坂本龍一×東京新聞
音楽家の坂本龍一さんと紙面を作りました
【政治】秘密保護法 知る権利もっと剥奪 日韓文書の公開求める会代表・吉沢文寿氏われわれの団体は日本政府に対して、一九五一〜六五年までの日韓会談関連のすべての公文書(約六万ページ)の公開を求め、情報公開法に基づく開示請求をしてきた。多くの不開示部分があったため、三回にわたって訴訟を起こし、一昨年十月、東京地裁が不開示だった部分の七割の開示を命じる判決を出した。 この中でいろいろなことが分かった。例えば、島根県の竹島について「アシカの数が減少し、経済的には大きな意義がない」という記述が開示された。外務官僚はこんな情報さえ外交交渉上「不利益を被る恐れがある」として隠していた。 歴史は繰り返す。歴史認識で日韓がうまくいっていない今ほど、歴史に学ぶ必要がある。しかし、日韓国交正常化から半世紀がたち、関係者の多くはこの世になく、文書以外に知るすべはない。 現在の日本社会は「知る権利」が十分保障されていない。特定秘密保護法が施行されれば、さらに市民の権利を奪う。ささいな情報でも政府にとって都合が悪ければ、半永久的に開示されなくなる恐れがある。 自民党の石破茂幹事長は「(報道で)大勢の人が死んだとなれば『それはどうだろう』となる」と発言している。報道機関が特定秘密に関する情報を伝えないよう求めたものだ。歴史的に見れば知らせるべき情報を隠したことによって戦争で多くの市民が犠牲になった。論理が逆ではないか。 秘密保護法は秘密の範囲はあいまいなのに、罰則は厳密に定め「罰則のための法律」だ。「政治をするのはわれわれであり、市民は余計なことを聞くな」という姿勢を感じる。 <よしざわ・ふみとし> 1969年生まれ。新潟国際情報大学教授。専門は朝鮮現代史、日朝関係史。市民団体「日韓会談文書・全面公開を求める会」の共同代表。 PR情報
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