昭和の高度成長期に生まれ、「大人の遊園地」などといわれた「秘宝館」。一時は全国の観光地などに約20館あったとされ、妖しげなお色気とユーモアが詰まった不思議な空間で人気を集めた。その一つ、佐賀県嬉野市の「嬉野武雄観光秘宝館」が3月末で閉館。全国でも栃木県の鬼怒川と静岡県の熱海の2館だけになった。

 嬉野の秘宝館が開館したのは1983年。中学校のプールほどの面積の2階建てで、総額約2億円分の展示品があった。嬉野温泉街から近く、金色の観音像が目印だった。

 閉館が目前に迫っていた3月、現地を訪ねた。「18歳未満立ち入り禁止」の張り紙を横目に入場すると、みつろうで精巧に作られた「嬉野弁財天」が妖しげな姿で迎える。薄暗い通路を進むと、「性技の使者、スーハーマン」「アラビアのエロレンス」といったダジャレのタイトルがついた裸のマネキンなどが並ぶ。

 照明が壊れ、男女の笑い声や機械がぎこちなく動く音だけが耳に残る場所も。同館顧問の大久保重則さん(72)は「開業から30年以上、ほとんど当時のまま。以前は電気関係の担当者もいたが、修理できる人もいなくなった。ご愛敬と思ってもらえたら」。

 ボタンを押して人形を動かしたり、ハンドルを回して風をふかせたりできるコーナーでは、北九州市から来た大学生が、女性のマネキンを熱心にスマホで撮影していた。「こんな人形がまだいるなんて。話のネタになるので」

 同館の最大の見せ場は、建物面積の4分の1を占め、高さ約7メートルの吹き抜け空間につくられた「ハーレム」。水中ポンプから水が噴き出し、原色のネオンが光り輝く。大音響の音楽の中、十数体の男女の人形が動き始めた。東京から夫婦で来た男性(47)は「ばかばかしさを超え、夢のお城のよう。つくった人の情熱が感じられました」。