2014.4.2 WED
TEXT BY LIAT CLARK
PHOTO BY SHUTTERSTOCK
TRANSLATION BY MAYUMI HIRAI, HIROKO GOHARA/GALILEO
WIRED NEWS (UK)
多能性幹細胞を簡単に作製する方法を示した画期的な論文に不正疑惑が出てから数週間経つが、香港中文大学(The Chinese University of Hong Kong)の李嘉豪教授は、正しい手法を特定できた可能性があると考えている。
同大学で幹細胞研究のチーフを務める李氏は、3月にWIRED UKに対し、1月29日付けで『Nature』誌に発表され、現在問題となっている研究論文を初めて読んだときの興奮について語った(英文記事)。
この研究で提示されたSTAP細胞(刺激惹起性多機能獲得細胞)が衝撃的だったのは、胚性幹細胞と同様に、パーキンソン病のような病気の治療に利用できる可能性がある幹細胞を作製する簡単な方法が示されたからだ。つまり、酸に浸すなどの過度のストレスを与えることにより、成長した動物の提供者(この研究ではマウスだが)自身の血液や皮膚の細胞を初期化(リ・プログラミング)するというのだ。
不正疑惑を受けて、この実験の正当性に関する調査に乗り出していた理化学研究所は4月1日、実験に使用されたDNA断片の結果や画像などを小保方晴子ユニットリーダーが改ざんしたのは事実だと発表した。
一方、論文共同執筆者であるハーヴァード大学医学大学院のチャールズ・ヴァカンティ教授は3月20日、STAP細胞の手法の別のプロトコル(実験手順)をオンラインで公開している。
背中にヒトの耳が生えているかのように見える実験用マウス「耳ネズミ」で有名なヴァカンティ氏は、自分の明らかにした方法は、「研究する細胞の種類にかかわらず、実験室でSTAP細胞を作製する有効なプロトコル」だとわかったと述べている。
ヴァカンティ氏の方法は、『Nature』誌に発表された元論文で述べられている、酸に浸す処理と研和処理(ピペットを使って細胞に圧力を加えてストレスを与えること)のふたつの手法を組み合わせたものだ。ヴァカンティ氏は研和処理について、元論文よりも力を加え、長い期間(第1週目は1日に2回)実施すると説明している。
一方、李氏は、自分の実験結果(現在公開されている手法ではSTAP細胞は作製されないとするもの)を『Nature』に提出し、3月24日に同誌から掲載を拒否されていたが、同氏はその後、ヴァカンティ氏の手法の応用に取りかかった。李氏は自らのすべての実験プロセスを、オープンソース・プラットフォーム「ResearchGate」において、リアルタイムで公開し、ほかの研究者からのレヴューも即座に対応している。
SPECIAL
コメントをシェアしよう