2014年04月03日 (木) 掲載
歌舞伎町には、いくつもの魅力が存在する。だが、その一つにオールドスクール・ロックがある事は意外と知られていない。今回はロックを聞きながらお酒を楽しみたい時に訪れるべき場所をご紹介する。
しばしば東京の赤線地帯と呼ばれる新宿の歌舞伎町は、アムステルダムの売春街とは異なる類いの「赤線地帯」であるものの、そこにはホストやホステスバー、ラブホテル、更にはこのエリアの何百もの事業を統括していると言われているヤクザが点在する。
歌舞伎町の通りを夜歩いていると目に飛び込んでくるのは、きらびやかな広告板、永遠と続く店舗、バーやレストラン街、奇抜なファッションといった、言わば典型的な東京の一面である。そのため、このエリアが元々沼地で、明治期以降は閑静な住宅街として発展していたという歴史は非常に興味深い。その後、第二次世界大戦の東京空襲で完全に破壊されたこの地に、歌舞伎座を建築する計画があった事から、歌舞伎町という名前をつけられた。実際に歌舞伎座が建設されることはなかったが、60年代以降にいくつもの軽飲食店街が建設された結果、徐々に東京で最大規模を誇る娯楽街、およびアジアで最大の赤線地帯へと変貌していった。
しかし、この「眠らない街」歌舞伎町には、セックスとヤクザ以外にも沢山の魅力がある。例えば、ロックンロール。今や過去の産物となってしまった、サブカルチャーが抱えるノスタルジアを満たしてくれるプログレッシブロック・バーが多数存在する。
ムード溢れる青紫色の照明、ドラムセットとキーボードを備えたステージ、壁にディスプレイされたオーナーのギターコレクション50台、そして不思議なピカソの絵を飾るこのバーは、ハードロック好きのファンを魅了する。33歳のオーナーが7年前にオープンした同店は、80年代の音楽(時折なぜかマイケル・ジャクソンの曲も)が流れ、隔月で生バンドによるイベントも開催。西新宿の人通りの少ないエリアに店を構え、新宿駅から多少歩かなければならないが、口コミによりその人気が広がった。
長髪でギタリストの店主は、このライブミュージック・バーの雰囲気にぴったりはまっている。新宿がロックの「コアな地域」である事から、2003年、同地にバーをオープン。主に70〜80年代のブリティッシュ・ロックに焦点をあてている。個人的にレッド・ツェッペリンがお気に入りであることは、ディスプレイされているツェッペリンのインセンスや赤ワインからも伺える。しかし、実際にここで演奏するバンドは、カバー曲やオリジナルのジャパニーズ・ロックなども披露。バーカウンターやステージ前のテーブル席を確保して、週末の19〜21時半の間に行われるバンド演奏に聞き入りながら軽めのディナーを楽しもう。毎月最終日に開催される『フルテンde Night』では、音量最大限にかかったロックミュージックに没頭することができる。
あまり特徴のないビルの4階にあるため、誰かに案内されない限り見つけることが難しい。オルガン、ピアノとドラムセットが所狭しと配置され、無計画に作られたような内装だが、不思議とくつろげる雰囲気を醸し出している。オーナーの2人は沖縄ロックミュージックの大ファンである。またキース・エマーソンやレニー・ディー、アティラ、ミクラガルドなど、あたり一面を敷き詰めているアルバムからしても、スタンダードなロックが流れないことが分かる。場合によっては、オーナーが演奏するクラシックピアノを聞けるかもしれない。
ジャニス・ジョップリンのファンは、間違いなくこの落ち着いた空間でアットホームな気分に浸れるだろう。一番好きなアーティストとしてジャニスを挙げる元プロシンガーのオーナーによってオープンした同バーは、壁スペースとセットリストの大半を、そのかすれ声の歌手に捧げている。バーカウンターの裏よりオーナー自ら、美味しいオムライスや一杯500円のサザンカンフォートを提供し、必要であれば男女の悩み相談も受けつける。ジョップリン以外にもハードロックやポップロックなどが流れ、気分が乗ってきたら置いてあるギターで即興の演奏を楽しむこともできる。
日本でまだカラオケを試した事が無ければ、是非ともここに足を運ぶべきだ。このバーでは、ジャーニーの『ドント・ストップ・ビリーヴィン』等の曲を選べるだけでなく、オーナーの二人が、歌に合わせてギターとサックスを伴奏してくれる。部屋にディスプレーされた4つの巨大テレビ画面、ランダムに配置されたギター、黒塗りのカーテン、そしてあらゆる空きスペースに描いたアートワークからは、バーというよりレコーディング・スタジオのような印象を受ける。最も混雑している金曜日と土曜日は朝7時まで営業しており、プロレスラー、漫画家やモータースポーツファンと一緒に楽しい夜を過ごせるだろう。
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