3日未明に津波注意報を出すかもしれないと、気象庁が2日、異例の発表をした。情報が各地に行き渡るよう気を配った措置に、東日本大震災の記憶が残る沿岸各地では、3日早朝の津波を想定して着々と準備が進んだ。

 カキなどの出荷時期を迎えている岩手県山田町の三陸やまだ漁協は、養殖業者らに出漁を見合わせるよう伝えた。漁協の担当者は「注意報が出ても沖から引き返すのに間に合わない可能性がある」。出漁準備をしていた漁師は「3年前の教訓もある。用心にこしたことはない」。

 釜石市や大槌町は、自主的な避難者を受け入れるため、学校の体育館などに避難所を開設。同町は役場近くの高台に避難するためのバスも3台用意した。

 福島県は、沿岸の自治体や消防とのテレビ会議で、津波注意報が発表された場合、住民に海岸から離れるよう呼びかけることを求めた。県災害対策課の小池喜司雄課長は「決して油断することなく、適切な対応を」と話した。

 北海道根室市は2日夕、広報車6台を沿岸部に走らせ、注意喚起した。札幌管区気象台は会見で「津波で流氷が流れ、建物などに被害が出ることもありうる」と指摘。青森県の三村申吾知事は定例会見で、津波を見に行かないよう住民向けに呼びかけた。

 宮城県名取市は、災害FMで「新しい情報が出れば伝えるので、注意して聞いていてください」と繰り返し放送した。

 工場や発電所が集積する川崎市の臨海部では、2日午後8時までに48カ所の防潮扉のうち43カ所が閉じられた。高知県須崎市も市内の防潮扉や水門を閉じた。

 原子力規制委員会は2日午後、原子力施設を運営する電力会社などに、施設への影響の有無について報告するよう求めた。

■時間帯を考慮

 気象庁は今回、津波の予想高がはっきりしない2日夕の段階で「3日午前3時ごろに津波注意報を出す方向」と発表した。未明に突然発表して住民に情報が伝わらなかったり自治体が混乱したりするのを避けるため、事前に注意を呼びかける異例の対応だ。

 同庁によると、遠方で起きる地震の津波は伝わる途中で地形の影響を受けるため、高さの予測が難しい。今回も2日深夜に米国ハワイ諸島の実測データに基づいて、注意報や警報を出すかどうか慎重に判断する予定だった。

 だが、東北沿岸では東日本大震災で護岸設備が壊れたままの地域があることを考慮。住民が発表を知る時間帯も考え、計算上の数値を基にした見通しを先に発表した。各地の津波予想到達時刻も示した。

 同庁は3日午前0時すぎに津波注意報の発令が見込まれる地域を「北海道から関東、伊豆・小笠原諸島」と発表。地震津波監視課は「早さか正確さか悩ましいが、今回は時間帯を考慮して判断した。自治体や海で作業をする人に、いざという時の準備を早めにしてほしいと考えた」とする。