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特別養子縁組「実の親不同意でも成立」
4月3日 20時53分

特別養子縁組「実の親不同意でも成立」
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別の女性が出産した子どもを生後間もないころから7年間育てている栃木県内の夫婦が、法律上も実の親子関係を結ぶ特別養子縁組を求めた審判で、家庭裁判所が「法律で求められている実の親の同意はないが、新たな親子関係を築くことが子どもの福祉のために必要だ」と指摘して縁組を認めていたことが分かりました。
国内では実の親の権利を重んじる傾向が強く、実の親の同意がないのに縁組が認められるのは極めて異例だということです。

申し立てをしていたのは、栃木県内に住む50代の夫婦です。
夫婦は別の女性が出産した女の子を生後11日から7年間育てていて、法律上も実の親子関係を結ぶ特別養子縁組をしたいと裁判所に求めていました。
特別養子縁組を結ぶには虐待などがある場合を除いて実の親の同意が必要ですが、女の子を出産した親は「自分では育てられないが親子の縁は切りたくないので同意はしない」と主張していました。
この審判で宇都宮家庭裁判所は「実の親は女の子との交流は全くなく夫婦に任せきりで、生育状況も確認していない。こうした行為が虐待に当たるかどうかはともかく、子どもの利益を著しく害する状態で、新たな親子関係を築くことが子どもの福祉のために必要だ」と指摘して、縁組を認める決定を出し、2日確定しました。
児童虐待の急増を背景に児童養護施設などで暮らす子どもは3万人を超す一方で、不妊治療をしても子どもに恵まれず特別養子縁組を希望する夫婦が増えています。
しかし、国内では実の親の親権を重んじる傾向が強く、専門家によりますと、裁判所が虐待などがないケースで実の親の同意がないまま、縁組を認めるのは極めて異例だということです。

「やっと自分の子と言える」

栃木県内に住む50代の夫婦は不妊治療をしたものの、子どもを授からず、7年前、特別養子縁組をあっせんする民間団体を通じて別の女性が出産した女の子を迎えました。
日々、成長していく女の子の姿を見ながら夫婦で女の子と法律上も実の親子になり、守り育てていこうと話し合ったということです。女の子は大きな病気などはせず、元気に成長して小学生になり、夫婦を「パパ」と「ママ」と呼んで、「大好き」と言いながら抱きついて甘えることもあり、夫婦は本当の親子だと感じているということです。
その一方で、自分たちの名字では女の子の貯金通帳が作れなかったり、行政から女の子に届く郵便物には産みの親の名字が使われているのを見たりすると、戸籍上、親子でないことを突きつけられ、なぜ認めてもらえないのか悩んできたといいます。
夫婦は、これまでも2度、特別養子縁組の成立を求めて裁判所に審判を申し立てましたが、実の親が同意していないことなどを理由に認められていませんでした。
これまで認められなかったことについて夫婦は、「自分の子どもとして愛情いっぱいに育てているのにこれでもダメなのかと悲しかったですし、子どもにも申し訳なかった」と話しています。
今回、特別養子縁組が認められたことについて夫婦は「いつ『子どもを返して』と言われるかもしれないという不安と闘い続けてきましたが、やっと胸を張って自分の子どもだと言えることがうれしいです。大人の事情で子どもが不利益を受けるのは避けるべきで、子どもにとって何が大切かを一番に考えた仕組みを作ってほしい」と話しています。

「極めて珍しく画期的な判断」

児童福祉が専門で養子縁組に詳しい神奈川県立保健福祉大学の新保幸男教授は「実の親が虐待している場合、同意がなくても裁判所が特別養子縁組を認めた例はあるが、子どもの利益を理由にした判断は極めて珍しく画期的だ」と評価しています。
そのうえで「実の親が育てられない場合、児童擁護施設などよりも家庭で育つ方が子どもの成長には望ましい。子どもと関係を切ることは実の親としても言い出しづらいため、結果的に同意が得られず養子や里親への委託が進まないケースも多い。子どもの利益を最優先に考えた今回の決定は今後、こうした手続きを進めるうえで参考になる判断だ」と話しています。

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