小保方晴子による反論の驚愕 - 不正への開き直りを支える二つの条件

昨日(4/1)は、午前も午後も、ずっと理研の会見の生中継を見ていた。注目の最終報告だったが、正直な感想は、徒労感だけが残ったというものである。前回、3/14の会見のときは、4時間の質疑応答に飽きなかったし、理研幹部の対応についても、それなりに頷ける部分があり、永田町や霞ヶ関の連中とは少し違うなと感じる要素があった。が、今回はそれは全くなく、時間とともに失望と疲労ばかりが重くなり、憂鬱な気分に沈み込んで行った。前回、僅かに見どころを感じたのは、調査委員長の石井俊輔とCDBセンター長の竹市雅俊だった。石井俊輔には技官のオペレーション・エクセレンスを感じて有能さを信用できたし、竹市雅俊には記者の質問に誠実に答えようとする気配が窺われ、責任ある科学者としての良識の片鱗が垣間見えた瞬間があって、今後の対応に期待を寄せる材料になっていた。今回は、竹市雅俊の態度が一変していた感が強い。前回のような、事件の責任を感じて反省している様子がまるでなく、組織防衛と自己保身に徹した醜い官僚の姿に化けていた。石井俊輔の説明も、不正疑惑に対処する論理的思考よりも政治の動機が先行していて、立場的無責任の言い訳ばかりが強調され、前回よりも格段に後退していた。中間報告から2週間、石井俊輔は何をしていたのだろう。不正行為を画像の捏造とスリカエの2点のみに限定し、文章の盗用(コピペ)を不正とせず、容認した点はとても納得できない。言語道断の手抜き審判だ。

だが、それ以上に衝撃を受けたのは、小保方晴子の反論のコメントだ。これには意表を衝かれ、驚いて腰を抜かし、呆然として黙して踞まらざるを得なかった。そして、3/17の『小保方晴子の不正事件が問うもの - 格差社会の分配と秩序と倫理』で論じた中味が正しかったこと、そこでの直観と推論が当を得ていたことを確信した。小保方晴子は、これだけ重大な事件を起こしながら、何も反省をしていないのだ。不正を行ったという自覚がなく、社会に迷惑をかけたという意識がなく、自身が責められる理由を認めず、何も後ろめたさを感じていない。「調査報告書に対するコメント」では、堂々と開き直りの弁を吐き、捏造ではないと言い張り、調査委の判断と結論を否定している。そればかりか、一昨日(3/31)、無能で緊張感のない川合真紀が、神戸で小保方晴子に最終報告書を提示した際、その場に3人の弁護士を同席させて、理研の判定と処分に対して争う姿勢を見せていたのである。調査委が小保方晴子の不正行為を認定し、それに対して小保方晴子が不服申立で応じる展開になることは、私も予測していたが、まさか、これほど早い時期に弁護士を3人も調達し、準備万端の態勢を整え、4/1の最終報告に合わせて、即座にそれを真っ向から拒否し非難する文書を弁護士に発表させるとは、理研と徹底抗戦する姿勢を世間にアピールするとは、そこまでの大胆で挑戦的な行動に及ぶとは想像していなかった。

3/14の中間報告のとき、竹市雅俊が、論文取り下げに同意したときの小保方晴子の様子を聴かれ、「心身ともに相当消耗した状態で、うなづくという感じだった」 と答えている。この竹市雅俊の発言が、「小保方さんは心神喪失状態」という表現に化け、一つの既成事実となってネットとマスコミの間を徘徊した。「心神喪失状態」という言葉は、会見では誰の口からも出てなかったが、そういう「絵」にして面白可笑しく騒いで世間の興味を扇動したいマスコミが、竹市雅俊の発言を意図的に改竄して、勝手に小保方晴子を「心神喪失状態」に仕立てたのである。本当に「心身ともに相当消耗した状態」だったのかは疑わしい。この表現は、小保方晴子による「Nature論文取り下げ」の<事実>を世間に説得・宣伝するため、竹市雅俊が「情景」の描写を細工したものだ。私は、この説明は竹市雅俊の主観が相当に入ったもので、理研の意思(Nature論文取り下げ)を小保方晴子に承諾させたことを自然に演出したいがため、敢えて、小保方晴子に同情的・惻隠的な表現になっているのだと感じたし、その点に注意すべきだと記事でも指摘してきた。つまり、このときの小保方晴子は、竹市雅俊の言葉から連想するような、不正を追及されて観念して神妙に畏まっているというイメージではないのだ。論文撤回を迫る竹市雅俊の前で、反論できずに窮まっていたというのが真相で、そこには罪責の念とか、後悔とか反省とか、そのようなものは微塵もなかったのである。

理研調査委の判断がクロ(不正確定)と出て、これを認めれば懲戒処分(解雇)となるため、早速、小保方晴子は反撃に出た。代理人の弁護士が、「(小保方晴子は論文の)撤回に同意した覚えはない。撤回の意思もない」と朝日の取材に語っている。3/14の竹市雅俊の説明は否定されたことになる。勿論、ここで振り返って検証されなくてはいけないのは、3/14に理研の中間報告に合わせて、小保方晴子、笹井芳樹、丹羽仁史の3人の名前で発表された「コメント」である。ここでは、「論文にこうした不備が見つかったことはその信頼性を損ねるものと著者として重く受け止め、今回の論文を取り下げる可能性についても所外の共著者と連絡をとり検討しております」とあり、取り下げますとは言っていない。簡単に言えば、笹井芳樹と丹羽仁史が撤回に応じ、小保方晴子が撤回に応じず、3人を足して3で割った結論が、この曖昧な文面になったという意味だろう。が、マスコミは、理研の意向に従って、これを全員が「撤回に応じた」という事実認識で報道した。小保方晴子の方は、もし、理研調査委が不正と断定するジャッジを回避させ、懲戒処分されない方向に向かえば、論文撤回に応じる構えで、つまり両構えだったのに違いない。小保方晴子は、自身の行為(コピペ)を不正だとは最初から認めていない。彼女のメンタルからすれば、反発と反撃のリアクションは当然で、正当性は常に彼女の側にあるのだ。その思考回路とその形成過程の秘密については、前回の記事で試論したとおりである。

4/1の小保方晴子のコメントを見たとき、目の前に化け物がいるとしか思えなかった。そのサイコパス的な心理を支えている条件が二つある。一つは親の財力で、もう一つは小保方擁護論の横溢だ。前者について言えば、親がこんなことを囁いていたのだろう。「晴子ちゃん、大丈夫よ。あなたは天才科学者なんだから、自信をお持ちなさい。パパとママが立派な弁護士先生を用意してあげるから、裁判で勝って、堂々とハーバードへ行って、STAP細胞発見でノーベル賞よ」。3人の弁護士を揃えて、一体どれほど費用がかかるのだろう。こうなると、係争は短期に終わることはない。不服申立とその審査、懲戒委の処分通告、解雇撤回を求める仮処分申請、一審と控訴審。よほどの金持ちでなければ、個人でこんな豪勢な弁護人の陣形を敷けるものではない。貧乏な研究者だったら、不正を働いて、それが発覚して糾弾された時点で、万事休すで進退窮まって終わりだろう。小保方晴子の場合は、それが決して終わりにはならず、クロをシロにする弁護人が資本主義的に準備され、不正が最終的に確定されず、本人が正当性を言い張って時間稼ぎする余地が作られる。また、本人の思考回路がどこまでもそれを要求し、自律と自制の歯止めが開き直りの循環を停止することがない。恐ろしい風景だ。研究不正の問題で弁護士3人の抵抗だの、これまで聞いたことがない。異常だ。やはり、この問題は、間違いなく格差社会論の視角から考察される問題だろう。

二つ目の擁護論の横溢も、小保方晴子の側に自信を与えている。昨夜(4/1)、TWを見ていたら、また擁護論が噴出して圧倒していた。曰く、理研はトカゲの尻尾切りをしている、小保方個人に責任を押しつけている、個人の問題じゃない、組織の問題だ、小保方はスケープゴートにされた、小保方がんばれ。こんな声ばかりで占領されている。TWでは多数だ。擁護論者によれば、小保方晴子が会見に出て来ないのは、理研が力づくで抑え込んでいるからで、本人は弁明したくてたまらず、本人が口を開けば、不正ではないことが明らかになるのだと言う。信じられないような擁護論がまかり通っていて、空しく途方に暮れるしかない。彼らは、本人が説明責任を果たさず、疑惑から逃げ回っていたことなどは全く目をくれない。小保方晴子が「STAP細胞」を妄信しているように、擁護論者たちは、頭から小保方晴子を<被害者>だと決めつけていて、小保方晴子を批判する者に剥き出しの敵意を向けている。彼らの言い分を聞いていると、「STAP細胞」という「画期的な発見」を素人に近い若い女性がしたことが重要で、論文の不正などはどうでもいい些末な瑕疵なのだ。STAP細胞の存否が不明だとされる現時点では、小保方晴子は保護されるべき存在で、不正を論う者は、若き天才科学者の独創の芽を摘む「愚かな大衆」なのだ。ここには、どうしようもない無知があり、倫理観と正義感が崩壊した精神の病巣があり、脊髄反射的なマスコミ拒絶の本能と衝動がある。擁護論者たちは、小保方晴子のコピペがどんなものか内実を知らず、正確に知ろうともせず、その評価ができていない。

無知で短絡的な擁護論者が小保方晴子にシンパサイズする理由は、彼女が自分に近い存在に映るからだろう。専門的な科学者らしくない、素人っぽい、俗っぽい趣味を堅い仕事場で演出する、すなわち自分に近い未熟な人間が、世紀の科学的発見をする脱構築的アンバランスが愉快だからで、小保方晴子の像に自分自身を投影しているのだ。そして、依頼を受けた弁護士たちが、世間に小保方擁護論が多数いて、「STAP細胞」への支持と信仰があることを、見逃しているはずがない。彼らにとって、これこそが法廷闘争の勝算の(善戦の)見込みの切り札なのだ。今回、理研は中間報告の線から後退し、STAP細胞の存在を、第三者の手によってではなく、自ら検証すると言い出した。例の、小保方晴子から若山照彦に渡されたマウスの細胞が、若山照彦が渡した129系統ではなく、B6・F1マウスだったということを、理研がNHKにリークした時点(3/25)で、「STAP細胞」の虚偽は明白となり、論文も、実験も、何から何までイカサマだと判明したはずだった。それを理研が認めたはずなのに、最終報告(4/1)では、また、一から「STAP細胞」の作製と証明の実験を理研がやるという話になった。しかも、その実験を担当するのは丹羽仁史である。そう竹市雅俊が言明した。丹羽仁史は、今回の不正実験に最も近くで関与し、ネットでは、ES細胞を混入させたのは実験に精通した丹羽仁史ではないかという疑惑まで上がっていた。言わば共犯視されていた人物だ。その丹羽仁史が、今回の調査委の審判では全く責任を問われることなく、シロと断定され、復権するに至った。

丹羽仁史の復権と同時に、理研は「STAP細胞」をも復権させた。小保方晴子と弁護士の狙い目はそこで、復権した「STAP細胞の可能性」を拠り所にして、自己の正当性を言い張り、法的に優勢となるべく陣地を確保・拡大してゆく戦略と思惑なのだ。



by yoniumuhibi | 2014-04-02 23:30 | Trackback | Comments(5)
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Commented by 北岡 at 2014-04-02 19:19 x
小保方晴子さんの代理人、三木秀夫弁護士ってどんな人?
http://www.huffingtonpost.jp/2014/04/02/mikihideo_n_5074380.html?utm_hp_ref=japan

関西で著名な弁護士が即座につくあたり、家族親族だけでなく、もう少し組織的というかなんらかの支援があるのですかね。
Commented by エプロン at 2014-04-02 21:39 x
私は土から金を作ることに成功した。これが、土から作った金である。
作り方は以下の通り。
また、次の5枚の画像が、土が金に変化していく過程の連続写真である。

作り方の論文は肝心の部分がコピペ。
連続写真も別の画像だった。

しかし、
土から金が作れないことが証明されない限り、この金が土から作られたものだということ自体が嘘だったとはいえない。土から作った金の存在が否定されたものではない。
これから1年かけて、もう一度はじめから実際にやってみる。その結果が出るまでは、錬金術は否定されない。

できないことが証明されるまでは、嘘つきじゃないなんて、小学生の屁理屈だ。いや、小学生に失礼だな。開いた口が塞がらないとはこのことだ。
Commented by ヒムカ at 2014-04-02 21:56 x
痛痒なき小保方晴子
「理研幹部」は、狼狽し、たじろいでいるのだろう。
代理人(弁護士)が釘を刺してきたのだから動転させられたのでは?
世間知らずの科学者たちは、途方に暮れて…とりあえずは、約束の記者会見をする以外になかったのではないだろうか?

軽業師のごとく、小保方晴子は「外国法事務弁護士」と「日本弁護士」の両方を依頼人にした。この案件では、特許がからみ、また日米間をまたぐ渉外案件を取り扱う「外国法事務弁護士」を要するのだが…いったい、その着手金とは幾らか?普通の人々が拝む金額ではありませんよ。想像をこえる額になっているに違いない。
※「外国法事務弁護士」とは、巷で言うところの「国際弁護士」(日本では、有能な人材は稀であるという)

その〈じたばた〉ぶりを小保方晴子は、そっと舞台裏から覗いて悪戯な笑みを浮かべているのではないか?

彼女は、まったく無邪気に血を吸ったのだろうけれど、この毒蠅は叩き潰さなくてはならない。
臆病者の怜悧さと「金の力」で大ナタ振るとは卑劣極まりない。実は私は女であるが、小保方晴子は、これは女の風上におけない!
Commented by 長坂 at 2014-04-03 01:20 x
胡散臭いヴァカンティ先生のアドバイスなのでしょうか。日本もとうとうアメリカの様になってしまいました。金さえあれば、有能な(?)弁護士が黒いドブネズミも白いマウスに変えてくれます。おーっと、あんまり書くと強かな悲劇のヒロインにdefamationで訴えられちゃいますね。
Commented by あつい at 2014-04-03 11:19 x
五輪招致で「汚染水ブロック」「アンダーコントロール」
と言った安倍晋三にそっくりな感じがしますね。

一部の人々が異様に擁護している所もそっくり。
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