったからね。
鉄道だって行きたくないのに行っちゃって。
私は大体下町の生まれで向島の第二寺島小学校ってんだ。
先輩にはねこちらのNHKでお馴染みの小川宏ってのいたよ。
いたよじゃないまだいるよ。
(笑い)怒られちゃうこんな事言うと。
それから滝田ゆうなあれが同級生だ俺の。
それから早乙女勝元。
結構いいのいたんだよ。
下町の学習院といわれたからね。
(笑い)みんなそういうのが先輩だよ。
みんな昭和の初期の生まれでしょ?あの時分はね私はご存じの方はご存じでしょうけど吃音者ってちょっと他人様から違ってた変な喋り方してたんで。
それもね他人の真似しちゃったんだよ。
よせばよかったんだ。
学校へみんな連れていく6年生がねこの人が少しおかしいんです。
「みみんなあつ集まったか?」なんて。
俺もばかだから「あああつあつあ」。
これで本物になっちゃったんだ。
だから小学校の時はそうでもないけどね中学からもう高等学校行ったら駄目だよ。
当時はそういう事をガタガタ言ってたら怒られちゃうから。
で私は本当は府立七中ってね有名な学校受けたんだ。
受けたんですけど向こうで受け取らなかったんだ。
(笑い)それでしょうがないっつうんで鉄道学校行っちゃったんですけどね。
岩倉鉄道学校。
今でもいい学校だよ。
野球では一回だけ優勝してね明くる年最初に負けちゃったって変な学校なんだ。
そこの出なんですよ。
当時終戦後で落語家になったので学校出ってのは私と桂米丸さん。
あの方が中野学校出身なんですよ。
俺は知らないからスパイの学校かと思ったんだ。
(笑い)な?これで今日のお客の年齢が分かるんだ。
(笑い)今スパイったって知らないよ誰も。
それが今全部こういう所へ出てくるのが大学出だよ。
大学出てやる仕事か?こんな事。
(笑い)大学出っつうのはお客席にいるんだよ。
で向こうから大学行かれない奴が出てくるんだよ。
と調和がとれたんだ。
(笑い)今こっちから大学が出てきて…。
まぁこっちの話だけどね。
(笑い)だから私は学校行くんでも鉄道学校ってのを最初に受けた訳じゃないから学校行かれなかったってぇのは頭にありますからね「これは試験だけやってても駄目だな」と思った。
だけど試験がね当時はすごかったね。
「次の駅名に振り仮名をつけよ」てんだ。
「上野」。
これ「うえの」だけ書くと駄目なんですよ?「こうずけ」ってのもあるんですから。
ね?それから「新宿」。
これは「しんじゅく」だけでいいんです。
訳分からないのがあったんだ。
「及位」って書いてあるんだ。
「及ぶ」って字がありますね?それから正一位稲荷大明神の「位」って字。
分からないでしょ?私だってねなんとかして誤魔化して入ってやろうと思うからね「誰か見てないかな?」って見てたんだ。
上のほうから先生が「メガネ覗くな」っつった。
(笑い)頭へきたから「のぞき」って書いちゃった。
(笑い)これが正解だから余計頭にきた。
(笑い)今でもありますね。
及位院内横堀湯沢ってんで。
この間何十年ぶりかで及位って駅見に行きましたよ。
雪が降ってる時に。
そしたら今無人駅になっちゃってね。
私なんかが行った時は及位なんて駅知らないから「立派な駅なんだな」と思った。
それでも入りましたよ。
最初のうちは僕はこれやろうと思ったんですよね?機関庫で。
みんな機関車のあれやってるのは憧れだからね。
やらせてくれないんだ。
変な事ばっかりやらせてな。
その時にも学徒動員令っての来たんだ。
これも知らないってね今。
私なんかはねまだ学校にいたから新大久保の駅員になったんだよ。
俺の友達でね沖縄のほうへ連れてかれてねそのまま帰ってこないのがいたよ。
これも学徒動員だよ。
ね?俺の時は学校の先生が「矢部石川中沢…」。
5人ぐらい名前呼ばれて…。
「お前たちはこれから新大久保駅務係として駅員として採用する事になった。
学徒動員である。
頑張ってこい」。
みんなで心配して見たよ。
新大久保ってどの辺にあるのかと思って。
山手線の地図でね今は新大久保なんてのは大きく出てるよ。
昔は新宿次が高田馬場その間に新大久保ってのはポコッと丸がついてるの。
(笑い)その次が池袋それでその間に目白がポコッてついてる。
大塚巣鴨田端か?あっ駒込ここの3つはやっぱり丸がついてるだけ名前なんか書いてないんだから。
俺はその時分に新大久保の駅行く前まで山手線で知ってたのは渋谷の駅と高田馬場だよ。
渋谷の駅は忠犬ハチ公で知ってたね。
高田馬場は堀部安兵衛で知ってたよ。
(笑い)それが新大久保の駅行かされちゃったんだ。
いきなりやらされたのが新大久保の駅でね電車が滑り込むと「新大久保〜」っつうんですよ。
やれねえんだこっちは。
みんなが終わったなと思って「新大久保〜」。
目開けると電車高田馬場行っちゃったりなんかして。
(笑い)一番困ったのは切符売ってる時ね。
例えば新大久保の駅で切符売ってるでしょ?何も言わないでね「新大久保1枚」って来るんです。
(笑い)これ売った事ないから探しますよ。
(笑い)全部探してから「すみません売り切れです」つったの。
(笑い)そしたらその人も「また来らぁ」って。
どこへ行っちゃったのかな?
(笑い)それよりもっとすごいのがいたね。
「おい兄ちゃん往復頼むよ」。
(笑い)「どこですか?」。
「往復だよ」。
「だからどこの往復?」。
「ばかか?手前は。
ここの駅で切符買うんだからここの駅までに決まってるだろ」。
(笑い)確かに考えてみてもそれには違いない。
(笑い)でも一遍どこか行かなきゃ往復にならないんだ。
一番すごいのはね…今これも古いから分からないかな?「丸公」ってねここへ腕章を巻いてね「丸公」とか「丸憲」ってのは一番怖いんですよ。
でこの人が切符買いに来た。
気の毒に私と同じように吃音者なんです。
「あいあい会津若松こ公用で1枚」。
こっちは学校でひっ叩かれてんだから「かわいそうにこの人兵隊へ行って随分ひっ叩かれてる」と思うからよせばいいんだ同情しなくても何もしなくていいんだから。
それを窓口まで顔出してね「あ会津若松はばばば磐越西線ですから郡山の乗り換えでいいいですか?」。
俺がばかにしてると思ったんだね。
この人がね「貴様ばかにするのか?」って「き」から出てこないんだから。
「きき…」。
こうなると俺も命懸けだから。
「そそうじゃないそそうじゃ…」。
こっちも言ってる向こうも言ってる。
聞こえないんだよ。
真ん中に入った駅長まで「まんまんま…」っつったからね。
「こりゃ駄目だ」って俺は新大久保の駅クビになっちゃった。
行く所が無くなってで私の家に当時ね柳亭市馬って落語家がいたんです。
今の市馬からするとね3代前なの。
でこの人圓楽になって市馬になった人なんですから。
この親父が私ん家の2階にどういう訳だか間借りしてるの。
で「兄ちゃんね落語を聞いてごらんよ勉強になるよ」って。
それから鈴本の寄席へ行って聞いてたんだ。
で「この人の落語なら俺やれるかな」と思って「あのおじさんの弟子になりてえ」って。
連れてってくれたのが私の先代の圓歌です。
「でで弟子にして下さい」って。
師匠が顔ジ〜ッと見てて「がが頑張りなさい」つったんだ。
(笑い)ちょうどね今年がね五十回忌なんですよ。
ね?まぁ行きますけどね私も5月だってから。
五十回忌までやった落語家ってのはね私が見てる中では一人だけ。
亡くなった前の柳家小さん五代目の。
あの人が四代目の柳家小さんの五十回忌までやりました。
その時にそこの会場に俺がいたというのが情けないよ。
(笑い)ね?でもやっぱり五十回忌までやれるって事は師匠のためにもいいしな。
手前がそれだけ長生きしてるって事だから。
でうちの師匠の所へ行って「弟子にして下さい」つったら「同じような悩みを持ってるから頑張れ」。
で家へ帰って親父に「落語家になる。
少し矯正をする」。
いきなり立ち上がったね。
「この野郎。
親って字をどういうふうに書くか知ってるのか?『立つ』という字を書いて下に『木』と書くんだよ。
横に『見る』という字を書く。
小ちゃな木がどんどんどんどん育っていくのを横で見ているから親だばか野郎。
手前たちは知らねえだろうけどお前たちに飯を食わす事を何と言う?『立つ木
(生計)を見る』と言うだろう?この語源も分からねえで他人を笑わせるとか泣かせる?やるならやれ。
そのかわり手前なんか親でもなきゃ子でもねえ。
出ていけ。
そのかわりただおん出すとお前はばかだから戻ってくるおそれがある戸籍謄本から抜いといてやる」。
(笑い)本当に抜かれたよ。
私の親父は小林ってんですからね。
だから当時会長が柳家小さんな。
これが小林盛夫ってんで私がそのまま小林ってぇと小林信夫つったんだ。
「じゃあお前おん出される前に名前だけ取り返してくりゃよかったんだ」よく言ってましたよ。
家の親父は本当に「嫌だ」つったらおん出されましたからね。
家のおふくろなんかね大抵止めるでしょ?こういう時止めないんです明治の婆だから。
鼻の穴から煙出しやがって煙草吸ったね。
「私ゃお前を産んだ覚えはないね」。
(笑い)この爺と婆が俺が家建てたらノコノコ入ってきちゃった。
(笑い)こんな分からない話ある?私ゃ一人っ子じゃないんですよ。
男の兄弟4人いるんですからね。
まぁ一番上の兄貴は去年亡くなりましたけど2番目が私です。
3番目は今私のプロダクションの社長をやってます。
4番目が私が持ってる伊豆長岡の料亭をやらせてます。
私以外は全部親の金で大学出てます。
あれから私は親になる事をやめました。
(笑い)お金出して大学まで出してやった野郎の家に置いてもらえないでですね何の因果か俺の家にいるんだ。
今この年になるから言えるんだよ嫌だよ家に爺と婆なんて2人もいたら。
2人じゃねえんだ。
私はちょうどね去年が三十三回忌になるけど私はかみさんに死なれてるんですよ。
かみさんは死んだけどかみさんの親まで死んだ訳じゃねえんだ。
(笑い)これもいるんだよ。
(笑い)もらった嬶が死んで何でもらわねえ爺と婆がいるの?このあと2年経ってよせばいいのにねまたかみさんもらっちゃったんだ。
まさかと思ったらそのまさかだよ。
親いたよ。
(笑い)一時私の家は佃煮にするほどいたからね。
(笑い)朝みんな早いんだよ。
4時半頃起きるとね誰かがお茶沸かすの。
これが台所の横っちょへズラ〜ッと並んでね。
それも円く並ぶんです。
でみんなでお茶飲んで。
遠くから見てると恐山だよ。
(笑い)お茶飲むからみんな揃ってねおトイレが近いんだよ。
自慢じゃないけど私ん家はトイレ6つありますよ。
今失礼だけど家1軒持ってて便所が6つあるって家があったら手挙げて下さい。
私の家も見せますけどお宅も見せて下さい。
(笑い)そのくらい…。
だってほら6人の爺さん婆さんがいて弟子が7人住み込みでいて私とかみさんがいるでしょ?6つあったって足りないよ。
朝なんかお婆ちゃんとおばちゃんと喧嘩してんだから。
最初2つしか無かったんだ。
「漏っちゃうよ」ってからね慌てて俺は6つ造っちゃったよ。
(笑い)これが終わるとねこのお婆ちゃんたちはねゾロゾロゾロゾロ歩くんですよ。
散歩だね今で言うと。
ちょうど私の家の裏がね名前は言えませんけどよそのテレビ局なんです。
名前は言いません。
日本テレビなんて言いませんけど。
(笑い)ね?そこの前をねこの3人がピョコピョコ歩いてる。
「お婆ちゃん。
大勢弟子がいるんだから弟子に手つないでもらって歩きな」。
「うすらみっともねえ」って。
「みっともないんじゃねえんだ車に轢かれるよ」。
「轢けるもんなら轢いてみろ」。
かわいげがないんだよ。
ある時私が見てたらねもう少しで本当に轢かれそこなっちゃった。
「ありがてえな」と思ってね。
(笑い)そうはうまくいかないな。
車のほうで2m手前で止まったよ。
この止めた運転手が私と同じ本物の江戸っ子だからこの辺から声出しやがって…。
「気を付けて歩けくそったれ婆まごまごすると轢き殺すぞ」って言う。
俺は心から尊敬しちゃったよ。
(笑い)私の言えない事言えるんだもん。
ところが家のおふくろこんなもんで負けてないよ。
運転手の顔見て…。
「何だ?この野郎。
車が人を轢く?笑わすんじゃねえ。
昔は人が車を引いてたよ」って言う。
(笑い)これで大体今日のお客の年齢が分かる。
(笑い)今ね大学生にこの前これやってくれって言われたんでね大学生の前でやったんだ。
シ〜ンとしてるの。
(笑い)終わってから楽屋へ聞きに来たよ。
「あれはどういう意味ですか?」って。
(笑い)分からない人には聞かせてもそりゃ分からないよね?今荷車引いて歩いてる人もいないしさ。
そのおふくろの言葉で「あっこれは俺はもう一回修業をしなきゃいけない」。
当時私のことを怒る奴がいないんだから。
前は小さんさんまでは怒ってたんです。
「この野郎。
毎晩酒飲んでんじゃねえ」なんつったんです。
小さんさんいなくなっちゃったら文句言う奴いないんだ。
で「誰かに言ってもらわなきゃいけない」って私の尊敬してる日蓮宗のご上人がいる。
でその人に「お弟子さんにして下さい」つったら「あんたはもうお弟子さん既に30人も持ってるんだからそんな事する必要はありませんよ」。
「いえ。
でも入れて下さい」。
それで20日間ぐらいお願いに行ったんだ。
許してくれましてね。
それも時期が悪かったの。
2月。
身延の山の中へ放り込まれちゃったの。
本当はね我々の宗派は百か日寒行つってね11月12月1月2月の3日に帰ってきてでまた全部で頭から水かぶるんですよ。
日蓮宗の一番修業の厳しいのは全部水かぶる事ですから。
山の中の2月よ。
雪が降ってくるの。
褌一本で頭から「南無妙法蓮華経」ってガバ〜ッと。
俺は一生懸命やったよ。
ばかだから3日目にひっくり返っちゃった。
(笑い)これを「三日坊主」と言うんだ。
(笑い)心筋梗塞ってんだ。
痛いよあれは。
こっちはこんなになって唸ってんのにお寺はお寺で相談してんだ。
「あんな者がここで死んだ日にゃどのくらいマスコミが来るか分からない」。
(笑い)慌てて救急車で東京病院へ入れられちゃったよ。
いろんな野郎もいるけどお寺から病院ってなぁ俺だけ。
(笑い)私は元気で出てきましたけど私のあとに入った逸見政孝って方が亡くなったんだ。
そのあとに渡辺美智雄さんが亡くなったんだ。
最後に君島一郎さんが亡くなっちゃったんだ。
これをよせばいいのに元気になって出てきてね慌ててNHKで生放送でやらせてくれたんだ。
言わなくてもいいだろ?こんな事。
言っちゃったんだ。
1か月経たないうちにその病院から電話かかってきたよ。
「圓歌さん。
あんたがあんなくだらない事言うからあの部屋へ入る客がいなくなっちゃったよ」。
(笑い)皆様も病院ぐらいお入りになったでしょうね。
嫌だねあの何て言うのかなさみしくなるってぇのとねまた違うんだよね。
こんな所へ何か入れられて上のほうからダラダラ出てくる。
こうやって待ってる。
とみんな見舞いに来るでしょ?落語家なんかろくなの来ないんだから。
顔をジ〜ッと見てて「どうしたの?」ってやがる。
「どうしたのって病気になったからここにいるんだよ」。
(笑い)「ね?出てくりゃねどうにかなってるんだよ」。
「何で病気になったの?」。
「だから病気になったからここにいるの」。
(笑い)家のおふくろなんか訳の分からない事言ったよ。
「代われるもんなら代わってやりてえ」。
(笑い)どういう意味なのかね?家の弟子で1人間違えた奴がいるんですよ。
「圓歌ですが」。
「こちら何々新聞です。
師匠のご病気は?」。
「心筋梗塞です」。
これ慣れちゃったんだね。
一遍間違えちゃったんだ。
「師匠のご病気は?」。
「心筋梗塞です」って言おうと思ったんでしょ?「近親相姦です」つったんだ。
(笑い)何で俺が山の中で女と寝てなきゃならない。
ね?芸界へ入った事もそうだけど私としてはねこの時が一番病人になって「あっいいな」と思ったよ。
で島倉千代子さんがお亡くなりになった時にね前お目にかかるとね「眠い眠い」ってよく仰ってたんです。
俺が今ちょうど眠いんだよ。
(笑い)いや。
アハハじゃなく。
今日が今一番眠いんだよ。
(笑い)ね?だけどそのくらい冗談言えるからいいんだよ。
ね〜。
だけど私なんか芸人になった時に見て「あっこの人の死に方見たいな」と思ったのは四代目の柳家小さんさんね。
あの人はね高座終わって楽屋へス〜ッと引っ込んで前座がお茶出してこのお茶を静かに飲んでそのまま前へしゃがんで亡くなったの。
あれは我々落語家としては一番最高の死に方です。
私はもうこの方がお亡くなりになった時からああいう死に方をしたいと思った。
まぁ今日辺りがそうじゃないかと思う。
(笑い)でも私が死ぬとみんなそう言うでしょうね。
「そういやぁどことなく元気がなかったなあいつ」。
(笑い)元気あるんだよ俺。
早く終わって飲みたいとそれだけなんだから。
ね?
(笑い)だからおふくろと親父はズ〜ッといたんですから6人とも。
ある時ねおふくろが真面目な顔してね…。
「兄ちゃん。
私はね親孝行って言葉は随分聞いた事あるよ。
あんたみたいに本当にやってくれたのは珍しいんだよ。
ね?私とおとうさんとよく喋ってるよ。
だけどお前にどうやって子孝行して死んでいくか分からないから私もおとうさんもお前の世話にならないように静かに亡くなりますからそれをお前も覚えときなさい」。
「また何かボラボラ言ってるよこの婆」と思ったんだ。
1週間ぐらい経って弟子が「お婆ちゃん朝のお支度が」。
呼びに行ったら静かに亡くなってたよ。
つまり私には下の手伝いもさせなきゃ病院の処置もさせなかった。
これを子孝行って言うんだってね。
私も私の先輩の坊さんから聞いたんだ。
その次のお婆ちゃん何も言わないで便所で死んじゃったよ。
3番目のお婆ちゃんこれも嘘みたいだね。
「明日病院行くぞ〜」つったらその前の晩に死んじゃったんだから。
(笑い)お亡くなりになった方はいいよ。
残った爺だよ。
(笑い)何か考えそうなもんでしょ?ね〜?「俺もさんざん苦労をかけた家の女房が死んだんだから俺たちもこんな事ボ〜ッとしてないで順番に逝こうじゃねえか」。
(笑い)誰も相談しないよ。
全部元気でいたね。
一番長くいたのが私の親。
おふくろが死んで13年。
それも黙ってねお元気でお暮らし頂ければ私としても何も言わないよ。
お暮らし頂けないんだよ。
まぁ私の家はご存じでしょうけど有島武郎さんて方のお屋敷の跡なんです。
ね?で上にこういう回る階段があるんですよ。
何階段って言うの?こんなになってね。
そこをね上がったり下りたりして有島先生がお隣の里見先生その向こう側の泉鏡花先生ここへお辞儀をしてから朝のお食事をすると。
これを家の爺に言ったらね爺も喜んで上がったり下りたりしてたんだ。
一遍誰かにね「お〜い」って言おうとしたらね入れ歯が落っこっちゃったんだ。
(笑い)入れ歯が落ちるってのは普通コンケンコンケンって落ちる。
あれ違うねこういう階段はケックリコンケックリコン。
後から親父がズドンズドンズドンズドンて落っこちた。
こらぁ大変だってんでね弟子とみんなで担いで家の近所の大きな病院入れてやったんだ。
「もう出てこない」と思ったんだ。
2年経ったら「ただいま」って帰ってきた。
(笑い)この親父の形見て前のかみさんの親父がまたひっくり返っちゃったんだ。
ご丁寧な事に2度目のかみさんの親父は家へ来る前から揺れてんだ。
我が家は3人揃って揺れてたんだ。
それはねお一人ぐらい揺れてるとね誰が見ても「気の毒だ」と思いますよ。
3人揺れたの見た事ありますか?小さな地震じゃ気が付きませんからね。
(笑い)これがまた夢中になってねプロレスのファンなんだよ。
アントニオ猪木って人が負けるとね3人が3人この辺から声出すよ。
「猪木が危ねえ猪木が…」。
お前らのほうがよっぽど危ねえんだよ。
(笑い)弟子は大勢いるけどね「お爺さん散歩させてこい」ったって誰も行かないよ。
「私は圓歌の弟子になったんであなたの親の弟子になったんじゃねえ」って「そんなにやりたかったらあなたやりなさい」ってぇの。
言われてみりゃごもっともだからね。
一遍だけやってやめたね。
3人がこうやって歩いてるでしょ?後から偉そうにこうやって歩いてる。
近所の子供が私の顔ジ〜ッと見て「おじさんだけどうしてやらねえんだ?」って言う。
(笑い)やれないよ俺だってね。
(笑い)でもね家の親父なんかね「兄ちゃん。
俺お前の偉さはね噺家になってある時から仏道へ入っちゃってそれでズ〜ッといるんだけど仏様ってぇのはどういうもんだか教えてくれ」っつうの。
「あっ問答で来たな」と思うから親にね…。
「今あんたがお茶飲んでるだろ?そのお茶碗の中にお茶が入ってるんだよな?そこにお茶碗があるからあんたがお茶飲めるんだよ。
お茶碗が無かったらどうやってお茶飲むんだよ?」。
しばらく考えてやがってね「ウ〜ン分からねえ」。
「分からなくないんだよ。
そのお茶碗があるからお茶が飲めるんだよ。
つまりそのお茶碗のおかげであんたがお茶が飲めるという事に気が付きゃいいんだ。
そうしてみりゃそのお茶碗は仏様なんだ。
だからなにも仏壇を拝めってんじゃないんだ。
あなたが見てるものそのものをそこで拝みなさい」。
…ったら明くる日から3人揃ってみんなで茶碗拝んでるんだ。
(笑い)だから「そりゃ茶碗もそうだけどたまには仏壇も拝みなさい」って。
(笑い)で「兄ちゃん。
一遍ね本当の仏様の道をお坊さんから聞きてえ」ってんだ。
で私のところは日蓮宗ですから堀之内さんに立派なお寺があるんですよ。
そこへ3人連れてったんだ。
ご存じでしょうけどあそこ鳩がいるんですよ。
3人がこの鳩の前へ止まってね…。
黙ってりゃかわいいでしょ?かわいくないんだよ。
「豆やろうか?豆やろうか?」って俺に買ってこいって命令しやがるの。
(笑い)しょうがないから豆腐屋行ってもらってきた。
「お爺さん。
豆だよ」。
3人揺れてるほう出して3人揃ってこうやってる。
(笑い)かわいそうなのは鳩だよ。
(笑い)くれるんだかくれないんだか分からない。
親父の周りに全部の鳩が一緒になってこんなんなって。
この間この落語を聞いてわざわざ鳩を見にお寺へ行っちゃった人がいるの。
あれからこの落語やりにくくなっちゃってね。
でも私も80過ぎました。
いつまでも皆様に元気で笑って頂きたいと存じます。
笑ってれば健康です。
私もいい年寄りで大いに元気でいたいと思います。
「年老いて万事枯れゆく昨日今日むさ苦しさになるまいぞゆめ」。
お馴染みの「三道」でございます。
ありがとう存じます。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2014/04/05(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「三道〜鉄道・芸道・仏道〜」[解][字][再]

落語「三道〜鉄道・芸道・仏道〜」▽三遊亭圓歌▽第653回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「三道〜鉄道・芸道・仏道〜」▽三遊亭圓歌▽第653回東京落語会
出演者
【出演】三遊亭圓歌

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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