ノバルティス:「患者より医師優先」日本人経営幹部を更迭
毎日新聞 2014年04月03日 23時34分(最終更新 04月03日 23時50分)
製薬会社ノバルティスファーマ(日本法人)は3日、二之宮義泰社長(56)ら日本人役員3人の辞任を発表し、後任の社長にはドイツ法人社長などを歴任したドイツ人のダーク・コッシャ氏(50)が、浅川一雄常務(60)の後任には、カナダ人のフランシス・ブシャール氏(51)が、持ち株会社ノバルティスホールディングジャパンの石川裕子社長(58)の後任にはイギリス人のマイケル・フェリス氏(63)がそれぞれ就任した。この経営幹部の刷新は日本法人の体質改善が進まないことへのスイス本社のいらだちがあった。白血病治療薬の問題を検証してきた社外調査委員会の調査報告書は、降圧剤バルサルタンの臨床試験疑惑以降も、社内に営業社員向けの新たなルールが明文化されていないことを明かし、「内部統制システムを構築(改善)する義務違反があった」と、二之宮社長の対応を批判した。
営業社員たちは、血液のがんである白血病患者の個人情報を「ゲーム感覚」で競って集め、不正に得た患者の個人情報から分かった副作用情報を国に報告しなかった「薬事法違反の可能性」が判明。さらに社員らによる資料の廃棄など証拠隠蔽(いんぺい)の工作もあった。社外調査委の原田国男弁護士は2日の記者会見で「調査を進めると、問題行為の範囲や規模が拡大し、たじろぐほどだった」と感想を漏らした。
バルサルタン疑惑では、「企業丸抱え」の実態が外部に伏せられたまま、臨床試験の論文が薬の宣伝に使われていたことが問題視されたにもかかわらず、その後も同じ構図の白血病治療薬の臨床試験が続けられていた。
日常の診療に追われる医師が行う臨床試験を製薬社員が手伝うことが日本では珍しくはなく、奨励された時代があったが、「両者は距離を置く必要が認識されるようになった。新時代への対応はノ社において不十分だった」(報告書)。
エプスタイン社長は「日本の従業員は他国と比べて医師を優先する傾向がある。患者優先の方向に文化を変えなければいけない」と述べ、慣習を断ち切ることが重要との考えを示した。【八田浩輔】