小学教科書検定:半袖で木登り NGで写真変更
毎日新聞 2014年04月04日 11時50分(最終更新 04月04日 13時04分)
来年4月から使用される小学校教科書の検定では、安全上の配慮や道具の正しい使い方を求める検定意見が相次いだ。中には「半袖半ズボンで木に登るのは危険」「子供の手がフライパンに近すぎる」といった過剰とも思える指摘も。背景に「体験不足教師」の急増を指摘する声もある。
木につかまりクワガタを捕ろうとする少年。教育出版が小学3年理科の表紙に使おうとしたこの写真に「作業の安全について適切な配慮がされていない」との検定意見が付いた。「半袖半ズボンでの木登りは危険で、長袖長ズボンが望ましい」(文部科学省教科書課)。同社は少年の足元に地面を出した写真に替え、木登りではなく、立った状態で木を抱きかかえている構図に差し替えた。
小学4年理科では、フライパンから10センチほどの距離に手がある少女の写真に「危ない」との意見が付き、机の下に手を引っ込めた構図に差し替えられた。小学3・4年の社会で、柵なしの屋上から周囲を観察する学習のイラストに「安全面での必要な配慮を欠いている」と意見が付いて、金網の柵を描き加えて対処した。
東京都内の公立小校長は「現状を知らずに教科書を編集しているのではないか」と指摘する一方で、こうした細かい検定意見について「体験不足の教師の急増」を理由に挙げる。「野外観察などで何が危険か、体験的に分からない教師が増えている。誤った記載があっても『教科書に載っているから大丈夫』とうのみにする危険性が高く、ここまで細かい配慮があって当然だと思う」と話している。【福田隆】