メディアリテラシーを磨く最適のテキストか? “次世代原発”という甘い果実『パンドラの約束』
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NY、パリ、東京、福島、チェルノブイリ……と世界各地で放射能値を測定。原発があるなしに関わらず、どこにでも放射能は存在する。
これはストーン監督の明らかな間違いだ。日本では2004年に福井県美浜原発で蒸気噴出事故が起き、点検中だった作業員5名が亡くなっている。商業炉ではないが、1997年には茨城県東海村のウラン加工施設「JCO東海事業所」で臨界事故が起き、2名が被曝で亡くなっている。世界初の高速増殖炉である福井県敦賀市の「もんじゅ」では事故が相次ぎ、関係者が自殺に追い込まれた。またストーン監督が挙げた犠牲者の数には、今回の福島第一原発事故の復旧作業に従事していた作業員たちが事故や体調不良を訴えて亡くなったケースや避難生活での関連死は含まれていない。でも、そのことを伝えてもストーン監督は、化石燃料や地球温暖化がもたらす災いに比べれば、無視できるほどの微々たる数字ではないかと反論するのだろう。原発先進国としてフランスのエネルギー政策を激賞しているが、フランスでも大なり小なりのトラブルは起きているのではないのか。ストーン監督は原発推進派にとって不都合な部分には言及しない。
原発推進派がどのくらいの認識で自説を主張しているのかを知っておく意味でも、『パンドラの約束』は反原発派も観るべき価値のある作品だといえる。また、冒頭で小泉元総理が方向転換したことに触れたが、言い換えれば元総理は現職中は核廃棄物の危険性を充分理解していなかったということでもある。一国の舵取りを任された為政者でも、原発についてその程度の知識しか持ち合わせていなかったのだ。原発賛成派も反対派も、まずは『100,000万年後の安全』と『パンドラの約束』の2作品を見比べてみたほうがいい。経済効果や環境保護について議論する前に、自分たちが普段当たり前のように使っている電気がどのような仕組みで作られているのかを、もう少しまともに知っておく必要がある。
『パンドラの約束』は次世代原発によってクリーンなエネルギーが隅々まで行き渡った地球が燦然と光り輝く姿を予想して終わりを告げる。このラストシーンもそのまま受け入れることはできない。地球上から闇が消えてしまうことが本当に明るい未来なのだろうか。最後の最後まで観る側のメディアリテラシー力を問い掛けてくる、挑発的な作品である。
(文=長野辰次)
『パンドラの約束』
監督・脚本/ロバート・ストーン 出演/スチュアート・ブランド、ギネス・クレイヴンズ、レン・コッホ、マーク・ライナース、リチャード・ローズ、マイケル・シェレンバーガー、チャールズ・ティル 提供/フィルムヴォイス 配給/トラヴィス 4月12日(土)より名古屋・伏見ミリオン座にて先行上映、19日(土)より渋谷シネマライズほか全国順次公開
<http://www.pandoraspromise.jp>
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