ブルートレイン:改造北斗星 30年間現役 JRの職人魂
毎日新聞 2014年04月04日 15時03分(最終更新 04月04日 15時25分)
◇レトロな寝台特急「技術の結晶」−総務課助役・遠山栄一さん(53)
平日の夜、JR大宮駅ホームに濃いブルーの車体が滑り込んでくると、ホームに立つ人たちが一斉にカメラを向けた。ブルートレインの愛称をもつ上野発札幌行きの寝台特急「北斗星」。約30年前から変わらぬレトロな車両は多くの人に愛されている。
この車両の改造もJR東日本大宮総合車両センターが担当した。
1988年3月、青函トンネル開通に合わせ誕生した「北斗星」。寒さや雪に耐えられるよう設計しただけでなく、長時間の旅を楽しめるように、当時の寝台車両を進化させた。工場百年史には「大宮工場(現センター)の技術の結晶」と記されている。
寝台車として使用していた「24系車両」は、シャワー室やVTR機器を備えた豪華車両「ロイヤル」に大改造。ソファやテーブルを設置した「ロビーカー」も作られた。
現在は総務課助役を務める遠山栄一さん(53)は、この改造に携わった。中学校卒業後の78年に旧国鉄に入社、工場に配属された遠山さんは、主に鉄工の溶接や加工で事故車両の修繕などをする作業を受け持った。見たこともないシャワー室や食堂車を取り付ける作業に「本当に改造できるのかな」と最初は思っていたという。
微妙に長さが違う車両に、ミリ単位で合わせてシャワー室をはめ込まなければいけない。「夢の豪華車両」のイメージを壊さないよう、外見にもこだわった。溶接の熱のひずみで鉄板にでこぼこを見つけると、熱と水と研磨による「お灸(きゅう)」と呼ばれる手作業で平らにした。テープカットで車両を送り出す時には「大宮工場にできないものはない」と自信を持ったという。
「北斗星」は、走行距離に応じた定期点検で、今でもセンターに戻ってくる。海水の塩分で傷んだ鉄板に新しい鉄板を溶接するなど補修を受けるが、約30年間現役で走り続けられるのは工場の技術力の証しでもある。遠山さんは「だんだん寝台車両がなくなっていくなか、北斗星が残っているのはうれしい。風情を残してほしい」と話す。
120年目を迎えたセンター。遠山さんは脈々と引き継がれてきた「職人魂」を解説する。
「挑戦してやろう、新しいものを作ってやろうという気持ち。『作れるか』と尋ねられると、てやんでえって思ってさ。そういう気持ちをずっと残したい」【西田真季子】