ノバルティス白血病試験:副作用、国に報告せず

毎日新聞 2014年04月02日 21時35分(最終更新 04月03日 00時19分)

ノバルティスファーマの白血病治療薬の臨床研究に関する疑惑について記者会見する社外調査委員会の原田國男委員長=東京都港区で2014年4月2日午後4時58分、喜屋武真之介撮影
ノバルティスファーマの白血病治療薬の臨床研究に関する疑惑について記者会見する社外調査委員会の原田國男委員長=東京都港区で2014年4月2日午後4時58分、喜屋武真之介撮影

 製薬会社ノバルティスファーマの社員が自社の白血病治療薬の臨床試験に関与していた問題で、ノ社の社員が不正に取得した患者の個人情報の中から、重い副作用があったことを把握しながら国への報告義務を怠っていたことが分かった。昨年末に報道関係者がノ社の試験への関与について取材を始めた後、問題の発覚を恐れた営業担当社員が、証拠になる資料を会社から自宅に持ち帰ったり、電子データを削除したりする隠蔽(いんぺい)工作をしていたことも判明した。【河内敏康、清水健二】

 ノ社の社外調査委員会が2日明らかにした。報告書は副作用の報告を怠ったことを「薬事法違反の可能性がある」と指摘した。

 調査委は、元裁判官、元検事、元厚生労働事務次官の弁護士3人で構成。2月から会社幹部ら関係者に事情を聴いてきた。臨床試験について、元裁判官の原田国男委員長は「いわば製薬会社丸抱えで、非常に問題だ」と厳しく批判した。

 報告書によると、社員は、患者データが記載されたアンケートを医師に代わって回収・保管していた。その過程で、臨床試験で重い副作用が患者2人に出たことを把握したが、国に報告しなかった。薬事法は製薬会社が自社製品で死亡や重篤な副作用事例が出たことを知った場合、15〜30日以内の報告を義務付けており、違反は改善命令の対象になる。ノ社は報告書を受け、2日になってこの副作用情報を国側に報告した。

 臨床試験の副作用に関しては、本来は医師が記入すべき重篤度の評価票を、社員が医師の指示で記入していたことも発覚し、調査委は「倫理的に極めて不適切だ」と批判した。

 また、患者に無断でアンケートを回収したことについて「個人情報保護法違反の可能性が高い」とした。

 隠蔽工作は昨年12月末以降に行われていた。社員が試験関係の資料を会社から自宅に持ち帰り、シュレッダーにかけたり、電子ファイルを削除したりして廃棄。東日本営業部長が資料廃棄を促す発言をした疑いもある。事務局を務めた東大医師も今年1月以降、社員がアンケート回収に携わっていなかったことを装う工作を、試験に参加した医療機関に依頼していた。

 ◇社員関与の証拠隠蔽も

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