ロシアによるクリミア併合問題で国連が3月27日、総会を開き、併合に先立って実施されたクリミアの住民投票について「なんの正当性もない」と批判する決議案を採択した。住民投票について、決議は「クリミア自治共和国とセバストポリの現状変更を認める根拠にはならない」と断言している。
国連総会でクリミア併合問題の「住民投票は無効」
決議は「ロシア」と国名の名指しこそ避けたものの、明確なロシア批判である。
3月20日公開のコラムで書いたように、国連は当初、安全保障理事会で住民投票を無効とする決議案を採択しようとした。ところが、ロシアが拒否権を行使したために、それは否決されてしまった。
今回は安保理ではなく総会の決議である。だから住民投票を無効と断じたところで、国連憲章の上では、現状を改める実効的強制力はない。
あくまで象徴的なものだ。とはいえ、クリミア併合問題に対する国際世論を推し量るうえでは、それなりに意味がある。
棄権が58ヵ国
まず、評決結果である。決議案に賛成したのは、米国やカナダ、日本など100カ国に上った。これに対して反対は11カ国だった。棄権が58カ国である。この数字をどうみるか。
反対した国を挙げると、当事国であるロシアのほかアルメニア、ベラルーシ、ボリビア、キューバ、北朝鮮、ニカラグア、スーダン、シリア、ベネズエラ、ジンバブエの11カ国である。もともと親ロシアや反米だったり、北朝鮮やシリアなどテロとの関係が濃い、あるいは政情不安や崩壊寸前の国々である。
これらは「まあ、そんなものだろう」と思う。
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