聞き手 駒野剛 尾沢智史 編集委員・刀祢館正明
2014年4月2日11時03分
世界の流れに合わせないと生き残れない、日本独自のやり方じゃだめと言われてきた。でも本当だろうか。最近一部で「ガラパゴス」が元気らしい。その逆襲から見えてくるものは。
■いま、もう一度「一生懸命」 秋元康さん(作詞家)
家電大国・日本の象徴だった秋葉原で、夢を失いかけた家電業界の製品群に囲まれて、アイドルグループ「AKB48」は生まれました。偶然とはいえ、日本人が立ち向かうべきものを暗喩しているのかも知れません。
8年前に結成したとき「秋葉原の劇場でアイドルだなんて」と異端視されました。実際、歌も踊りもダメだった彼女たちは3~4年ぐらい売れなかった。
でも僕はこれまでのアイドルを模倣したり、米国のブロードウェーのミュージカルのまねごとをしたりする気は、もともとありませんでした。すでに存在する完成型を見せるのではなく、夢に向かって懸命に成長していく過程を見せたかった。お金を払って並んでも劇場に行って応援したい、そう思わせるものをつくりたかった。
未完成なものを観客がバージョンアップしていくショービジネスは他にありません。「独りよがりのガラパゴスだ」と言われるかも知れませんが、純粋に心に刺さって離れないものは万国で通用するものです。世界標準を狙うんだと肩ひじを張らなくても結果はついてくるし、「ガラパゴスだ」とあえて自らを卑下してみせる必要もない。
2009年9月、ブロードウェーがあるニューヨークでAKBが公演した時のことです。最初は「何だこれは」としらけていた観客が最後は総立ちになった。日本の劇団が米国のミュージカルを忠実に再現しても、こうはならないでしょう。AKBのモデルは海を越え、ジャカルタや上海でも姉妹グループが生まれています。数万人の応募者が集まる人気です。
日本人はいま何をしたらいいのか分からず、立ち尽くしている。勤勉で、手先が器用で、一生懸命やるという美点を、日本人はバブル経済とその崩壊で見失ってしまったように思えてなりません。太陽光を虫眼鏡でぎゅっと集めたときに発火する、あの集中力が消えてしまった。
こんな時代にAKBが支持されるのは、彼女たちの中に、まぶしかったころの日本の姿が見えるからではないでしょうか。
僕に経営論は語れませんが、夢や伝説を忘れていませんか。松下幸之助さんや豊田喜一郎さんのような時代を切り開くパイオニアはもう出ないと、多くの人が信じ込んでいる。でも、町工場の二股ソケットから世界的な電機メーカーが生まれ、紡績機の会社から国産自動車を生み出したのは、まぎれもなく、この国の伝説です。
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