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「名詞の経済」から「形容詞の経済」そして現代は?

人々はモノにしあわせを感じていない

ここ数年、ビジネスを取り巻く環境が大きく変わりました。
それは異論の余地がないことでしょう。

わずか数年前に機能していたことが、あまり機能しなくなってきたり、効果のあるやり方だと言われていることが効果を失ったりしています。
企業がマーケティングのシナリオへの考え方を根本的に変える必要に迫られている。
そう思うんです。

モノが足りない時代は、良い商品を売っていたら、黙っていても売れました。
まだ自動車が高嶺の花の時代は、自動車ということだけで高くても売れたわけです。
そういう時代は新製品や新サービスを導入することで、エネルギーが生み出せました。
商品を中心とした、「名詞の経済」だったわけです。
モノが一通りいきわたり、モノの豊さに仕合わせを感じなくなった消費者に対して、企業は「付加価値」をつけるようになってきました。
マーケティングが必要になってきたわけです。
商品に、デザインという付加価値をつけたり、多機能という付加価値をつけたり、こだわりという付加価値をつけたり、サービスという付加価値をつけました。

美しい○○
デザインがいい○○
材料にこだわった○○
おもてなしの○○

これが付加価値を中心にした「形容詞の経済」です。
そういう時代が長く続きました。
高級輸入ブランド消費なんかは、まさに形容詞の経済で行われていたことです。

形容詞の経済の次は?

名詞でも形容詞でも、重要なのはモノでした。

しかしその後、さらに消費者は進化しました。
その商品のスペックや機能、付加価値で判断するのではなく、その商品を買うことで、

どんな素敵な生活を得ることができるのか?
どんな気持ちのいい時間を過ごせるのか?
どんな問題を解決してくれるのか?

などなど、自分にとってどういうコトを提供してくれるのかが大事なことになったのです。

モノではなくコト。
コトというのは動詞です。
まさに「動詞の経済」になってきたのです。

店もただモノを売っているのではなく、店にいるだけで、楽しいとか癒されるとか、そういう体験を売らなければならない。
格好いいファッションを売るのはなく、ファッションを通して格好いい生き方を売らなければならない。
便利でおしゃれなクルマを売るのではなく、そのクルマがある豊かなライフスタイルを売らなければならない。
ただ単にきれいな会社案内を印刷するのではなく、その営業力アップの強化ツールになる会社案内を提供しなければならない。

そういうことです。
「モノ」ではなく、「体験」を売る、エクスぺリエンス・マーケティングの世界になってきたということ。

安いから、品揃えが多いから繁盛しているわけではない 店で過ごす時間を売っている <那覇のドンキホーテ>

安いから、品揃えが多いから繁盛しているわけではない
店で過ごす時間を売っている
<那覇のドンキホーテ>

ソーシャルメディアの普及は消費行動に影響

そしてここにきて、ソーシャルメディアの発達が新しい消費行動を生み出しました。
消費者は、ほんの数年前まではなかった情報のツールを持つようになった。
SNSといわれるFacebookやTwitter、LINEなどなどで情報を発信し、情報交換し、商品を使い、その評価をするようになった。
今まではマスメディアで発信された情報だけが頼りでしたが、現代はたくさんの情報源があります。
お友達や知人、信頼するブログを書いている人、多くの個人がソーシャルメディアを使って発信しています。

企業からの一方的な発信を信用しなくなってきたということ。
それよりも、信頼できる友人の情報で判断するということです。

21世紀は国家や企業などではなく、個人の力が増大する。
そう言ったのはアルビン・トフラーですが、実際にそういう時代になりました。
個人がメディアになる時代です。

これまで見向きもされなかった個人の発信する情報が、時には世の中に大きな影響を与える時代。
マスという大きな力をもったメディアから、個人のメディアにシフトしつつあります。
そして、この流れは加速度的に高まり、益々個人が社会に影響力を与える時代になります。

だから、この動詞の経済環境では、マーケティングのシナリオへの考え方を根本的に変える必要に迫られているというわけです。

企業主語から顧客主語のマーケティングへ

いい意味でも悪い意味でも、マーケティングというのはある種のいかがわしさをもっているものです。
大衆の行動や心理を操作して、消費をしてもらうという「いかがわしさ」。
こういうキャッチコピーを使えば目を惹くとか、こういうイベントをしたらお客さまが集まるとか、こういうイメージで広告を作るとブランドになるとか。
それはすべて企業から発信するシナリオでした。
マーケティングは、ある意図をもって消費者に仕掛け、そのシナリオを企業がコントロールしながら実施し、狙った効果を実現していくというものだったわけです。

でも現代は、ソーシャルメディアがコミュニケーションをカンタンにし、人々の考え方や行動に大きな影響を与えるようになりました。
生活者がコミュニケーションをコントロールする割合が、大きくなってきた。
だからこれからのマーケティングを考えるうえで、生活者視点のマーケティングが大事になってくる。
そう思うのです。
人々が自ら共感して、そこにコミュニティが発生して、新しいマーケットができていく。
生活者のほうからマーケットを創り出すようなマーケティング。

そのシナリオを考えだすようなことをしなければ、企業にとってたくさんのビジネスチャンスを喪失することになる。
それだけではなく、その視点をもたなければ、お客さまから選んでもらえない、そういう状況になってしまうかもしれません。

 

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藤村 正宏
1958年、北海道釧路生まれ。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。集客施設や企業のコンサルティングを行っている。コストをあまりかけない、誰でもカンタンにできる手法で、圧倒的な成果をあげている。 執筆活動、講演活動もする。現在フリーパレット集客施設研究所主宰。

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