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僕がイケダハヤトさんを尊敬してる件〜イケダハヤト『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』

 僕ぐらいの年齢になると、自分より年下の物書きが華々しく活躍するといったことも、いちいち嫉妬してたら身が持たないほどあるわけだが、年下の評論系の人のなかで僕がいちばんリスペクトしているのは、イケダハヤトさんである。

 僕が最近ブログを毎日更新している理由はいろいろあるが、イケダハヤトさんの影響というのも、実はその一つなのである。

 「プロブロガー」を名乗り、ネット上でブイブイ言わせているイケダハヤトなる人物がおり、これがなかなか面白い人だと知って以来、イケダハヤトさんのブログ(イケハヤ書店)やTwitter(@IHayato)をちょいちょいチェックしているわけだが、最初はどうしてこの人がネット上で叩かれまくっているのか理解できなかった。

  理解はできないものの、ネットの人たちが皆、イケダハヤトさんを親の仇のように悪しざまに罵っており、それに異を唱える者もご本人以外にはあんまりいないようなので、流されやすい僕は「なんだ、イケダハヤトってしょうもねえヤツなんだな」と思って、一度はフォローするのをやめたぐらいである。情けない。

 でもやっぱり、叩いている人たちのほうがおかしいんじゃないか、少なくともやり過ぎなんじゃないかと思うようになった。

 僕はイケダハヤトさんの著書はまだ『武器としての書く技術』しか読んだことがないライト信者だったのだが、最近『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』という本を読んだので、このタイミングでリスペクトを表明しようと思ったわけだ。

 アンチ・イケハヤ氏の人たちには悪いが、エイプリルフールのネタではありません。

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インプットが評価された時代

 僕が、イケダハヤトさんを尊敬する一番の理由は、何と言っても、そのアウトプットの圧倒的な量である。上の本によれば「1日12時間はキーボードに向かい、文章を執筆・編集」しているそうである(平均すると執筆は1日6時間ぐらいとも書いているが)。この記事(「月間100万PV」を達成するまでにやったこと : イケハヤ書店)によると、年間300万字書いているそうだから、1日1万字ちかく書いていることになる。「毎日1時間しか書かない人間が、毎日10時間書きつづける人間に勝てるわけがありません」とおっしゃっているが、毎日最低1時間は論文執筆に割くということを目標にしていた僕は涙目である。

 僕は東大だったということもあり、「インプットの凄い人」というのはたくさん見てきた。これは別に、受験の暗記が得意な人たちって意味じゃなくて、無茶苦茶たくさん本を読んでるとか、すごい難しい本も理解できてるっぽいとか、いろいろ映画見まくってるとか、そういうインプットの話だ。

 かつては僕もそんな天才たちを見て、「このすごいインプット量を活かして、この人たちは将来、素晴らしいアウトプットを行うんだろうなあ」と思っていた。

 自分で言うのもなんだが、僕のことをそういうふうに思ってくれていた人も、周囲にはいたかもしれない。

 しかし、そういうふうに期待するのは間違いだったと、そろそろ結論を下してもよい時期ではないかと思う。結局そういう人たちの現在を見れば、ほとんど皆くすぶっており、かつての彼らよりずっとつまらない人間に思える人たちが、華々しくアウトプットをおこなっているわけだ。

 そんな世の中は間違ってると言いたいわけではなく、この場合「インプットの凄い人」というのは実はつまらない人間だったのであり、「アウトプットの凄い人」こそが、本当に面白い人間なのだと、考えるべきなのだと思う。

 十年以上前の、オタク・サブカルの世界では、どんな本を読み、どんな映画を見て、どんなマンガを読み、どんな音楽を聴いているかという「趣味の良さ」が評価された。自分の趣味の良さをアピールする個人サイトも多かった。みんながインプットの質や量を争っていたわけだ。シネフィルっていうのは、その親玉みたいな人たちで、たいそう恐ろしかったものだが、今は絶滅状態ではなかろうか。

ブロガーに学問的な厳密さは必要だろうか

 イケダハヤトさんに対する批判は多くの場合、こいつの言ってることは空っぽで無内容とか、なんでも無根拠に断言しすぎとか、こいつ何にも知らない何にも分かってないとか、ガキのくせに偉そうに語るなとか、そんな類のもののようだ。

 裏を返せば、そう言う人たちは、豊富な知識を背景にして十分に根拠付けられた充実した内容の言説を、満を持して発表しなければならないと、そう考えているわけだ。だから多くの人は、アウトプットをおこなうことに躊躇する。

 確かに、文系学者の世界はそんなものだったかもしれない。論文を全然書かないあの教授も、きっと知識は物凄くて、最晩年には畢生の大著を発表するに違いないという幻想みたいなものがあったわけだ。しかし学問の世界でも、そういう言い訳が通用した時代が、そろそろ終わろうとしている。絶え間ないアウトプットを求められているのだ。

炎上する理由

 もちろん、イケダハヤトさんの主張にまったく問題がないわけではない。

 例えば、イケダハヤトさんはかつて「優秀で面白い人ほど会社を辞めていく3つの理由 : イケハヤ書店」というエントリーを書いて、大炎上を巻き起こしたらしい。
 これは、会社をさっさとやめたイケダハヤトさんが、自分の生き方こそ正しい(新しい?)という自信を表明したものでもあると思うのだが、このエントリーを批判した人たちの本心は、「会社勤めを続けてる俺はつまらない人間ってことか?」というものだと思う。そりゃ不愉快だろう。「30過ぎて結婚してない女は性格に問題がある」と主婦が発言するようなものである。

 僕も、こういう生き方の押しつけのような主張は、自分ではあまりしないようにしたい、と考えてはいる。先日そういうエントリーも書いた(生き方の問題について議論することは可能だろうか)。

 しかし、イケダハヤトさんを批判している人たちも、実は、会社に勤め続ける自分のライスタイルを肯定するために、「使えない人間から会社を辞めていく」という無根拠な信念を持っており、しばしばそれを表明したりしながら暮らしているのではなかろうか。だから、そんなに腹を立てるのだ。

 それを考えれば、言いたいことも言えないこんな世の中じゃいけない、「炎上を恐れるな」というイケダハヤトさんの主張も一理あると思うのだ。

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イケダハヤトをリスペクトして悪いか

 僕は別にイケダハヤトさんのように、ブログ収入で暮らしていきたいと思っているわけではないし、断定口調の強い主張で、活発な議論を惹起したいわけでもない(実際、僕の文体は断定を避けてばかりである)。

 しかし、僕にイケダハヤトさんのアウトプット体力の三分の一でもあれば、今頃、博士論文を五本ぐらい(?)書いていたんじゃないかと思い、自分にないものを持っている人として、リスペクトしているのである。

三ツ野陽介
哲学、比較文学比較文化を専攻。

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