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内閣府調査の意外な結果。「愛国心が強い」という人の割合はなぜ急低下した?

 内閣府は2014年3月24日、社会意識に関する世論調査の結果を発表した。愛国心が強い答えた人(「非常に強い」「どちらかといえば強い」の合計)は前年 に比べ3.7ポイント減少し、55.3%となった。また「愛国心を育てる必要はない」と答えた人の割合は過去最高の13.2%となった。

 この結果を見て、安倍政権の保守的・愛国的な傾向が否定されたと結論付けるのは早い。愛国心や社会に対する関心、民意の反映など関する調査結果は、経済的環境との相関が大きいことが知られているからだ。

 この調査結果の長期的な推移を見てみると、愛国心が強いと答えた人の割合は1990年代半ば以降、一貫して低下しており、2002年には46.4%まで下がったことがわかる。
 だが2003年以降、数値は上昇を始め、2007年以降は55%前後の数値が続いていた。そして2013年には58%と過去最高を記録するに至っている。
 90年代前半はバブルが崩壊したとはいえ、日本企業の競争力は過去最高水準であり、貿易黒字も大きかった。国民の生活は豊かなので、プライベートな部分に関心が向いていた可能性が高い。実際、社会に関心を向けるべきだという解答も愛国心と同様、低下傾向が顕著であった。

 2000年を過ぎたあたりから日本経済の状況がかなり怪しくなり、2003年にはとうとう金融危機直前まで追い込まれた。デフレが顕著になり生活水準はみるみる低下していった。それと歩調を合わせるように、愛国心が強いという人の割合が増加してきているのだ。マスメディアにおいて「日本企業の底力」というような特集をよく目にするようになってきたのもこの頃からである。

 つまり、愛国心に関する国民の姿勢はかなり現金なものであることが分かる。景気がよく私生活が充実していると、愛国心にはあまり関心が向かず、景気が悪く、生活水準が下がってくると、愛国心が盛り上がってくる。
 今回の調査で民意が反映されていると回答した人の割合は、昨年に引き続いて上昇しているが、この調査項目は日経平均との相関性が極めて高いことが知られている。株が上がり、賃上げも行われ(その実態がどうであるかはともかく)、社会のムードが明るくなってきているので、愛国心が低下した可能性が高い。一部には過度に愛国主義的なムードに嫌気が差したとの見方があるが、それを裏付けるほどのデータはない。

 日本における愛国心は、経済的環境との相関性が高く、純粋にイデオロギーの問題とは言いにくい。調査結果だけを見れば、安倍政権が今後も政権基盤を維持するためには、保守的・愛国的な政策を抑制し、経済成長に特化した方が得策ということになるが、果たして安倍氏はどう判断するだろうか?

ニュースの教科書編集部
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