本院について

精神科神経科

科の責任者と概要

診療責任者 森 則夫 教授

診療責任者 森 則夫 教授

 こころを患う人の割合は非常に高く、10人に7人はその生涯で何らかの精神科疾患に罹患します。例えば、統合失調症は 100人にひとりの割合で発症しますし、現代社会では、20人にひとりがうつ病に罹患していると考えられています。若い女性の100人にひとりが摂食障害と言われ、200人の子どものうち、少なくともひとりが自閉症という障害をもっていると推測されています。
 厚生労働省の統計によれば、精神科の患者数は、毎年、約5%の割合で増え続けています。精神科以外の患者数が減少傾向にあるのと対照的です。かつて、精神科には大きな偏見がありましたが、今では、それも和らいできたと思います。精神科を訪れる方の増加がそれを物語っています。精神科はこころの病を治療する診療科です。現代人にとって精神科は大変身近な診療科になったと言ってよいと思います。

診断・検査・治療について

 精神科疾患は現在の症状と、これまでの経過によって診断します。精神科疾患に特有の検査はありません。つまり、統合失調症やうつ病が分かる検査というものはありません。しかし、心理検査や脳画像検査(MRIやCTなど)を診断や治療効果の参考にすることはよくあります。
 治療は、一般には、治療薬の効果をみることから始めます。治療薬には、統合失調症の治療薬、うつ病の治療薬、神経症の治療薬など、多様なものがあります。こういった治療薬は1950年代に発見されました。その後、副作用が少なく、治療効果の高い薬の開発が進められ、現在に至っています。心理療法 (精神療法) にも多様なものがあります。浜松医大精神神経科では森田療法を心理療法の基本においています。

初めて受診される方は次の点にご留意ください。

  1. 受付は午前11時迄です。
  2. 他の医療機関で治療を受けている方は、必ず紹介状をお持ちになってください。紹介状がない場合には、診察をお受けできないことがあります。これまでの治療経過が分からないと、効果のない治療を繰り返しかねないからです。
  3. 最初から専門外来を受診することはできません。まず、初診医の診察を受けてください。その上で、ご相談ください。
  4. 当科では森田療法を行っています。森田療法を、薬を使わないで治す治療法と勘違いしている方がいらっしゃいます。そうではありません。パニック障害や社会恐怖(社会不安障害)に対する心理療法のひとつです。詳しくは外来診察時におたずねください。
  5. 電話やメールでの診察は行っておりません。当科にかかっていない方については、病状や治療内容の問い合わせには応じられません。受診の上、ご相談ください。

主な対象疾患

主な対象疾患と事例

  1. 統合失調症
     30歳代の前半の男性例です。高校のころ統合失調症に罹りました。ご両親の話だと、最初は眠れなくなって、表情が険しくなってきたそうです。やがて、態度に落ち着きがなくなり、怒りっぽくなってきました。学校には行かず、自分の部屋で音楽を大きくかけて聴き、注意すると怒り出しました。不意に庭に出て、大きな声で (実際にはいない) 誰かを怒鳴ったかと思うと、すぐに家に入るなどの奇妙な態度や行動がみられました。また、食事を家族と摂らなくなり、コンビニエンス・ストアで買ってきたものを自室で摂るようになりました。家族に一緒の食事をすすめられると、「毒を入れられているのがなぜ分からない!」、ということがありました。廊下を行ったり来たりすることもありました。その後、精神科の治療を受けてよくなりました。良くなってから、なぜ廊下を行ったり来たりしたのかを尋ねてみました。「歩け」と命令する声が聞こえてきたのでそれに従ったと言うことでした。また、なぜ急に外に出たりしたのかを尋ねたところ、「外で人の話し声がしたので行ってみた」ということでした。これらを幻聴といいます。また、なぜわざわざコンビニエンス・ストアから買って食べていたのかを尋ねると、「今思うとばかげたことだと思うが、家のものには毒が入っているような気がした」ということでした。これを被害妄想といいます。
  2. うつ病
     40歳代の女性。最近、疲れやすく、よく眠れません。寝つきが悪く、よく夢をみます(追いかけられるなどの、嫌な内容の夢)。食欲もありません。食べてもおいしくなく、時間がきたから食べると言う感じです。元気のない様子からうつ病ではないか、と思ったご主人の勧めで精神科を受診しました。お話をうかがうと、気が滅入って、気分がさっぱりしない、とのことでした。その他に、集中力がない、楽しくない、落ち着かないなどの症状もありました。うつ病の治療薬でよくなりました。
     うつ病になると、気持がすっきりしない(抑うつ気分)、楽しくない、などの精神症状の他に、疲労感、食欲低下、不眠などの身体症状がでます。身体症状の方が辛いので、精神症状を訴えないことがよくあります。しかし、以前と違って、元気のない様子に周囲の人は気づきます。その時は、かかりつけの先生に相談し、必要に応じて、精神科の先生を紹介してもらうことが大事です。
  3. パニック障害
     30歳代の男性。最近、職場が変わり、慣れない仕事と対人関係で疲労と緊張が続いていました。そんなある日、仕事中に突然動悸がして息がつけない状態になりました。胸が苦しく、全身の力が抜け、四肢にしびれを感じ、その場に倒れ、このまま死んでしまうのではないかという恐怖感に襲われました(パニック発作)。同僚が呼んだ救急車で病院に向かいましたが、病院についた時には症状は大分落ち着いていました。そのまま内科に入院し、心電図などの検査を受けましたが異常はありません。約3週間の入院期間中に軽い動悸、窒息感を数回経験しました。そうしているうちに、また発作が起こるのではないかと考えるようになり、気持ちが落ち着かなくなってきました(予期不安)。何とか気持ちを落ち着けようとすればするほど気持ちが落ち着かなくなります。また、発作が起きたら困るな、と思っていると発作が起きてしまいます。そこで、一通りの内科の検査を終えたところで精神科に紹介されました。精神科ではくすりをだして森田療法に基づいた指導を行いました。
  4. 強迫性障害
     男子高校生。元々きれい好きで、几帳面でしたが、普段の生活には何らの問題もなく過ごしていました。ところが、中学3生になった頃から、皿に盛られたピーナツやさくらんぼを箸でつまんで食べるようになりました。潔癖症は次第に激しさを増し、外出から戻ると、上半身裸になり、水道の水を激しく出しながら、まず右腕の肘から指先にかけてゆっくりと洗っていき、次に左腕でも同じようにするという行為を交互にそれぞれ20回ずつ繰り返すようになりました。この時に家族が声を掛けたり、あるいは、手順がいつもと違ったりすると最初からやり直しました。トイレに行った後もこの行為をするので、洗面台の周りはいつも水浸しでした。やがて、彼はトイレそのものを汚く思うようになり、精神科に入院して治療を受けました。
  5. 社会恐怖
     社会恐怖は対人恐怖とほぼ同じです。対人恐怖とは、「人を恐れる」ことではありません。「自分が周りの人から変に思われはしないか、と恐れる」ことを言います。
    20歳代の男性。会社の会議で報告している時、緊張して声が震えました。それを上司に指摘されました、とても恥ずかしいと思いました。以来、会議があるたびに、また声が震えるのではないか、と緊張するようになりました。お腹が痛くなったり、動悸がしたり、紅潮したり、手に汗をかくこともあります。会議のある日は、朝から気持ちが落ち着きません。やがて、会議のある日は、体調が悪いから、と休むことも多くなりました。次第に、会社で同僚と普通に話している時にも声の震えを気にするようになりました。顔もこわばるようになりました。それをみて皆が変に思っているに違いない、と気になりました。すると、ますます緊張してきます。このことが辛くて会社に行けなくなりました。  社会恐怖は、ごく親しい人と知らない人の中間に位置する人、つまり、ほどほどに知っている人の前で起きます。言い換えると、自分が参加している社会の構成員の前で起きます。
  6. 摂食障害
     神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)があります。  女子高生。拒食症の例。彼女は決して太っている訳ではありませんでした。しかし、もっとスリムになりたいと、ダイエットを始めました。ダイエット関係の本や栄養学関係の本を何冊も買い求め、そこで得た知識をお母さんに話し、お母さんにもダイエットの協力を求めました。ダイエットにより体重が減り始めると非常に嬉しくなり、ますますダイエットに励むようになりました。彼女のダイエットの方法は極端になり、朝は野菜ジュースのみ、昼は野菜サラダ、夕食はほんの少々を摂るだけといった具合になってきました。最初は協力的だったお母さんもさすがに気になりだし、もっと食べるようにと勧めますが、聞き入れません。体重は平均体重を下回り、顔も腕も脚も細くなり、みるからに不健康そうな体型になってきました。生理は止まり、肌がかさかさしてきました。それでも、彼女はさらに痩せたいと考えていました。そして、体力がないのは明らかなのに、体育の授業にも出るし、帰宅後はこれまで以上に勉強に励みました。しかし、よく家族に当たるようになり、夜は眠りが浅く途中で目が覚めるようになってきました。家族は精神科の受診をすすめますが、本人はどこも悪くないから、と診察を拒否します。そこで、家族は担任の先生に相談したところ、かねてよりその異様な痩せかたを心配していた先生の説得もあって、ようやく精神科を受診し、入院治療を受けることになりました。
  7. 適応障害
     50歳代の主婦です。大腸癌の手術を受けましたが、肝臓にも転移していて、あと5年の命と言われました。彼女は、がんの宣告を受けてからも気丈にしていました。しかし、手術の後から、とてもいらいらして怒りっぽくなりました。本来はおっとりした性格なのに、見舞いに来たご主人の些細な言葉尻をとらえて怒り出すことがあります。家族のみならず、看護師も腫れ物に触るようにして接するようになりました。夜も十分には眠れません。主治医の紹介で精神科を受診しました。彼女は、「いらいらしているのは自分でも分かるし、主人や家族にも病院の皆さんにも申し訳ないと思っている。」とのことでした。色々とお話した後、抗不安薬と睡眠導入剤を服用して様子をみることにしました。1週間後、十分とは言えないまでも睡眠がとれるようになり、精神的な落ち着きも取り戻しました。
  8. 外傷後ストレス障害(PTSD)
     命にかかわる危険な体験をした後で、目が冴えて眠れない、その場面が目に浮かぶ、その体験を思い起こさせる場所や話題を避ける、情緒不安定で、周囲の人とうまく付き合えない、などの症状がでてくる時、それをPTSDと言います。
     60歳代の女性。ある日の未明、「ゴー」という激しい、不気味な地鳴りで目が覚めました。何が起こったのか分からずにいると、突如、「ドーン」という音と共に家中の家具や机が上下に飛び跳ね、続いて、家全体が前後左右に激しく揺れ始めました。阪神淡路大震災です。彼女は驚きと恐怖で腰が抜け、這うことさえままなりませんでした。恐怖のあまり、声も出ませんでした。同居していた長男に背負われて外に出ると、周囲は真っ赤に燃え、頭には色んなものが降ってきます。目の前の自宅は幾度も軋みながら崩れていきました。
     彼女は避難所に逃れ、その翌日、被害を免れた次男宅に移りました。彼女は地震のニュースをみることができませんでした。家族が地震の話題を持ち出すだけで体が震えました。夜は眠れず、寝てもすぐに目が覚めてしまいます。地震の恐ろしい体験が自然に蘇ってきます。夢にも現れます。親戚の人がお見舞いに来ても、挨拶するのがやっとです。起きていることができず、終日横になっているのですが、いつも怯えているようにみえます。恐ろしさの余り、家族にすがりつくこともあります。やがて落ち着くだろうと家族は思っていましたが、数か月たってもよくなりません。そこで、精神科の治療を受けることにしました。
  9. アルツハイマー型認知症
     70歳代の女性。半年ほど前から財布を置き忘れたり、電話の相手の名前を忘れたりするようになりました。ガスの消し忘れもあったので、ガスを使わないように家族が注意していました。最近、近所の人に「うちの嫁はお金を盗むので困る」ということをいいふらすようになりました。これを物盗られ妄想といいます。家族は困ったと思いながらもそのままにしていました。しかし、さらに、「箪笥の着物がなくなった、嫁が盗ってどこかに売っている」と言い出し、毎日一回は嫁を怒鳴りつけるようになりました。困った家族が精神科に相談にみえました。お嫁さんは、認知症だということは十分承知しているのですが、それでも毎日追いかけ回されて、着物を盗んだと言われるのは、さすがに辛いことでした。認知症の記憶障害を治す方法はありません。しかし、物盗られ妄想の改善は可能です。この方も、軽いくすりで様子をみたところ、「盗まれた」という回数は減りました。
  10. 自閉症
     その男児は正常分娩で生まれ、運動機能の発達には問題はありませんでした。しかし、言葉の発達に遅れがあり、パパとかママなどの他には余り単語数が増えませんでした(言語発達の障害)。一歳半を過ぎた頃から落ち着かず、目を離すことができませんでした。母親が呼んでも振り向かないし、視線を合わせませんでした。抱っこしても人形を抱いているようだったそうです(相互反応の障害)。3歳頃から言葉が増えてきましたが、母親が「それとって」と言うと、「それとって」とおうむ返しに言います。また、同じことを何度も聞き返しました。気に入ったおもちゃでしか遊ばなかったし、同じ絵本を何度も読むようにせがみました(限定された興味や行動の繰り返し)。自閉症児にはてんかん発作が出現することがあります。

施設認定

  • 日本精神神経学会精神科専門医研修施設