外国人活用:女性就労でニーズ 間口拡大、家事・介護から

毎日新聞 2014年04月05日 00時35分(最終更新 04月05日 00時35分)

 安倍晋三首相が4日の経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で、外国人労働者の受け入れ拡大を指示した。日本経済を成長に導くには、女性や高齢者が働きやすい環境を作り、働き手を増やす必要があるからだ。ただ、拙速な受け入れ拡大には慎重論も根強く、政府は丁寧に議論を進める方針だ。【永井大介、小倉祥徳】

 甘利明・経済再生担当相は会議後の記者会見で「人口減少の中、(人材が)足りないところについて、外国人も働いてもらうことは結構なことだと思う」と述べた。内閣府によると、労働力人口は2013年に6577万人いたが、約50年後には少なくとも1170万人減りそうだ。働き手が減ると、日本のモノやサービスを生み出す力が衰え、所得が減って消費や投資などの内需も小さくなり、経済は右肩下がりとなる。

 政府は、女性や高齢者が働く環境を改善することで就労を促し、労働人口減少の穴埋めをする考え。そのために、家事や介護を請け負う外国人労働者の受け入れ拡大を目指す。現在も介護については、経済連携協定(EPA)を結んだインドネシアやフィリピンから人材を受け入れているが、間口を本格的に広げることを検討する。

 建設分野の受け入れ拡大には、先駆けという位置づけがある。「賃金など待遇の良くない建設業界に、労働力人口減少の影響が真っ先に表れた」(国土交通省幹部)と見られるからだ。建設業は公共事業削減で離職者が増加した上、低賃金で先行きが見通せず、若者の就労が進まない。

 東日本大震災の復興事業などで、2月の建設業の有効求人倍率は3・04倍に達し、1・5倍程度だった12年から上昇。今後も東京五輪に向けたインフラ整備などで人手不足が深刻化する見通しだ。政府は今回の措置で、延べ7万人程度の外国人を受け入れられるとみるが、建設業界からは「五輪後も安定して仕事を確保できないと、若い人は来ない」との声も漏れる。過度な人手不足は賃金などのコストを押し上げる。

 今後は、農林水産業や育児支援などでも外国人労働力の受け入れ拡大に踏み込むかどうかが議論されそうだが、課題は多い。

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