コンサルティングファームのアリックスパートナーズは2014年4月3日、独自の企業破綻予測モデル「アーリー・ウォーニング・モデル(EWM)」により、日本市場および韓国、シンガポール市場を分析し、その調査結果を発表した。
同社は企業再生を中心としているコンサルティングファームで、米国ゼネラルモーターズ(GM)や日本航空(JAL)など多くの企業の再建に関わっている。破綻企業の再建に入る場合が大半だが、破綻前に予測できれば傷口が広がる前に対策を打てることから、破綻企業の傾向を分析し事前に予測するEWMを独自に作り上げた。既に米国では5年以上運用しており精度を高めているが、日本市場でも2年の運用を行い、成果が出てきたことから今回分析結果を発表したという。
EWMは、上場企業の財務データを収集し勾配学習モデルにより企業破綻の予兆を探るもの。500以上の変数から予兆を見つける独自のアルゴリズムを構築しており、さらに学習によるモデルの微調整で精度を高めている。このEWMにより、破綻の危険度の高さを「コーポレート・ディストレス・インデックス(企業の破綻予測指数)」という指標で示し、その指数がある一定数以上に達すると「警告レベル」ということになる。
同社がEWMで自信を持つのはその精度である。「2011〜2013年に国内上場企業で破綻した企業は13社あるが、その全ての破綻を3四半期以上前から予測できていた」とアリックスパートナーズ・アジアの日本共同代表でマネージング ディレクターの野田務氏は語る。例えば、国内の上場企業は3200社以上存在するが、2012年12月期第4四半期においてEWMで「警告レベル」となった企業は71社あった。2013年にはそのうち3社が破綻、1社が上場廃止になった。警告レベル企業以外からは破綻企業は現れていない。
71社中の4社となると確率は低いように見えるが「他のモデルでは数百件クラスの候補を挙げている。これに対して、数十件の候補企業で済み、さらに候補以外から破綻企業が現れていないという精度については自信を持っている」と野田氏は語る。
日本市場については、破綻危機にある企業の比率は減少傾向が続いている。上場企業の総数に対し破綻の警告レベルにある企業比率は、2011年に2.5%だったのが、2013年には1.9%に下がっている。野田氏は「アベノミクスや円高是正の効果がある一定レベルで発揮されていることが要因として挙げられる」と述べている。
破綻予測企業の内訳を見ると、破綻予測指数の高い業界は「ノンバンク・その他金融サービス」「不動産開発・流通」「バイオ・医薬品製造」「インターネット関連サービス」が挙がっている。これらの業界については「市場環境が厳しい競争にさらされている業界やベンチャー企業など規模の小さい企業が多い業界で警告レベルの高い企業が増えている」と野田氏は分析する。
一方で厳しい競争にさらされているように見える「機械・電気製品」については、2012年の第4四半期と比較して破綻予測企業の比率は4%から2%に半減している。「業界は厳しく予断は許さない状況であることは間違いないが、経営陣もそのことを自覚しており、ここ数年大小さまざまな手を打ってきている。そのため、財務的には改善が進んだ企業多く、比率が下がっている」(野田氏)。
では、他の国々と比べた場合はどうだろうか。
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