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調査捕鯨中止の判決は、ムラ社会型日本外交の完全な敗北

国際司法裁判所は2014年3月31日、南極海で行われている日本の調査捕鯨を中止するよう命じる判決を下した。日本政府は受け入れる方針で、今後、南極海での調査捕鯨は中止となる。

 日本は捕鯨問題に限らず、相手国に対して「日本の事情を分かって欲しい」というスタンスで外交を進めることが多い。これは日本人の日常生活の延長といってよい。今回の判決は、相手に対して思いを抱けば、相手は事情を汲み取って返してくれるはずという、ムラ社会的なスタンスが一切通用しないことを改めて認識させる結果となった。

 今回、日本を訴えていたオーストラリアは、日本が行っている調査捕鯨は国際捕鯨取締条約に違反しており、同条約が例外的に認めた科学調査には該当しないと主張してきた。国際司法裁判所はおオーストラリアの主張を全面的に認めた形だ。

 日本の調査捕鯨は、調査という名目で実質的には商業捕鯨であることは、日本を含め多くの当事者の共通認識である。今回の判決はまさにその部分を突かれたといってよい。

 反捕鯨国の主張が根拠のない言いがかりであることは明白である。日本は伝統的に捕鯨を行ってきた国であり、本来であれば、正々堂々と商業捕鯨の正当性を主張すればよいはずだ。実際、アイスランドのように、国際捕鯨委員会に異議を申し立て、商業捕鯨を行っている国もある。

 だが日本は1982年に異議を申し立てたことがあるものの、これを撤回し、その後は異議の申し立てを行っていない。異議を申し立てることなく、一方では実質的に商業捕鯨である調査捕鯨を大々的にやり続ければ、格好の攻撃対象となるのは明らかであった。

 日本が異議を申し立てないのは、米国沿岸での漁業権と引き換えに、異議の撤回について米国と合意したからである。日本の水産業における捕鯨の規模は極めて小さい。異議を撤回しないと漁獲割り当てを減らすと米国から通告され、これを受け入れた。要するにお金の問題だったのである(その後、米国沿岸の漁獲割り当ては年々減らされ、実質的には得るものはなかったといわれている)。

 捕鯨ができなくなると、捕鯨関係者の生活が苦しくなる。しかし漁業全体からみれば捕鯨が占める割合はごくわずかである。捕鯨国としての主張を貫くために漁業全体の利益を犠牲にするつもりはないが、捕鯨関係者の生活もあるので捕鯨は何とか続けたい。「こうした事情を分かって欲しい」というのが、調査捕鯨という形で捕鯨を続ける日本側の本心である。

 国際交渉の場において「こちらの事情を理解して欲しい」というスタンスは基本的に通用しない。何かを提供する代わりに、何かを受け入れるという、条件の交換しか存在しないのだ。しかも相手は、どんな手段を使っても捕鯨をやめさせようと目論む国である。日本側はあまりにもナイーブにすぎた。

 こうした外交上のスレ違いは他の分野でも見られる。靖国参拝問題はその典型といえるだろう。

 米国は、安倍政権に対して靖国参拝の中止を求めてきた。日本側はこれを拒否しなかったにも関わらず、参拝を実行した。これは、米国側の要請が正しいか、正しくないかに関わらず、米国に対してケンカを売る行為である。参拝する方針なのであれば、交渉の場で日本側の主張を行い、米国の要請を拒否しなければ、フェアな交渉相手とはみなされない。日本は米国を出し抜いたとしか解釈されていない可能性が高い。

 これに対する米国の反応が「失望」なのである。しかし、米国のこの声明に対して日本側は何と「理解を求めていく」と声明を出した。米国側は日本がルールを破ったと考えているのに、日本側は「理解を求めたい」のである。最初から対話・交渉が成立していない。

 日本側の「思い」は分かってくれるはずという考えで、結果的にチキンレースを繰り返し、挙げ句の果てに日米開戦となった歴史を我々は忘れてはならないだろう。米国は当時も今も日本側の事情を「分かってあげたい」とは思っていないのだ。

ニュースの教科書編集部
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