クローズアップ現代「乗り越えられるか 消費増税」 2014.04.01

東日本大震災で被害を受けた、岩手県大船渡市の小学校で行われました。
1年でおよそ9万円。
年収600万円の4人家族が消費増税で新たに負担する金額です。
消費の落ち込みが懸念される今回の増税。
小売りの現場では難しい対応を迫られています。
この衣料品チェーン。
消費者の心をつかもうと増税後も販売価格の据え置きを決めました。
一方低価格路線とは一線を画しあえて高品質の商品で勝負する流通大手も現れています。
新たに開発したこのシチュー。
およそ500円という異例の価格設定です。
消費増税を企業はどう乗り越えようとしているのか。
その戦略の舞台裏に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
日銀が、きょう発表した企業短期経済観測調査によりますと大企業の景気判断は5期連続で改善するなど日本経済は回復軌道にあります。
こうした中できょうから実施されたのが消費税の増税です。
5%から8%に引き上げられたことで消費者の消費行動はどう変わるのか。
増税前の駆け込み需要が大きければ大きいほど消費の落ち込みが激しくなり増税後の景気への落ち込みが大きくなると懸念されています。
民間の調査会社など41社の予測をまとめたシンクタンクは4月から6月には実質のGDPが平均で年率マイナス4.1%と予測。
一時的な消費の落ち込みは避けられないと見られています。
こうした反動を少しでも和らげ売り上げの減少や業績の悪化を防ぎたい。
消費税増税後を乗り切るため企業は今の消費者の心理をどのように捉え、どんな戦略を取ろうとしているのでしょうか。
苦い体験として刻み込まれているのが前回、1997年に消費税が3%から5%に引き上げられたときの経験です。
景気が回復軌道にある今と不良債権が日本経済に重くのしかかっていた当時とは状況は全く異なりますが当時、落ち込んだ消費を喚起しようと企業が突き進んでいったのが果てしない値下げ競争です。
デフレが長い間続き家庭の平均年収も減っていったのです。
きょうから8%へと引き上げられた消費税。
増税による売り上げの落ち込みが予想される企業はどんな対応で乗り越えようとしているのかまずは、ご覧ください。
きょう午前9時過ぎ。
開店前の衣料品チェーンです。
全国におよそ840店を展開しています。
増税後も、販売価格を据え置くことにしました。
安さを売りに若い女性の支持を集めてきたこの会社。
過去に、値上げで客離れを招いたことがあります。
ここ数年生産の大半を占める中国で人件費が上昇。
さらに円安で商品の輸入コストも増加しました。
そこで去年秋平均で10%の値上げを試みました。
しかし、客数が2割減少。
2か月で元の価格に戻すことになりました。
このときの反省から増税後も値上げをしない方針を打ち出したこの会社。
コスト削減につなげるため人件費の安いミャンマーで生産を拡大しようとしています。
人件費は、中国の5分の1。
来年には2つ目の工場を稼働させ生産量を5倍に増やす計画です。
増税で、どのような商品に影響が出るのか。
調査している会社があります。
国内最大手の市場調査会社です。
スーパーやドラッグストアなど3000に上る小売り店で何が売れたのか膨大な売り上げデータを収集。
増税によって買い控えが起きる商品を独自に分析しました。
長期にわたって買い控えが続くと見られる商品。
アイスクリームやチョコレートなどのお菓子それに消臭・芳香剤や入浴剤などの日用品です。
この分野は生活必需品ではなくしこう品が中心です。
節約の対象になりやすい商品と分析。
売り上げは年間2.3%減少すると予測しています。
消費増税によって体質の改善を迫られる企業もあります。
こちらが当社の主力商品になります。
消臭・芳香剤や防虫剤を扱う日用品メーカーです。
経営戦略部リーダーの岡部豊さんです。
消費増税後の売り上げは2か月で9億円減少すると試算しています。
この会社では岡部さんが中心になって取り扱う商品の絞り込みを進めています。
利益の高い商品に経営資源を集中することで増税による売り上げの落ち込みを補いたいとしています。
今年度は取り扱う1500の商品のうち300品目を減らす予定です。
売り上げの4割を占める消臭・芳香剤のシリーズ。
消費者の好みに応じてさまざまな香りやデザインをそろえてきました。
この主力商品も利益が少ないものは削減の候補になります。
今後1か月以内に社内の担当部署を説得し削減する商品を決めたいとしています。
増税をきっかけに選択と集中を一段と加速させ厳しい環境を乗り越えようとしています。
今夜は前回の消費税増税から、1万人規模で、消費者の動向の調査を続けています、野村総合研究所、主任コンサルタントの松下東子さんにお越しいただきました。
節約の対象になる可能性のある商品、あるいはその売り上げが落ち込む可能性がある分野の商品を扱っている企業、やっぱり体質改善というところまで乗り出しているんですね。
そうですね。
消費税増税後の冷え込んだ消費をアップするために考えられるものとしては、一つが97年増税後に行われたような価格戦略、そしてもう一つがおっしゃっていただいたような利益を追求するような体質改善。
もう一つが価格によらない魅力度を打ち出す、新機軸を打ち出すというようなところになってくるかと思いますが。
価格競争というところでは、現状不況下で、ぎりぎりまで切り詰めてらっしゃる企業が多い中で、今後、こちらだけを追求していくというのは消耗戦になるかと思います。
やはりおっしゃっていただいたように、体質改善、あるいは、高付加価値化というようなことを、追求していかなければというようなところを感じております。
新しい商品を付加価値のあるものを出すという選択肢もあるということですが、やっぱり気になるのは、この3%の増税に対して、消費者の行動が、どう変わっていくのか、この調査を続けてらっしゃって今、どんな傾向が見えてますか?
そうですね。
実は年末にアベノミクスと消費増税に関してのアンケートを実施したんですけれども、消費者の実に80%の方が、消費増税が消費活動に影響があるとお答えになっていました。
こちらにデータがあるんですけれども、内訳を見てみますと、こちら、世帯年収別に大きな差がございまして、200万円未満、あるいは200万円から600万円の層では、非常に影響があるとお答えになる方が過半数でいらっしゃったのに対して、1500万円以上の層では、4分の1程度という形で、年収別に顕著な差がございます。
こちらの背景には、そもそもアベノミクスで、景気の上向きを実感したかどうかというようなところがございまして、そちらの質問に対して、上向きを実感したとお答えになった方が13%にとどまる。
13%?
そして、そちらも当然やはり世帯年収別に大きな差があるというようなところで、一部の方では景気の上向きを実感はされているんですけれども、その他の多くの方に関しては、そこがないままでの消費増税というようなところで、支出を切り詰められるというような行動に走られる方が多いのではないかと思います。
実感できていない方がまだまだ圧倒的に多いとなると、心配されるのが、前回行われた価格、安いものをどんどん選んでいく、そしてそれに応えて、企業がその安い戦略にまた打って出るのではないかということなんですけれども、またデフレに戻るんではないかと。
そうですね。
実は97年当時と大きく違っているのが、消費者の意識になります。
こちら、実はデフレ状況下でも、ただ安いものを買いたいというような意向が弱まっていて、むしろ、ご自身の納得する価値に関しては、価格を払いたいというような方が増えているというようなデータがございます。
そうすると、安いものも選ぶけれども、こだわりたい商品にはお金を出す、そういう傾向が見られるわけですね。
さあ、この今、お話ありましたように、前回の消費税増税と比べて、変化している消費者の消費行動。
こうした中で、価格競争から脱却しようという動きも現れています。
おはようございます。
セブン&アイホールディングスの鈴木敏文会長です。
売上高10兆円に迫る流通グループを率いています。
先月、入社式で1200人の新入社員に対し直面する最大の課題は増税への対応だと訴えました。
コンビニやスーパーデパートなどおよそ100社を束ねるこのグループ。
その価格戦略は業界全体にも大きな影響を与えるだけに増税後の方針が注目されていました。
鈴木会長が打ち出したのは20年近く続いてきた低価格競争からの脱却です。
自社ブランドの商品を見直し価格にとらわれず質を重視することにしました。
この決断の背景には前回の消費増税のときの教訓があります。
税率が3%から5%に引き上げられた17年前。
山一證券や北海道拓殖銀行が破綻。
アジア通貨危機も重なり景気が大幅に悪化します。
落ち込んだ消費を刺激しようと自社のスーパーをはじめ小売業界全体が、こぞって低価格競争を始めました。
しかし、消費は伸びず値下げがさらなる値下げを呼びデフレの一因となったのです。
こうした教訓を踏まえこの会社では低価格競争とは一線を画す戦略を推し進めます。
ことし2月、増税を見据えた新たな自社ブランドを作りました。
北海道産の甘みが強いという大豆で作った豆腐。
価格は従来の2倍の198円です。
素材にこだわった大福も価格は従来の2倍2個300円です。
それでも売れ行きは予想の3倍を超えました。
増税後もこの戦略は消費者に指示されるのか。
シンクタンクが消費者4000人の意識を調べたデータです。
増税後、とにかく安いものを買うと回答したのは29%。
それを上回る40%の人が価格に見合った品質のものを買うと回答。
高品質の商品なら、多少高くても買ってもらえるという分析でした。
増税を目前に控えた先週。
商品開発や店舗経営の担当者1500人が集まりました。
自社ブランドのうち生活必需品など一部は値下げするとしながらも600の商品は質を高めたうえで価格を見直すと伝えられました。
この会社では、今高価格帯の商品開発を急ピッチで進めています。
その一つが、発売を間近に控えた牛タンシチューです。
価格は、およそ500円。
これまでにない価格設定です。
長年続けてきた低価格競争からの脱却。
増税後消費者に受け入れられるのか試されています。
消費行動の変化を捉えて、低価格競争から一線を画して、新たな商品を打ち出す。
従来のものと比べて2倍というものも出していて、本当に大丈夫なのかなというふうにも見る方もいらっしゃるかと思うんですけれども。
先ほど少しお話を申し上げましたけれども、こちらに97年、正確には2000年からですけれども、2000年以降の消費スタイルの変化というようなものがございます。
こちらを見ますと、ただ安いものを買いたい、安ければよいという意識、こちらは2000年をピークに、40%から27%へと、大きく下がっています。
その一方で、自分が気に入ったもの、納得した付加価値には対価を払いたいとお考えになる方が、こちらは13%から22%へと、大きく増えているということになります。
先ほど、大福のところで、おっしゃってた方、いらっしゃいましたけれども、まさにその気に入らないもの、安くてあまりおいしくないものをたくさん買うというよりは、むしろ納得感のあるもの、気に入ったものを少数精鋭で持ちたい、買いたいというような意向が高まっているのではと思います。
そのほうが満足を得られると、そういったときには、高いものにお金を出しても買いたいということになったということですね。
そうした消費者心理を捉えてっていうのを打ち出す高価格、その新しい付加価値のある商品ですけれども、ただ一方で、全体の経済状況を見ますと、大企業の景気判断というのは、5期連続で改善しています。
しかし、一方で先ほどおっしゃったように、アベノミクスを実感できている方は僅か13%。
でこの間、長い間かかって家計の平均所得というのは下がっているし、今、その消費者物価指数も上がっているというような、マイナス面も多くある中で、ここでその実行された消費税の3%増税によって、この腰折れが、景気の腰折れが起きないのかということは、心配は付きまといますね。
そうですね。
われわれのほうで分析したデータでも、将来の生活不安が多い方ほど、消費に対して抑制的な行動を取るというようなところがございます。
今申し上げたような自分の気に入ったもの、納得したものには、それに見合った対価を払って手に入れたいというような、そういった消費を促進して、経済の好循環というところを回していくためには、やはりその将来不安の払拭、将来への期待というようなところが重要になってくるかと思います。
さっきの春闘で賃上げのニュースございましたけれども、あちらが中小の方、あるいは非正規雇用の方というふうに広がって、さらに先に続いていく、そういったところでこのあと、お金が入ってくるという見込みの中で、健全な消費ができていくようになるということが重要なのではないかと思います。
アベノミクスで、景気がよくなる気分というのは、去年あたりから非常に高まってはいますけれども、本当にじゃあ、将来の不安が払拭できたかっていうところまでは、まだ行き着いていないと?
実際に消費行動を変えるタイミングは、景況感が上がるというようなところよりも、むしろ自身の収入が増えるところというようなことがデータで出ております。
そういったところの不安払拭の施策が、今後も打たれていくというふうに考えます。
きょうはどうもありがとうございました。
2014/04/01(火) 19:30〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「乗り越えられるか 消費増税」[字]

4月から8%に引き上げられる消費税。消費の冷え込みに対応するため、安さではなく高付加価値の商品で勝負する企業も出ている。増税を乗り越えようとする企業の戦略に迫る

詳細情報
番組内容
【ゲスト】野村総合研究所主任コンサルタント…松下東子,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】野村総合研究所主任コンサルタント…松下東子,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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