東京大学、京都大学の高校別合格者数(速報)が明らかになった。開成が前年比14人減となったものの33年連続でトップを守った。中高一貫校が上位を占める中、駒場東邦が17人増で躍進。京大は洛南が24年連続で首位となった。京大が地方・首都圏から広く合格者を増やしたのに対し、東大は関東中心の傾向が続いた。「全国区」の東大、「関西ローカル」の京大という、かつての構図が崩れつつある。
東西トップ校の気になる合格者が判明した。週刊誌「サンデー毎日」と受験関連の情報通信社「大学通信」の調べによると、前期試験を終わった段階で、東大のトップ3は開成、灘、麻布と“常連校”が入った。筑波大付駒場などはランクに含まれていない。
最も合格者数を増やしたのは駒場東邦だ。前年の56人から73人となり、17人増となった。
大学通信のゼネラルマネジャー、安田賢治氏は「昨年減ったため、今年の合格者が増えた『隔年現象』ともいえる。ただ、現役で57人もの合格者を出すなど、確実に実績を上げていることがうかがえる」と話す。「開成・麻布・武蔵」の「御三家」から武蔵(2014年合格者16人)が長らく低迷。台頭してきた駒場東邦が入って「新御三家」と呼ばれ、実力を見せつけた格好だ。
公立校のトップは、古豪の日比谷。今年は35人の合格者を出し、4年ぶりに30人台を回復した。同校の武内彰校長は「今年はセンター(試験)が難しかったが、志望を貫いて挑戦した姿勢が良かった。子供たちがよく頑張った結果」とたたえる。10年前は東大一ケタ台と低迷していた同校だが、都の進学指導重点校としての成果が着実に出ているようだ。
また、地方で最も躍進したのは久留米大付設。進路指導部の城戸清部長は、前年比14人増となった結果について、「昨年は東大文系の対策が甘く、合格者が伸びなかった。今年は昨年の厳しい結果を受けて、現役も浪人も頑張って、例年並みに戻った」と分析する。
京大に目を向けると、洛南、西大和学園、洛星の順番に。ランクには大阪教育大付池田などは入っていない。
上位校で合格者を大きく伸ばしたのは、清風南海16人増、洛星10人増など。最も合格者数を増やした清風南海の進路指導部の辻井良之次長は「文系の合格率が上がり、全体の伸びにつながった。優秀な生徒に周りも刺激され、全体に良いムードで試験に臨めた」と話した。
注目すべきなのは、洛南、西大和学園、北野など地元の常連校が合格者を減らす一方、関西圏以外の学校が伸ばした点だ。地方では熊本が14人増(2014年合格者21人)、愛知の南山が11人増(同16人)。首都圏からは千葉・県立7人増(同12人)、湘南6人増(同11人)、浦和・県立3人増(同13人)、西3人増(同13人)などとなった。
京大の「裾野の広がり」の背景について、安田氏は「行きたい大学に行く、という傾向がみてとれる。山中伸弥教授のノーベル賞効果だけでなく、京大は工学部で第2志望を認めたり、試験を受けやすくしている」と指摘する。
サンデー毎日の中根正義編集次長は、国公立医学部人気を改めて実感したという。
「後期の上積みが予想されるが、開成が東大合格者150人をきったのは2008年以来。これは、他大学の医学部に優秀な生徒が流れた可能性がある。東大や京大を卒業したとしても就職は厳しい現状があり、医学部人気は一段と強まっている」
こうした医学部人気の高まりに、東大、京大ともに、地方で高校説明会を実施するなど、優秀な人材を獲得するための取り組みを積極的に行っているという。
今年は、首都圏などから合格者を広く出した京大に対し、東大は、関東中心の傾向が続いた。
「合格者のうち地元の高校の割合を示す『地元占有率』をみると、5年前と比べて、東大は関東の高校の割合が増加傾向にあるのに対し、京大は関西圏が年々減っている。かつては、全国区の東大、関西ローカルの京大という構図だったが、『クロス現象』が起きている。京大は人材獲得の成果が出ているといえるが、東大はいまいち伝わってこない」(中根氏)
少子化に医学部人気もあり、最難関といえども、危機感は強い。