未踏域にさらに踏み込むECB、量的緩和を議論-デフレ阻止で
4月3日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は3日、ユーロ圏をデフレの脅威から守るためECBがさらに未踏の領域へと踏み込む構えであることを示唆した。当局者らはどのような形の量的緩和(QE)が効果的かを議論しているという。
総裁は定例政策委員会後の記者会見で「QEについての議論はあった。この手段が無視されていたということはない」と語った。ECBはこの日、政策金利を0.25%で据え置いた。総裁は「どのようなQEがより効果的かということについてはもちろん、さまざまな見解がある。今後数週間に、議論を進めていく」と述べた。
インフレ率が中銀が目安とする2%弱の水準の4分の1にとどまる中で、物価と成長を押し上げるための大規模な資産購入は、ECBが採用する最も野心的な手段となる。ただ、18カ国から成るユーロ圏にとって最適な政策をまとめるのは容易ではない
スタンダードチャータードの調査責任者、サラ・ヘウィン氏は「政策委員会がQEについて時間をかけて議論したというのは重大な意味を持つ。QEに対して明確で強いイデオロギー的な反対があった状態から、状況が適切であれば支持しようという状態に変わってきている」と話した。
これまでECBの債券購入に対する反対の急先鋒だったドイツ連邦銀行のバイトマン総裁は先週、資産購入への暗黙の支持をほのめかした。政策委員会はこの日、「非常に実のある議論」をすることができたとドラギ総裁は語った。非伝統的措置の採用への政策委のコミットメントは全会一致だったとも述べた。
設計はこれからユーロ圏のQEプログラムのあり方について、政策当局が明確な考えを持っていないこともドラギ総裁は示唆した。銀行を介した間接金融が主流の域内経済は、国債の購入に対して米国と同じようには反応しないだろうと指摘した。
「民間部門の債務を購入する大規模でしかし金融安定を脅かさないようなプログラムを設計するのは簡単ではない」と総裁は述べ、当局者らはQEを有効なものにする方法を「懸命に考えている」と付け加えた。
従ってECBが資産購入プログラムの導入に積極的だとしても、直ちに実行に至ることはなさそうだ。BNPパリバのユーロ圏担当チーフエコノミスト、ケン・ワトレット氏は「QEに関してECBがまだ準備ができていないのは明らかだ」とした上で、「QEがECBの政策検討の上で重要性を増したこと、物価安定の下振れリスクに対して当局が目に見えて敏感になったこと」がこの日の会見から明白になったと指摘した。
3月のユーロ圏インフレ率は0.5%に低下。一方で、同月のユーロ圏景況感指数は2011年7月以来の高水準だった。
ドラギ総裁は「政策委員会は物価見通しに関するリスクは上下両方向とも限定的で、中期的におおむね均衡していると考えている」と述べた。QEへの言及は、シナリオがそのように展開しない場合に行動する考えであることを示したものだ。
総裁は、ユーロ圏経済が直面しているリスクの大きさも強調。見通しはさらに悪化する可能性もあると指摘した。「私が最も恐れているのは長期の経済停滞であり、それは既にある程度現実になっている」とし、最大の脅威の一つは「非常に高い」失業率だとの認識を示した。
原題:Draghi Says Officials Debating QE to Fight DeflationDanger (1)(抜粋)
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更新日時: 2014/04/04 03:01 JST