ハートネットTV シリーズ 子どもクライシス 第2回「失われゆく“居場所”」 2014.04.02

私たちの社会を未来へとつなぐ子ども。
一人一人が無限の可能性を秘めた社会の希望です。
しかし今…困難を前に中には自分が生まれてきた事を責めたり将来の希望を失う子どもたちも少なくありません。
大阪市で50年にわたり子どもたちの成長を見守ってきた…問題を抱えた子どもたちの駆け込み寺となってきたこの施設が今危機に直面しています。
運営を支えてきた大阪市が巨額の財政赤字を理由に補助金の大幅カットに踏み切ったのです。
突然の決定は子どもたちに大きな衝撃を与えました。
子どもたちの居場所はどうなるのか。
変わりゆく制度に翻弄される日々を見つめました。
「シリーズ子どもクライシス」。
今日は制度が変わる事で自分たちの居場所を失う危機に立たされた子どもたちについて見ていきます。
取材したのは大阪市です。
市では平成元年から四半世紀にわたって子どもたちの放課後の居場所作りとして子どもの家事業を行ってきました。
大阪市内26か所で運営されてきましたが今年の春廃止される事になりました。
子どもたちはどうなるのか。
揺れる現場に密着しました。
大阪市西成区にある子どもの家山王こどもセンターです。
(3人)12345678910。
7億…。
午後3時学校が終わった子どもたちがやって来ました。
…56789億万。
お帰り!ただいま。
お帰り!ただいま。
子どもたちにとってセンターはもう一つの家です。
小学生から高校生まで好きな時にやって来て思い思いの時間を過ごします。
この地域で暮らす子どもたちどんな子どもでも分け隔てはありません。
(一同)いただきます。
利用料はおやつなどの実費以外は無料。
大阪市の補助金によって運営費の大半を賄っています。
イエ〜イ!では決めて下さい。
その日何をするのか決めるのは子どもたち自身です。
けいどろ。
みんなで話し合う事を大切にしています。
この日は座布団を使った陣取りゲーム。
年が離れた子どもたちがみんな一緒になって遊びます。
中学3年のれおんくんです。
小学1年のセナちゃんを追い詰めました。
板の間に足が着いたら負けです。
足くっつけ!コアラになれ!コアラになれ!コアラコアラコアラ!コアラコアラ!コアラになれ!うわ〜!
(笑い声)センターには家庭や学校に居場所が見つけられない子どもたちもいます。
れおんくんもその一人です。
学校になじめず半年前から不登校になり今は一日の大半をセンターで過ごしています。
れおんくんは小さい時に両親と離れおばあさんに育てられました。
大勢の人たちの中でどう振る舞っていいのか悩んできたれおんくん。
センターで多くの子どもと触れ合う事で人とのつきあい方を学んでいったと言います。
れおんくんは今苦手だった学校と向き合おうとしています。
週1回ボランティアの講師が勉強を教えてくれるプログラム。
毎回出席してこの春地元の工業高校への進学を目指しています。
こどもセンターがある…高速道路やビルに囲まれた一角に昔ながらの町並みが広がっています。
西成区は生活保護の受給率が日本一。
子どもたちのすぐそばに厳しい現実があります。
センターの施設長を務める前島麻美さんです。
子どもたちからはマミさんと呼ばれ親しまれています。
絶対無理!絶対無理…!イエ〜イ!アハハ…!ほらな?言うたやん。
ごめ〜ん!おっくんごめん!アメリカで福祉を学んだマミさんが施設長になったのは30年前の事です。
子どもたちが経済的な困難に直面したり学校に適応できなかった時もセンターに受け入れ成長を支えてきました。
マミさんは子どもたちの成長のために独自のカリキュラムを工夫してきました。
町内で野宿している人たちに声をかけて回るこども夜回り。
子どもたちが自ら握った出来たてのお握りを渡します。
今握ってきたし。
困難に直面している人がいたら優しい心で接してほしい。
そうした願いが込められています。
この活動に10年前から参加している…生まれつき手足に障害があります。
体調はどうか困っている事はないかかれんさんは必ずひと言声をかけます。
おっちゃんこれ靴下。
寒さが厳しかったこの日かれんさんは靴下を渡しました。
こどもセンターで開かれるもう一つのカリキュラムが週に1度の料理クラブです。
きっかけは一人で晩ごはんを食べる子どもが増えた事でした。
ここではふだん偏りがちな栄養をしっかりとる事ができます。
同時に料理の基本を一から学び生活を営む力も身につける事ができます。
おっ慣れてきた。
いつからそんな慣れた?見よ!料理の最中みんなの輪から離れて一人泣いている子どもがいました。
去年の春からセンターに通うようになった小学1年生の…涙の訳はボールの後片づけがきちんとできなかった事を注意された事でした。
帰りたい。
もう早く…。
(泣き声)時々起こる子どもたちのトラブル。
そんな時スタッフはそっとそばに寄り添います。
みんなの輪に戻るきっかけをくれたのはのんちゃんを心配する仲間たちの声でした。
どんな事があっても安心して過ごせる居場所。
一人一人の個性を認め合いながら子どもたちは成長しています。
30年にわたって施設長を務めてきたマミさん。
子どもたちの悩みにいつも正面から向き合ってきました。
この日訪ねてきたのは…高校進学をお父さんに反対されたと言います。
お父さんもともと行く事は反対やで。
高校は…。
何で?何もできひんから。
それはあんたが何もせえへんからやろ?見返してやりいや。
「見返したいから」って言ってんねん。
私は…。
「これでどっちか分かって」と言ったら「どうせお前は絶対そう言っても絶対に今までもこれからも何も絶対できひん子やからやろうとすんな」って言われて…。
何でやねん!できるってあんたは!できる子や!もう!久しぶりにもう「ワ〜!」泣いて。
できる子やって!ふうかさんは18歳。
一度高校に入学したものの勉強に身が入らず1年半で中退しました。
将来を見いだせず悩むふうかさんにマミさんは高校への再入学を勧めました。
1年半で途中でけつわってもうた訳や。
うん。
それをやっぱり最後まで貫徹させてほしいっていう思いはある。
何か1つクリアーしたら次のステップ行きやすいやん。
ただ高校っていうのはもちろん勉強も大切やけれどもあんたがホントの大人になるまでの次のステップやん。
そこでどんだけ肥やし自分の中に…それこそ栄養も教養も身につけれるかやん。
マミさんはふうかさんに改めて自分の考えを伝えました。
内に秘めたやる気を引き出せば子どもたちは自ら壁を乗り越えていけるとマミさんは信じています。
ふうかさんはお父さんの説得を心に決めて帰っていきました。
そうやって彼ら彼女たちが…家や学校に居場所が見つけられない時子どもたちの支えとなるのはセンターの仲間です。
車椅子で生活している…姿を見かけるとほかの子はさりげなく手を貸します。
現在18歳のかれんさんは小学校時代過酷ないじめを受けていました。
仲間たちがいる事で何度も救われたと言います。
苦しい時つらい時子どもたちのよりどころとなってきたセンター。
開設から50年を迎えた今年重大な岐路に直面しています。
運営を支えてきた大阪市の子どもの家事業がこの春廃止となったのです。
代わりに市が求めてきたのは留守家庭対策事業に移行し学童保育所として再出発を図る事でした。
しかし原則無料の子どもの家に比べて学童保育では月額平均で1万6,000円の自己負担が必要です。
更に対象も小学生のみに限られ中高生は利用できません。
なぜ大阪市は事業廃止に踏み切ったのか。
年間500億円の赤字を見込んだ事が背景にありました。
赤字削減のため無料の子どもの家事業が見直しの対象に挙げられたのです。
市が示したのはサービスを受ける者が費用を負担する受益者負担の原則でした。
有料の留守家庭事業利用者との間に不公平があるというのです。
市の決定はセンターを掛けがえのない居場所としている子どもたちに大きな衝撃を与えました。
子どもの家事業が廃止されるともともと余裕がなかったセンターの財政は危機に陥ります。
学童保育になると補助金は330万円減額されます。
月謝を取らなければ運営は困難です。
しかしマミさんはあくまでも無料にこだわりたいと考えていました。
どうすれば子どもたちの居場所を守る事ができるのか。
手真っ黒けっけやろ。
センターでは自分たちでできるギリギリの努力を積み重ねていく事にしました。
もともと古い民家だった建物は老朽化が進んでいます。
設備が故障した時は自力で直して修理代を節約しています。
あっ!ついた〜!消して。
はいもう一回…。
子どもを預ける保護者たちもできる事に取り組んでいます。
古新聞を持って訪ねてきたのは孫が通っている…
(前島)すんません。
いつもありがとうございます。
この新聞や段ボールの山は中田さんたち保護者や地域の人がこつこつと集めてきたものです。
市の決定が伝えられて以降センターをなんとか存続してほしいという声が連日届けられました。
そうした声を裏切ってはいけないとマミさんは言います。
よっしゃ〜!ありがとうございます。
到着したのは大阪市内の廃品回収業者。
新聞や段ボールを売る事で得た現金はセンターの貴重な運営費になります。
はいありがとう。
ありがとう。
2,310円…でした。
(取材者)よかったですね。
ありがとうございます。
自分たちの居場所を守るために。
子どもたちも立ち上がりました。
地元の商店街で開くバザ−。
一人でも多くの人に買ってもらう事で運営費に充てようとしています。
ちょうどね。
ちょうど。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
1万3,800円でした。
今日の売り上げ。
(取材者)どうですか?まあまあです。
1万円を超えるとまあまあかなとは思います。
おかげさまでありがとうございます。
フフ…。
さまざまな困難を抱える子どもたちを受け入れてきた山王こどもセンター。
制度が変わっても今までどおり全ての子どもたちの家であり続けたいとマミさんは考えています。
ゲストは子どもの問題に詳しい中央大学教授の宮本太郎さんです。
政府の社会保障審議会のメンバーでもいらっしゃいます。
(2人)よろしくお願いします。
施設長の前島さんの存在も非常に大きいと思うんですが子どもたちの姿どうご覧になりました?こういう場所を無くしちゃいけないんじゃないかなという気がしますね。
…と言いますのも今放課後格差という言葉があるんですよ。
放課後格差?学校までは一緒なんですね。
でもそのあとの放課後をどう過ごせるか。
これは地域の状況だとか家計の状況によって大きく異なってきてそれが子どもたちの将来を決める。
これ遊んでるように見えますけれどもこれは次世代を育てる苗床みたいなもんでここでいろんな養分を吸収して育っていくならば地域も活力づくんですね。
ところがこういう条件がないと子どもたちが経済的な困難に負けてやがていろんな生活保護等の扶助を受給して支えられる側に回ってしまうのかもしれない。
しかしこういう苗床がきちっと機能していると子どもたちが養分を吸収して将来働いて税金や社会保険料を納めて支える側に回っていく事ができる。
これは大きな違いですよね。
市長さん「有料のサービスもあってこういう無料のサービスもある。
不公平じゃないか」という言い方してました。
そうでしたね。
でも子どもたちの立場からすると生まれ育った地域あるいは障害があって生まれてきたそれでスタートラインがこんなに違っていると…。
これこそ不公平じゃないかというふうに彼女彼ら思うと思うんですね。
ここでスタートラインを少しでもそろえてあげる。
これこそが公平なんじゃないかなという気もしますね。
そう考えますと今回大阪市の場合は子どもの家事業が廃止になって学童保育に転換したと。
…で中高生が利用対象から外れたと。
これについてはどういうふうに考えたらいいでしょう?放課後に対応する政策これは文科省の事業厚労省の事業あるいは自治体の独自事業いろいろある事はあるんで重複してるんじゃないかという事で整理して今回のような事にもなるんですがしかし放課後格差の実態にホントに対応している事業って少ないんですね。
なぜならば学童保育にしてしまう事で中高生と小学生が切り離されてしまう。
これではホントの苗床にならない訳ですね。
それを考えていくとこどもセンターの方がホントに最先端の放課後格差対策…先駆的な形じゃなかったのか。
自治体はもっと自信を持ってこうしたものを守り育ててほしいなと思いますね。
施設長の前島さんの「こういう事子どもには関係ないもん」という言葉すごい響いたんですよね。
子どもたちが公正に扱われたという感覚を持つ事が次世代の市民を育てるし地域を活力づける。
そういうふうに思いますね。
「子どもクライシス」明日もお伝えします。
番組のホームページに皆さんからご意見ご感想をお寄せ下さい。
お待ちしています。
今日はどうもありがとうございました。
2014/04/02(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ 子どもクライシス 第2回「失われゆく“居場所”」[字]

大阪市西成区の「山王こどもセンター」。30年間、不登校児や障害児を支援してきた。しかし活動資金である市の補助金は、大幅減が決定。子どもたちの居場所は守れるのか…

詳細情報
番組内容
大阪市西成区の「山王こどもセンター」は、30年前、アメリカで社会福祉を学んだ前島麻美さんたちによって立ち上げられた。不登校の生徒や障害児を無料で預かり、ご飯を食べさせ、宿題を見てやり、時には本気で叱り飛ばす。その先進的な取り組みに着目した大阪市は、補助金を出して支援し続けてきた。ところが、財政難に苦しむ同市の行政改革で、補助金の大幅減が決定。動揺が広がる中、子どもたちの居場所は守れるのか…。
出演者
【出演】中央大学法学部教授…宮本太郎,【司会】山田賢治

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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