『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』など――今週のシノドスエディターズチョイス

『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』(文芸春秋)/春日太一

 

これは、昔々、「熱い」時代の物語である――『赤穂浪士』『仁義なき戦い』『柳生一族の陰謀』など、数々の名作映画を生み出した東映京都撮影所。本書は、そんな「東映京都」60年を裏方として支えた男たちの群像劇だ。

 

「『疲れた人!』その掛け声を合図に看護師の前に一列に並ぶと、看護師は次々とヒロポンを打っていく。これで頭をスッキリさせ、朝までの仕事をやり遂げるのだった。」

 

「火の中の立ち回りでは、防護服も着ていない役者の体に灯油をかけて燃やして、大ヤケドを負わすこともあった。」(本文より)

 

エピソードの一つ一つが熱くてめちゃくちゃだ。時代劇・ヤクザ映画・ポルノ……大衆とともにあった「東映京都」に迫った一作。

 

 

あかんやつら 東映京都撮影所血風録

著者/訳者:春日 太一

出版社:文藝春秋( 2013-11-14 )

定価:¥ 1,998

Amazon価格:¥ 1,998

単行本 ( 432 ページ )

ISBN-10 : 4163768106

ISBN-13 : 9784163768106


 

 

『てっちゃん ハンセン病に感謝した詩人』(彩流社)/権徹

 

「てっちゃん」の愛称で親しまれた詩人で、ハンセン病患者の桜井哲夫さんの姿を写真に収め、綴ったフォト・ドキュメント。

 

「オレはね、自分の顔に誇りをもっているの。この顔には、苦しみや悲しみがいっぱい刻まれているのね。それを乗り越えてきた自信も。だからね、崩れちゃってはいるけど、いい顔なんじゃないかな。だってこの味わいは、オレじゃないと出せないでしょ」

 

本書にはてっちゃんだけでなく、ハンセン病患者への偏見、隔離されてきた療養所の様子もおさめられている。だが注目して欲しいのは、てっちゃんの豊かな表情だ。一瞬、目を背けたくなる。あるいは目を背けてしまう。しかし一歩踏みとどまり、改めててっちゃんの表情を眺めてみよう。そこにたくさんの感情が混合し、生き生きとした姿が浮かび上がってこよう。

 

あまりにも重厚なテーマだ。それにも関わらず、てっちゃんの姿と言葉の爽やかさが、ゆっくりでも確かに、ページをめくらせる。誰もに、一度は手に取って欲しいフォトブックだ。

 

 

てっちゃん: ハンセン病に感謝した詩人

著者/訳者:権 徹

出版社:彩流社( 2013-11-20 )

定価:¥ 2,160

Amazon価格:¥ 2,160

単行本 ( 142 ページ )

ISBN-10 : 4779119545

ISBN-13 : 9784779119545


 

 

『生殖医療はヒトを幸せにするのか 生命倫理から考える』(光文社新書)/小林亜津子

 

iPS細胞研究の功績を認められてノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏への注目にせよ、あるいはSTAP細胞騒動への反応にせよ、われわれは、ほんの十数年前はSFの世界の空想の技術の実現に驚き、戸惑いながらも、そうした技術を受け入れつつあるように思う。だが社会は、急速に発展する技術に追いつくことができず、多様なニーズへの「温度差」を生んでいる。

 

「子どもが欲しい」と希望するひとが、生殖技術を利用して、子どもを持つことは「自然」なのか。はたして、それは許されることなのだろうか。着床前診断によって命の選別を行ってもよいものなのか。そうした問いを、われわれはなぜ立てるのか。その根底には、どんな価値観が潜んでいるのか。

 

日々目覚ましい進歩を遂げる医学は、わたしたちの価値観を常に揺らがせる。自民党の「生殖補助医療に関するプロジェクトチーム」が不妊治療などに関する法案の中身について議論されているいまだからこそ、最初に読んでほしい一冊。

 

 

生殖医療はヒトを幸せにするのか 生命倫理から考える (光文社新書)

著者/訳者:小林 亜津子

出版社:光文社( 2014-03-18 )

定価:¥ 821

Amazon価格:¥ 821

新書 ( 213 ページ )

ISBN-10 : 4334037895

ISBN-13 : 9784334037895


 

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