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MUSIC

谷川俊太郎×DECO*27対談 「詩はいつでも歌に憧れてる」

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:西田香織(2014/04/04)

新年度の幕開けにふさわしい、異色のビッグ対談が実現した。日本が世界に誇る現代詩人・谷川俊太郎と、先日全編初音ミクを使用した新作『Conti New』を発表したばかりの気鋭のボーカロイドプロデューサー・DECO*27。年齢差55歳、現代詩とボーカロイドという組み合わせに「?」を思い浮かべる人もいることだろう。しかし、谷川は大の音楽ファンとして知られ、ニコニコ動画への出演経験もあり、初音ミクへの興味も十分。一方のDECO*27も歌詞に対するこだわりはボカロP界隈でもトップクラスで、ミクの声の聴き取りやすさを楽曲の最重要課題とするような言葉の人。実際に対談が始まってみると、あれよあれよと二人の共通点が浮き彫りになって、対談時間はあっという間に過ぎ去っていった。

やはり何より驚くべきは、谷川の若々しい感性。「無邪気」という形容が一番しっくりくるように思うのだが、人間の奥底にある集合的無意識を見つめ、何に対してもフラットな目線で興味を持っているからこそ、谷川の作品には何気ない日常の一コマと、生命や宇宙の神秘とが、何の違和感もなく共存しているのだと感じられた。そしてDECO*27にしても、昨年音楽家としての再スタートを切り、今また音楽と無邪気に戯れている真っ最中。変化球かと思いきや、実は2014年における文化・芸術のあり方にど真ん中から切り込んだ、非常に刺激的な対談となった。

PROFILE

谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう)
1931年東京生まれ。詩人。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。 1962年「月火水木金土日の歌」で第四回日本レコード大賞作詞賞、1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で第34回読売文学賞、 1993年『世間知ラズ』で第1回萩原朔太郎賞、2010年『トロムソコラージュ』で第1回鮎川信夫賞など、受賞・著書多数。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表。近年では、詩を釣るiPhoneアプリ『谷川』や、郵便で詩を送る『ポエメール』など、詩の可能性を広げる新たな試みにも挑戦している。
谷川俊太郎.com


DECO*27(でこ にーな)
福岡生まれ、男性。レフティスタイルでキターを奏で、作詞、作曲を手掛ける27歳のアーティスト/プロデューサー。ロックをベースにフォークからエレクロニックミュージックまでを柔軟に吸収したサウンドと印象に残るメロディー、等身大の感情をリアルに、かつ絶妙な言葉遊びを用いて描かれた歌詞が若い世代から絶大な支持を得ている。2013年9月には1年8カ月ぶりとなる新作ボーカロイド曲「妄想税」を発表。活動5周年を迎えたメモリアルイヤーである2013年、自身初となるボーカロイド・ベストアルバムをU/M/A/Aよりリリース。2014年3月26日に4thアルバム『Conti New(コンティニュー)』をリリースした。
DECO*27 OFFICIAL WEBSITE

“鉄腕アトム”が初めての曲先で、あれはアトムの特徴を入れていけばいいわけだからわりあい楽だったんだけど、それでも途中を「ラララ」でごまかしたわけ(笑)。曲先って難しくて、できれば詞先の方がありがたい。(谷川)

―今回対談を行うにあたって、事前に谷川さんにデコさんの作品を聴いていただいたかと思うのですが、どんな感想を持たれましたか?

谷川:どこがいいんだか全然理解できない(笑)。つまり、ボーカロイドっていうものの存在自体が理解できない。

DECO*27:リアルですね(笑)。

谷川:詩集なんかも出してるの?

DECO*27:いえ、僕は歌詞しか書いてないので、詩集は出していないんです。

左から:DECO*27、谷川俊太郎
左から:DECO*27、谷川俊太郎

―デコさんはいつも「曲先」(歌詞よりも曲を先に作ること)なんですよね。

DECO*27:全部そうです。僕は作る過程の中で、作詞が一番好きなんですよ。ご飯を食べるとき、美味しいものを最後までとっておくタイプなので、音楽を作る場合も先にメロディーを考えて、コードをつけて、最後に言葉を気持ちいいようにあてはめていきます。メロディーと言葉のパズルをやってるような気持ちなんです。

谷川:僕は“鉄腕アトム”が初めての曲先で、あれはアトムの特徴を入れていけばいいわけだからわりあい楽だったんだけど、それでも途中を「ラララ」でごまかしたわけ(笑)。曲先って難しくて、その後もときどき曲先でやるんだけど、できれば詞先の方がありがたい。『ハウルの動く城』(“世界の約束”)のときも曲先で、できあがっても、やっぱり自分では何となく不満なんだよね。

DECO*27:谷川さんは詩を書くときに、自分の中にリズムがあって書くんですか?

谷川:何にもなくて、自分を空っぽにして待ってると、言葉が出てくるみたいな感じかな。

DECO*27:ペンで書かれるんですか?

谷川:いや、Macですね。僕は字が下手で、字を書くのが嫌いなの。

DECO*27:あっ、僕も字を書くの超嫌いです。自分の書く字が下手で、「ウワー」ってなっちゃうんで。

谷川:じゃあ同じだよ(笑)。それに鉛筆で書くと消しゴムのかすがたまっちゃって汚いけど、パソコンは簡単に言葉を入れ替えたりできるでしょ? だからワープロの時代からキーボードで書いていて、すごい助かってるわけ。

谷川俊太郎

DECO*27:意外でした。筆とか万年筆で書かれてるのかなって、勝手にイメージしていたので。

谷川:詩人ってそうしたイメージをもたれることが多いですよね。僕の場合、映画なんかで外国の作家がタイプライターを使っているのを見て、それにすごく憧れてね。それがようやく、ワープロで実現したわけ。だけどね、文学館関係の人は困るんだって。昔は「宮沢賢治の生原稿」なんて、ガラスの中にうやうやしく置いてあったわけじゃない? それがワープロになると、どうやっていいかわからないでしょ?(笑)

DECO*27:Macを置くしかないですね(笑)。

谷川:USBのメモリを置いておくとかね(笑)。


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