アベノミクスで女性就労後押し、配偶者控除見直し-専業主婦には逆風
4月4日(ブルームバーグ):アベノミクスによる景気回復で伸びている女性の就業者数を一段と増やすため、専業主婦を擁護している「所得税配偶者控除」の見直しを安倍晋三首相が指示した。減少傾向にある労働力人口を維持するため既婚女性の就労拡大を後押しする一方、恩恵を被っていた専業主婦には負担増になりかねない。
1961年に創設された配偶者所得控除は、専業主婦のパートタイムの給与収入が年間103万円以下の場合、夫の所得税から38万円の控除が受けられる制度。女性の就労を抑制して共働きに不利な税制だとし、見直しを求める指摘が出ていた。財務省によると2014年度の対象人数は約1400万人に上り、年間約6000億円の税収減につながっている。
総務省の労働力調査によると2013年の女性の就業者数は前年比47万人増と91年以来の伸びを示し、過去最多の2701万人となった。専業主婦の割合も4.3%減の1592万人と最大の減少幅を示した。97年以降、共働き世帯が専業主婦世帯を上回っている。
三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは「夫が外で稼ぎ、妻が家を守るという古来からの伝統が揺らいでいる。労働力人口減少に伴い、移民や女性に働いてもらわなければならない背景もある」と安倍首相が控除見直しに踏み切った理由を説明する。
野村証券の木下智夫チーフエコノミストも「アベノミクスで景気が良くなり、人手を要する小売りや介護などで女性の雇用者が増えた」としながらも、その多くが「非正規」だったと指摘。正規雇用への流れをつくるためにも「100万円超のところで税制面で差をつけるのは不公平だ。改革は方向性としてはあるべき姿だ」と見る。
控除縮小、厳しい一方で千葉県に住む堀香さん(47)は「控除が縮小されると厳しい」と語る。17歳と15歳の子供がいる堀さんは1日約5時間で週5日働いている。「教育費もかかるため、もう少し働きたいが、配偶者控除の限度額を超えると逆に損をするという話を聞くので踏み切れない」と述べた。現在は年収を103万円以下に抑えるため、休暇で調整している。
これに対してゴールドマン・サックス証券のチーフ日本株ストラテジスト、キャシー・松井氏は「既婚女性が労働市場に参加すれば家計所得の増加から消費増につながり、GDPを底上げする」と語る。「女性が働くことによって増える所得は、家にとどまる選択をした家庭で失われる税控除の恩恵を補って余りある」と主張する。
安倍首相は先月19日、「女性の就労拡大を抑制している税・社会保障制度の見直しを検討してほしい」と述べ、配偶者控除などの見直しを指示。民間議員も労働力人口の減少を最小限に食い止めるため、女性の労働参加を阻害する制度見直しを提唱。政府税制調査会は14日に総会を開き、中長期的な視点から税制面での議論を開始する。
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更新日時: 2014/04/04 12:43 JST