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第五話

トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > よこしまサクラな大戦 > 第五話




 


ちょっと今回は長めです

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05 帝都の商魔

 

「とりあえず、使えるようになったんだな?」
「まぁ、いろいろとタフにしときました」
「・・・ちょっといじり過ぎじゃねーか?」
「いやいや、あのスミレちゃんとカンナちゃんの間に入って生きていられるようにするにゃぁ、あのぐらいじゃないと」
「まぁ、たしかに生きてるがよぉ・・・。」


 眼下のダンス練習風景を見てため息をつく米田。


「こえーだろ、あのカマ!」
「訓練中に居着いた死神からちょろまかしたんですけどね、結構使えるんで持たせたままにしてます」
「し、死神だぁ?」
「ええ、歴とした死神、それも耶麻王のお墨付きで持ってますよ」
「・・・おめぇ、どんな人脈してんだよ」
「いえいえ、不肖の弟子が余りにも三途の川を往復するので、向こうさんから連絡付けてきたんすよ」
「サクラ何度殺しやがった?」
「死にそうでしたけど死んでませんって。」
「あのよぉ、あの娘は、本当に大切な大切な娘なんだぜ?それをわかってるのか?」
「だから、ほかの子と別に、本当に死にそうで死なない訓練をしてますって。ここまでの段階で一月って俺の方が死にそうなんすよ?」


 横島の本気をみて、米田は考えを改める。


「するってぇと、あの娘たちの中で唯一・・・」
「唯一、絶対に死なないように教えました」
「・・・そうか、すまねぇ。」


 二階の客席から練習風景を見る横島の瞳は、どこか優しげだった。


「まぁなんつうか、言葉もねぇよ」
「そうですね、言葉もありません」
「おめぇ、幼女趣味じゃねえんだろ?」
「美女美少女の味方っすから」
「「へへへへへへへへへ」」


『じゃぁ、私の味方、でもあるんですよね?』


 瞬間的に散る二人の男。
 一階から二人を狙撃するマリア。
 衝撃で一階に転落した米田をタコナグリにする花組。
 見事に銃弾をよけてみせたが、そのまま柱に激突して二階席に落ちる横島。
 もちろん蹴りの嵐を加えつつ、恍惚とするあやめ。
 そして、こちらもなんだか嬉しそうな横島。
 そんな姿を見て、なんだかとってもとってもな気分になった花組が、蹴りの嵐に加わり、なんだかいつも通りになった帝国劇場だった。


 どこに行っても、横島は横島であった。

 

 

 


 第一回定期公演最終日、何度も通いつめた客、始めてみた客、すでに定期観覧券発売を求める客等々、ロビーはごった返していた。
 その中で、横島はあらゆる手段で売店を切り回していた。
 各女優の絵姿、講演記念広告、講演記念メダリオン。
 もう、小物ばかりをバリバリ売りさばく。
 制作当初は、会計からこんなものが売れるものかと罵倒されたが、それでも、自分お給料をつっこんでもいいからと言い張って作らせた商品すべてが完売した。
 後日、開場していないときでも制作できた時点で後追い販売するという約束まで取り付けてやっと客に帰ってもらったほどであった。
 その際、会計はどれだけつっこむかで論議となったが、今度は横島が数を絞らせた。
 なぜ、と絶叫する会議会場で彼はこう言った。


「飢餓感をあおれば、次の講演の時にまた飛ぶように売れます」と。


 その着眼点と開発能力から帝都の商魔と言われて久しい横島だった。
 もちろん、彼自身の記憶に寄るところが大きいのだが。


 そんな商品も完売し、歌劇の興奮さめやらない客が帰ったところで、打ち上げが行われた。
 大道具小道具、演奏者指揮者、会場係事務係、そして女優たち。
 みんな家族みたいなものだけに、みんなでお祝いと相成った。
 仕事は違うしすれ違うことも多い人々だが、講演という一つの事柄に関わった事実と、成し遂げたという充実感はひとしおで、誰もがその事実に酔っていた。


「よー、よこしまあんちゃんごくろうさま!」
「よこっち、よくうったなぁー」
「あ、あれあれ、姿絵、俺もほしかったんだけどなぇ・・・。」
「だれのだよ」
「マリアさまにきまってんだろ!?」
「何言ってるんだよ、スミレ様だろ?」
「いやいや、カンナちゃんだって」
「コウランちゃんをわすれんなよ!!」
「サクラちゃんって危険なかわいさじゃん?」
「おまえら、かわいさでアイリスちゃんをこえられるとおもうな!」


 なんだか大道具衆は大盛り上がりであった。
 もちろん、自分の名前を呼ばれた女優さんたちも悪い気はしていない。
 自分の名前がでると、ちょっと胸を張ったりしてしまうのは可愛いことだろう。
 いつも冷静沈着なマリアですら、少しだけ、本当に少しだけ嬉しそうだから。
 小道具も演奏者たちも巻き込んだ女優の好み争いの中、何故かそれに加わらずニコニコしている横島。
 そんな横島をみて、何となく落ち着かない女優組。
 それと無く、誰の絵姿が好みか、聞いてみようと言う話になる。
 当然、隊長であるマリアは止めるのだが、気にならないわけではない。
 こっそりこっそり距離をつめて、そして取り囲んだ。
 それは、ほら、こっそりどころではない。


「「「「「「いったい誰が一番?」」」」」


 きょとんとした顔の横島だったが、懐からそれを取り出して言う。


「次回ロットから絵姿じゃなくて、カラーフォトグラムじゃーーー!!!」


 懐から出されたそれは、不燃性のフィルムで密封されたフォトグラフで、絵姿と同じような構図だったが、鮮明さが段違いだった。
 各の女優を回覧した後、みんながそれをのぞき込んで歓声を上げた。
 今度こそ買う、いいや、多めに作ってくれればその分買う、館内用に作れ、身内に蒔きたい等々など、それはすごい勢いだった。
 大いに盛り上がる身内に対して、米田は謝った。
 申し訳ないが安売りできないのだ、と。
 今回でわかったが、この商品は帝国劇場の切り札となりうる商品で、これを材料にある程度の無理が政財界に利くようにんるだろう、と。
 だから、数を出回らせるわけにいかないし、身内だからと配って回らせるわけにはいかないのだ、と。


 ちょっと意気消沈した周囲に、笑顔で言う横島。


「たださ、お客さんとは一線画した試作品は身内に出回るんだなぁ?」


 そういって周囲に配り始めたのは、一式の写真。
 練習中だったり、発声練習中だったり、休憩時間のお茶中だったり。
 完全に心を許した人間に向ける笑顔の彼女たち。
 それをみて、誰が撮影したかをしる男たちは、嬉しいけど悲しいみたいな顔でよこしまを殴るのだった。

 

 

 

 


 カオス師匠と横島兄さんは、信じられないほど先に行った霊能科学者だった。
 このことを言うと、二人とも苦笑いで否定するけど、その成果である「マリア」はんはうちらの知識で制作は不可能だった。
 隊長はんと同じ名前で混乱するかと思ったけど、何となくうちは隊長はんを「マリア」とは呼べへんかったから、そういう風に使い分けられた。
 表情機構の少ないマリアだったけど、私には、いや、師匠や兄さんにもわかるみたいで、彼女に感情があることは明白だった。
 その感情の元について、感情についての呪式について質問するとカオス師匠はいう。


「お主等の霊力と同じじゃ。魂から発生するものなんじゃからな。」


 儀式と霊力と言霊で設計された「人工霊魂」が元となり、思考と感情を持ったアンドロイド「マリア」。
 横島兄さんの話やと、カオス師匠の昔の良い人が原型らしい。


「うちもメカに呪式を組み込むべきやろか?」
「んー、紅蘭は、いままでの技術とその自信があるんだよな?」
「ん、せや、兄さん。確かにこの帝劇やと蒸気機関は時代遅れ扱いやけど、今まで積み重ねてきた技術的安心と常識の壁はまだ厚いんや。その基礎がなくして新技術はあらへん。」
「そうだよな、だから新技術が安定して誰にでも使える技術になるようにすることは必要だけど、それを無理して使うことはないんじゃないのか?」
「目から鱗や。」


 確かにその通りや。
 試験開発や研究開発はうちのしごとやあらへん。
 その基礎研究の結果から大きなものを作るのが、うちらの仕事や。


「そういうのが技術屋のしごとってやつだろ?」
「せやな、せや! さすが兄さんわかってる!」


 うれしさの余りにうちが抱きつくと、兄さんは自分の両手の位置に困っておった。
 女好きで美女に飛びかかる野獣を自称しとるけど、うちらがこうやって接近すると困ってしまう奥手はんでもある。
 このチグハグなところが可愛いんや。

 

 

 

 

 横島さんに光武はない。
 実際にはいらない、だ。
 強力な霊能と霊力を持つ彼には、光武が邪魔なのだ。
 現に、私たちが展開して追いつめても、罠を張り、闇所から攻撃し、分断し、個別に撃破されていった。
 はじめは卑怯とスミレとカンナは叫んだが、正々堂々とする敵などいないことは私がよく知っている。
 その点でみれば、横島さんのそれは十分訓練レベルで、殺傷を考えていないのが十分わかる範囲だった。
 ただ、私たちの神経を逆なですることまで計算に入れないでほしい。
 ええ、本気で腹立たしいのですよ。
 たとえば・・・・


「そこぉ!!! スネグーラティカ!!」
「た、隊長!! 訓練や訓練や!!」
「だ、だめぇ、マリアさんだめぇ!!」
「よ、よこしまさん、よこしまさん、いきてるぅ?!」
「あーーーーーん、マリアがタダオをころしたぁーーー!!」


 と直撃したように見えたのに、縛炎が消えると、何故かそこには一枚の紙。


「はーずれ」


 と書かれていたりする。
 瞬間、安心した私たちだったけど、ビキっと何かのスイッチが入る。


「ちょっとまじめじゃないですよね、横島先生」
「そうですわね、ちょっと真面目にしてほしいですわよね」
「あー、なんだ、真面目に腹たってきたな。」
「・・・兄さんの小細工は嫌いやないけど、ちとおいたがすぎるんやないやろか?」
「・・・せっかく心配してあげてるのに・・・。」


 そう、本当に腹が立つのだ。


「・・・みんな、いくわよ」
「「「「「おう!!」」」」」


 私たちの光武は、出力全開になった。

 

 

「で、何人いるんだ?」
「そうっすね、あと三人すね」
「指令、現段階で霊力全開です」
「・・・ほぉ、結構でるようになったじゃねぇか。」
「でも、この状態じゃ、あと三人は倒せません」
「今のところは満足すべきか?」
「この状態で満足するには、もう一人いりますね」
「おめぇじゃだめなのか? 横島」
「・・・おさわり許可なら・・・」
「だめだ。」
「俺の霊力源知ってるでしょ? 許可してくれたら・・・」
「だめだ」


 訓練室の指揮所での押し問答は続いていた。


「・・・のぞきぐらなら・・・・」
「だめだ」


 男たちの熱い戦いは続く。
 もちろん、アヤメによるリンチが入るまで。
 男たちは燃え上がっていた。

 

 

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というわけで、この辺までが一気に書けた内容でした。
以後は亀更新になります


2012/04/07 OTR移転版+小修正

 

文字数は4,314文字