あなたをこの世に送り出すもの。
それは細胞の力です。
命の始まりは子宮の隣卵巣の中。
卵子は大切に卵胞細胞にくるまれて卵巣から旅立ちます。
そこにやって来たのはそう精子。
卵子と精子が合体しあなたの命が生まれます。
始まりはたった一つの細胞受精卵。
それがあなたを作り上げていきます。
その細胞たち。
私たちを生かすためさまざまな戦略を繰り広げているのです。
例えばこんな不思議な事実をご存じでしょうか。
妊娠中母親がダイエットにいそしんでいると産まれた子どもは一生の間太りやすくなってしまう。
これも細胞の編み出した戦略のゆえなのです。
頭をよくする細胞も見つかっています。
もぞもぞと動いている白い点。
まさに今頭がよくなるように活動中の細胞の姿です。
この細胞を活発に働かせる方法も明らかになってきました。
3回シリーズでお届けする「人体ミクロの大冒険」。
あなたの知らないあなたの内側。
小さな小さな細胞たちの世界を訪ねてみましょう。
今日は成長を続ける私たちを内側から支える細胞のスーパーパワーを描きます。
私たちはどのように育ち学びそして個性を育むのでしょうか。
最新研究によって脳を作る神経細胞の秘密が今明らかになってきています。
私たちの学ぶ力を支える細胞たちの知られざる戦略に迫ります。
ミクロの世界を探る旅。
番組の案内役は?iPS細胞の生みの親山中伸弥さんと劇作家演出家で役者。
野田秀樹さん。
そして第1回のゲストはバイオリニストの葉加瀬太郎さんです。
細胞という言葉と戦略という言葉が結び付かないですねまず。
細胞というと普通の方は私たちの体を作っている部品だと。
パーツだと思われると思うんですね。
そうなってくるとパーツに戦略はないですよね。
しかし細胞はパーツじゃないんです。
細胞自身が何か物事を考えてそして行動を起こすという…?僕はね昨日からいるんで。
僕よりはもう基礎知識が。
細胞はかなりすごいです。
ほとんどの人は細胞を見た事もないと思うんですが私たちは毎日。
ご覧になってる…。
細胞と共に起き細胞と共に寝るような人生を送っていますのでだからこそ余計に細胞のすごさ。
私たちの体の中には60兆個。
そして200種類以上ある。
だからもう奇跡としか思えないんです。
私たちがこうやって会話している事が。
すごい。
すごい。
細胞すごい。
はあ〜。
今日どこまでいくんでしょうね。
あなたを作る細胞世界への旅。
まずは…。
誰もが経験しているのに誰も見た事がないもの。
成長を始めたばかりのあなたの姿だ。
細胞の秘密を知るためにちょっとのぞいてみましょう。
お母さんのおなかの中。
小さな顔と小さな手。
妊娠5か月の赤ちゃんです。
へその緒も見えます。
足の間を通って延びています。
へその緒の役割はご存じですよね。
お母さんから胎盤を通して栄養を受け取るための命の綱です。
でも赤ちゃんが受け取るのは栄養だけではありません。
細胞たちが戦略を練るための重要なメッセージも受け取っています。
それは一体何か。
いざ赤ちゃんのもとへ!血管の中を進みます。
白い霧のようなものは赤ちゃんに届ける栄養分です。
今私たちがいるのはこの辺り。
胎盤の少し手前です。
胎盤は赤ちゃんがいる子宮の上側にあります。
袋のような形でお母さんの血液で満たされています。
胎盤の中には不思議な風景が広がっています。
まるで赤い海に漂うサンゴ礁のよう。
コチルドンといいます。
赤ちゃんの姿は見えません。
でも実はこのどこかに赤ちゃんの体の一部が潜んでいるんです。
枝のような組織の中にうっすらと見えてきた赤い筋。
赤ちゃんの毛細血管です。
赤ちゃんの体から延びてきているのです。
コチルドンの表面を覆う栄養膜細胞は酸素や栄養分を通します。
おかげで赤ちゃんはお母さんからの届け物をしっかり受け取る事ができるのです。
コチルドンの高さは1cm足らず。
こうやって見ると見事な夜桜のようです。
まさに赤ちゃんを支える命の木なのです。
そして赤ちゃんは?根っこに見えるこの更に下。
コチルドンの根っこが一つにまとまったのがへその緒です。
ここで赤ちゃんはおよそ10か月を過ごします。
実はこの時赤ちゃんのある細胞がメッセージを受け取って生き抜くための戦略を練り始めているのです。
それこそが番組の冒頭で紹介した不思議な事実。
サウサンプトン大学のゴッドフリー博士は延べ3,000人のお母さんに日記をつけてもらい妊娠している間どんな食事をしていたのか詳しく調べました。
そして産まれた子どものその後の成長と照らし合わせたのです。
博士は妊娠中の食事によってお母さんたちを4つのグループに分けました。
炭水化物の摂取量が非常に少なかった人少なめだった人。
多めだった人。
そして非常に多かった人です。
それぞれのお母さんから産まれた子どもの太りやすさを比べてみると右側の3つのグループにはほとんど差がありません。
飛び抜けて子どもが太りやすかったのは左端。
炭水化物の摂取量が一番少ないグループでした。
注目したのは保存されていた子どものへその緒です。
へその緒にはお母さんのおなかにいた当時の細胞が残されています。
その細胞が子どもをあえて太りやすくしていたのです。
細胞の名前は間葉系幹細胞。
大きさは10分の1mm以下。
この細胞いろんな細胞に変身する事ができます。
例えばこれは脂肪細胞に変身する様子。
中央の細胞が細長い形から丸い形へと変わっていきます。
脂肪細胞になったのです。
その内側には自分が作った脂肪の粒が見えます。
間葉系幹細胞はほかにも筋肉細胞や骨や軟骨の細胞になる事ができます。
実はお母さんがダイエットに励んでいるとこの間葉系幹細胞が脂肪細胞に変化する割合が増えるのです。
「お母さんが栄養不足なのは外の世界が食料不足のせいに違いない。
脂肪細胞を増やして栄養をため込み飢餓を生き抜こう」。
子どもが太りやすくなったのはお母さんのおなかの中で細胞がそう判断したためだったのです。
ふ〜ん。
いざという時の備蓄ですね。
だから細胞がちゃんと考えてくれているんですね。
私たちは進化の結果人間になったんですね。
その長〜い進化の過程でほとんどの間は生物は飢餓状態にあったと思われます。
ごく最近なんです。
たくさん食べる事ができるようになったのは。
だから生物にとってはいかに飢餓状態の中で生き抜くかという事がホントに死活問題。
ですからそれをまだ私たち人間も覚えていて…。
人類の記憶っていう事ですよね。
そうなんです。
お母さんの食べ物の中で炭水化物が少ないと飢餓の時の事が思い起こされてそれに対する防御をガ〜ッとしてしまう。
それは細胞単位でという事ですね。
そうですね。
よくほら生まれつきのとか持って生まれたもの。
遺伝子とか。
遺伝子っていうじゃないですか。
もちろんそれもあるかもしれませんけれどもそうではないという事ですか?全ての細胞には遺伝子という設計図があるんですね。
これは少しまた台本に例えさせて頂くと台本そのものは一緒なんですね。
たとえお母さんがあまり栄養をとらなくても台本が変わる事はないんですがどのページを読みなさいという情報が変わります。
脂肪細胞になるためのページというのがあって台本の読み方が変わってしまう。
太りやすい体質っていうのも細胞の判断っていう事になると。
はい。
細胞に従えばいいんだ。
細胞という…。
「脳が」とか「筋肉が」とかというイメージは持っている。
それが集まったところで何かがというイメージしか持てないじゃないですか。
それが一つ一つの細胞がというところはイメージがなかなかまだできないですね。
細胞一つ一つが周りをうかがいあなたを助ける。
実はこれあなたを作る60兆の細胞たちが日々行っています。
視細胞なしに光の色や強さは識別できません。
聴覚の細胞なしに音の高低を判断する事は不可能です。
ほかにも嗅覚の細胞や触覚細胞などなど。
皮膚の中に潜むこの細胞もある重要な判断であなたを支えています。
中に見える黒い粒。
この細胞はメラニン色素を作り出します。
この細胞が感知するのは紫外線の強さ。
強烈な日ざしを浴びると…メラニン色素を大量に放出!なんと遺伝子の入った細胞の核を素早く日傘のように覆って紫外線から守ってくれます。
メラニン細胞が働かなければ大切な遺伝子が傷ついてしまうのです。
高地トレーニングという言葉聞いた事がありますか?それは遠く離れた細胞同士の連係プレーです。
最初に働き始めるのはなぜか腎臓の細胞。
緑色の部分…酸素不足を察知して信号を全身に発します。
信号を受け取って働きだすのは骨髄の細胞。
酸素不足を解消しようと赤血球の増産が始まります。
これによって私たちの運動機能が向上するのです。
食事を楽しむ。
それも細胞のおかげです。
支えているのは小腸。
そこには最も寿命の短い細胞がいます。
びっしりと並ぶ無数の突起。
表面を覆う上皮細胞の寿命はたった3日です。
時には食べた物の中によくない物が混じっている事があります。
この時短い寿命が意外な役目を果たします。
上皮細胞は突起の上に向かって押し上げられ頂上に達すると剥がれ落ちて死に体の外へと運ばれます。
その時有害な物質をくっつけて運び出してくれます。
日焼けするというのはそういう事なんですか。
守っている訳だ。
こう日傘を…。
気遣いですね。
気遣い。
こうやって見てると何でもかんでも細胞ですよね。
ですね。
そういう細胞がこういう環境だからこうしろとかいうのは細胞そのものが…。
判断しているんでしょうね。
ジャッジしているって事ですね。
はいはいはい。
ジャッジあるいは対応というんですかね。
すぐどんどんどんどん変わっていくものというのを…。
全ての細胞が持っています。
ちょっと話変わっちゃうんですけど目的のない細胞ってあるんですか?ハハハハハ…。
ずっとぼんやり…。
みんな今日…すごい細胞偉くて…。
みんな仕事するやつばっかりですもんね。
すばらしいじゃないですか。
システムとして。
いわゆる何にもしないで…。
それは恐らくないんじゃないかなと。
ないんですね。
死ぬのが目的の細胞もいます。
ほかの細胞を守るために私は死ぬために生まれてきましたという目的の細胞もいます。
細胞の中にはやっぱり言う事を聞かないというか…。
好き勝手。
オーケストラでも「俺が俺が」みたいな。
やっぱりどこの世界も俺が俺が細胞は問題ですね。
そういう細胞は?残念ながら特に年を取ってくるとだんだんそういう細胞が増えてきて一番典型例ががんですけれどもがんの細胞というのはもともと私たちの中で一生懸命働いてくれていた細胞なんですがそれがある日突然増える事だけが趣味になってしまってほかの仕事はやらなくなってともかく俺は増えるんだ増えるんだと。
まさしくオーケストラでいうとアンサンブルなんて関係ないと。
大きい音でギャ〜と弾いて。
ギャ〜と弾いて立ち上がってしまうオーケストラの。
自分は満足をしていると。
何だか60兆個の細胞たちが社会みたいになっている気がしてきましたね。
は〜。
気持ち悪いな。
何か気持ち悪いですね。
この中に何かいろんなやつがいると思うと。
まさに社会です。
そんだけ複雑な細胞がずっと同じじゃなくて日々こう生まれ変わって…。
なるほど。
更新されていく。
はい。
60兆の…。
(笑い声)大変ですよ。
大変な事になりますもんね。
60兆人役者がいた舞台なんてね。
地球より多い。
人知れず働きあなたを生かしている細胞。
そのために細胞たちはひたすら変化していく。
そんな彼らはこの中にも潜んでいる。
細胞たちの中でも変化の激しさで極め付きともいえるのが脳の神経細胞です。
最新の科学技術が捉えたその驚くべき姿をご覧頂きましょう!使うのはマウスの脳です。
まず脳を極限まで薄く切っていきます。
その厚み髪の毛の太さのたった1,000分の1。
スライスしたあとは電子顕微鏡で1枚ずつ撮影し神経細胞ごとに色を変えて塗り分けます。
この作業を2年間続けて…出来上がったのがこの立体。
どのくらいの大きさだと思いますか?縦横1,000分の24mm高さ1,000分の12mm。
実に塩1粒の1万分の1という小ささです。
この固まりから余計な部分を取り除いていくと隠れていた神経細胞たちが絡み合った状態で姿を現しました。
その数実に1,200個。
細胞一つの姿はこちら。
その端っこは細かな枝が密集しているような構造をしています。
神経細胞の数は人間の場合800億にも上ります。
その世界とは…。
800億の神経細胞が作る森。
神経細胞にはそれぞれ最大1万もの枝がついています。
スパインと呼ばれています。
無数のスパインが伸び縮みするこの活発な動き。
実はそれには大きな意味があります。
私たちが何かを学ぼうとする時神経細胞が働きます。
その働きこそこの活発な動き。
2つの神経細胞がスパインによって今つながりました。
学んだ瞬間です。
スパインによってつながるとその通り道を電気信号が通ります。
信号が通る度この回路は強化されていきます。
このように強化されたスパインの回路を持つ事が学習であり記憶なのです。
何か新たな体験をする度にスパインをつなぎ新しい回路を作る。
神経細胞同士がスパインをつなげようと手を伸ばすように動いている姿こそ私たちの学ぶ力の源なのです。
それがどれほど高い能力を発揮するか。
カナダブリティッシュコロンビア大学で行われた一つの実験が教えてくれます。
登場するのは赤ちゃん。
こんな音を聞かせます。
タタタタ…。
全部同じ音に聞こえますよね?でも実はこれヒンディー語の2種類のタの発音。
ヒンディー語を話す人たちにとっては聞き分けは簡単だといいます。
早速確かめてみましょう。
2つの音を聞き分け色の違う札を出してもらいます。
「タ」。
「タ」。
「タタ…」。
お見事。
でも私たちには聞き分けられないですよね。
実験ではこの音をカナダ育ちの赤ちゃんに初めて聞かせます。
赤ちゃんが聞き分けられるかどうかの判断は画面右に置いたスピーカーからタの音を繰り返し流し途中で音を切り替えた時の反応を見ます。
こちらは生後6か月の赤ちゃん。
「タタタタ…」。
おや音の方に振り向きましたよ。
音が切り替えられた瞬間に…ほら!どうやら聞き分けられたようです。
この子も…ほら!400人の赤ちゃんを調べたところ8か月未満の赤ちゃんはなんと90%以上の正解率でこの聞き分けができていました。
これは無理ですね聞き分けろって言われてもね。
でも分かりましたよ僕。
えっそうですか。
(葉加瀬)はい。
「タタ…」ですけど。
「タ」と「ンタ」ですね。
アクセントが…。
激しくやると「タ」というのと「ンタ」だと思います。
タタ…。
ンタンタ…。
僕のイメージでは16分休符が入りますね。
いやあの僕には全く区別つかないですね。
リズムだけではなくて例えば絶対音感とかあるじゃないですか。
それも細胞なんですか?もちろん細胞ですよね。
耳の聴覚の細胞でありそれを受け止める頭の。
認識をする。
認識の問題ですから。
ですから葉加瀬さんがそういう能力をつけられたのは子どもの時のトレーニングがものすごい効いてると思うんですね。
僕は4歳からバイオリンをやってますね。
脳っていうのはほかの細胞に比べて1つ大きな特徴があります。
ほかの大部分の細胞というのは子どもの時の細胞と今の細胞はほとんど入れ替わっています。
違う細胞です。
でも脳の細胞は生まれた時の細胞がほぼ残っています。
そのままです。
ですから子どもの時にトレーニングされたそのトレーニングは結局は脳の細胞同士がいろんな回路を作る手を結ぶその回路が子どもの時に形成されていてそれが今まで残っている。
僕はその回路が形成されていないので今も今後も恐らく形成される事はない。
音楽であるとか語学であるとか。
小さい時にかなり作られてしまうという事なんですか?まさにそうですね。
実はさっきの実験には続きがあります。
10か月を過ぎた赤ちゃんは…。
「タタタタ…」。
反応しません。
聞き分けの正解率はがた落ち。
一体なぜでしょう?産まれてすぐの赤ちゃんは神経細胞がとても活発に動いています。
ところが成長するにつれてこの動きは止まってしまい新たな回路を作るのは難しくなっていきます。
そうなると同じ音を聞いても聞き分ける能力は発達しません。
僕は30歳くらいの時にアメリカに初めて住んだんですが英語がなかなか上手にならないいまだに。
僕もです。
ついこの間もサンフランシスコのホテルでレストランの場所を聞いたらレストルームの場所を教えてくれてしかたないからトイレに行きましたけれどもそんなふうになかなか英語が。
RとL。
いわゆる「う〜」とか「う」これができない。
それってどのくらいまで続いてどのくらいで止まって…?そうですね。
そこが一番ネック。
どの辺で諦めろって…。
もう諦めようっていうか。
僕も諦めずに頑張っていますけれども。
小さい時のあの学び方というか早さっていうか悔しくなりますよね。
大人になるほどスパインの活発な動きが止まり新しい回路が作られなくなる。
しかしそれは…それを明らかにしたのがアメリカハーバード大学のヘンシュ博士。
博士が言語の学習に興味を持ったきっかけは自らの生い立ちでした。
日本人の母とドイツ人の父と2歳3か月の時にアメリカに来まして母とは日本語父親とはドイツ語外では英語という形です。
このかわいい男の子が40年前のヘンシュ博士です。
3か国語を苦もなく話すヘンシュ少年は友人を見てある事に気付きました。
なぜ成長すると外国語を簡単に学べなくなるのか。
大人になったヘンシュ博士はその謎を解く研究を始めました。
当時考えられていたのは幼い時にはスパインの動きを活発にする物質が出ているのではないかという仮説でした。
しかしヘンシュ博士たちは逆の可能性に目をつけました。
大人のマウスを使ってスパインの動きを止める物質がないか探したのです。
見つかったのは2010年。
脳の中で作られる物質Lynx1でした。
このLynx1実はある動物が作り出す物質とそっくりです。
それは毒蛇の作る猛毒です。
青く示したのがLynx1。
スパインの先端に働いて動きを止めてしまいます。
以後新しい回路を作る事はできません。
ではなぜ蛇の毒のような物質まで使ってスパインの活動を無理やり止めるのか。
それこそ神経細胞の奥深い戦略なのです。
博士たちはマウスに遺伝子操作を行って毒物質Lynx1が作れないようにしました。
ずっとスパインが動き続けるようにしたのです。
すると…マウスの様子に異常が見られました。
脳を調べてみると黒い斑点がいっぱい見つかりました。
神経細胞が大量に死んだ跡です。
通常のマウスと比べると差は一目瞭然。
成長していく過程で神経細胞たちはあえてスパインの動きを次々に止めていきます。
真っ先に活発な動きを止めてしまうのは青で示された視覚など感覚をつかさどる部分です。
その後は運動や言語に関する部分。
更に判断をつかさどる部分などより高度な働きへと広がります。
10代のうちにほとんどが止まってしまうのです。
あの〜結局頭もそうですし体もそうですけれども願いとしてはいつまでも若くいたい。
子どもの時と同じように活動的にいたい。
でも細胞はやっぱりどんどん老化はしていきます。
…にもかかわらず若い時と同じようにエネルギーを使おうとするといろんなとこで破綻してくる。
脳もまさにそういう事なのかなと。
でも人っていうのは老いてもどんどん上達もしたいし進化もしていきたいって思うんでしょうけれども細胞としては細胞の…。
諦めろみたいな。
細胞が言ってくれる訳です。
命令する。
結構冷たいやつですね。
細胞冷たいな。
細胞としては細胞の悟りの境地までも持っていると。
細胞の方が細胞の持ち主である僕たちより悟ってるのは間違いないと思います。
もうやめろとか。
細胞は次の世代が出来るまで親というか生命が維持できていたらそれで仕事終了なんでそこから先は全然生きてもらわなくても細胞は困らない。
もうバトンはタッチしたと。
人間の場合だったら20歳30歳という生殖年齢までは一生懸命やるけれども頑張るけれどもそのあとは自然に老いていく。
それは諦めるべき事なんですかね?何だか3人とも暗くなってしまいましたね。
(2人)ハハハハ…。
でも皆さん諦めるのはまだ早いです。
スパインが動きを止めてしまっても細胞は次の一手を用意していました。
その次なる手とは何か。
訪ねたのはアメリカ・ロサンゼルス。
放課後の学校に集まった子どもたち。
これはハーモニー・プロジェクトといって貧しい家庭の子どもたちに楽器を貸して弾き方を教える活動です。
費用は全て無料。
参加している子どもたちは10歳前後です。
この年齢になると聴覚に関してのスパインの活発な動きは終わりを迎えつつあります。
しかし楽器を学ぶ事は意外な効果を生むといいます。
(バイオリンの音)実はこのプロジェクト全米で大きな注目を集めています。
それは参加者たちの学業成績が著しく向上しているからです。
子どもたちが住んでいるのはロサンゼルスでも最も犯罪率の高い地域。
参加者の中にはホームレスを経験したり麻薬中毒患者の両親と暮らしている子どももいます。
成長してから楽器を学ぶと新しい回路が次々と作られる代わりにどんな変化が生まれるのか。
その変化を捉えたのはDTIと呼ばれる最新鋭の画像技術でした。
2年間楽器を習った10歳の子どもの脳。
緑色のアーチが鮮やかに浮かび上がっています。
長くつながった神経細胞です。
楽器を習う前との違いは一目瞭然。
変化していたのは神経細胞一本一本の太さでした。
この太さの変化こそスパインが動きを止めたあとの学ぶ力を支えています。
神経細胞を太くしたのは一体何か?フィールズ博士は神経細胞を太くしたものの正体を30年間研究し続けてきました。
決め手となったのは特殊な方法で撮影された画像だったといいます。
共焦点顕微鏡という装置が捉えた神経細胞。
矢印の箇所だけが太くなっています。
この部分調べてみると脂肪が厚くついていました。
別の細胞とはこれ。
オリゴデンドロサイトと呼ばれる神経細胞とは違う脳にいる細胞です。
オリゴデンドロサイトが実際に神経細胞を太くしている様子です。
左右に伸びた神経細胞の上を移動しては脂肪で出来た腕を巻きつけていますミエリン化といいます。
これが神経細胞の働きを大きく変えます。
脂肪が巻きつくと電気信号はその部分をジャンプします。
ちょうど飛び石の上をジャンプして川を渡るようなものです。
その方が川に浮かべた橋の上を渡るよりもずっと速く渡れます。
ミエリン化は情報伝達の高速化なのです。
私たちが複雑な事をする時脳のさまざまな箇所を同時に使います。
例えばバイオリンを弾く時も耳で音を聞き分け…。
位置を目で確認しながら…指を動かします。
こうした離れ離れの場所にある神経細胞が調和して働くためには信号を素早くやり取りする事が大切です。
その素早いやり取りを可能にするのがつながった神経細胞を太くするミエリン化なのです。
DTIが捉えた太いアーチは聴覚と運動を担う場所をつなぐルートでした。
新たな回路を作る事が難しくなったあと細胞たちが編み出した戦略それがミエリン化です。
オリゴデンドロサイトはよく使われる回路を選んでは太くしていきます。
あなたが繰り返し努力した事に細胞たちはミエリン化によって応えているのです。
一面ミエリン化した神経細胞。
これが時を超えてあなたの学ぶ力を支え続けようとする細胞たちの姿なのです。
なるほどね。
今のビデオにあったとおり私たちの年齢になってしまうと脳の中で新しい回路新しく手を結ぶという事はなかなか起こりにくいと思うんですが手を結んでいた結び付きを強くすると。
スキップするワープするっていう事になりますとスピードがどんどん高速化していく訳ですものね。
それがだんだん発達していく。
手を結ぶだけではないほかのやり方でも細胞同士はまたどんどん結束を固めていくみたいな事ですね。
よく脳は未知数だとかまだ分からない事がいっぱいあるっていう話を聞くけどそれは逆にいい事と思った方がいいって事ですね。
チャンスもいっぱいですね。
まだまだ可能性があると…。
細胞というのは経験を刻むんです。
「刻む」?年を取ってもですね努力してるんです。
これは無駄ではないと。
頭の中には年を取ってからもちゃんとそれを受け止めるメカニズムがどうやらあるみたいだという事が分かっています。
その回路を補強するような働きがまだまだ僕たちおじさんにもあるみたいですから…。
ひと言で言うと細胞は裏切らない。
年を取っても裏切らない。
だから努力は報われる。
そう思って頑張りたいと思います。
そうですね。
さてMCです。
「皆さんに朗報が。
何かに熱中したり夢中になったりすればたとえ老いても脳神経細胞のスパインの活性化が再び起こりうる事が最近の研究で分かりつつあるそうです」。
はあ〜ありがたい話ですね。
熱中しましょう熱中しましょう。
まあだから諦めるなという事。
これ「細胞君」って呼びたくなっちゃいません?今日ずっとこの番組を見させて頂くと…。
何か人のような気がして…。
個人個人のような…。
連係したりですねそれで一つの体を作る。
社会が出来る。
それが何か命につながっていくっていう。
ちょっと愛着出てきましたね。
生まれましたね。
どんな経験も無駄にはならない。
新しい事に挑み練習を積む。
あなたから細胞に働きかければ細胞たちはその努力を受け止め応えてくれる。
それがまさにあなたを支える細胞の力なのです。
2014/04/03(木) 01:05〜01:55
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル 人体 ミクロの大冒険1▽運命を超える!細胞のスーパーパワー[字][再]
第1回は胎内から思春期まで、成長に対応する細胞のダイナミズムを紹介。主に脳における臨界期の仕組みを探り、私たちの個性を築いていく知られざる細胞の力を読み解く。
詳細情報
番組内容
私たちの成長を支えているのは、細胞がつくり出す柔軟性だ。遺伝子は受精の瞬間に決まってしまうため、細胞が周りの環境を察しながら、働かせる遺伝子を選択して変化し、私たちが生き延びるための力を強化しているのだ。胎内で体質が決まるのも、遺伝子ではなく、細胞の選択による部分が大きい。なかでも、成長のカギを握っているのは神経細胞だ。シリーズ第1回は、胎内から思春期まで、成長に対応する細胞のダイナミズムを紹介。
出演者
【出演】ノーベル生理学・医学賞受賞、京都大学教授…山中伸弥,野田秀樹,葉加瀬太郎
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 報道特番
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