STAP論文:極秘研究…捏造生んだ密室 助言役機能せず

毎日新聞 2014年04月02日 05時30分(最終更新 04月02日 08時06分)

 「研究者(著者)が慎重にすべての生データを検証するという当然発揮すべき研究のチェック機能が果たされていなかった」。新しい万能細胞として大きな注目を集めたSTAP細胞論文について、理化学研究所の調査委員会は1日、画像に捏造(ねつぞう)などがあったと認定し、小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダー(30)だけではなく共著者らの責任に言及した。

 不正の舞台となった理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)で、新たな万能細胞と脚光を浴びることになった「STAP細胞」の研究が始まったのは2010年7月。だが、詳細を知る人は発表までわずかだった。CDB創設にかかわった研究者は「すごい仕事があるとは聞いていたが、研究所内でも極秘で進められていた。論文を見て『これだったのか』と(思った)」。科学史上に名を刻む不正論文が世に送り出された背景には、「極秘プロジェクト」という異例の経緯があった。

 小保方氏が、CDBでSTAP細胞の研究に取り組み始めた頃、かっぽう着姿で実験する姿は見られていたが、研究内容を知る人は限られていた。13年3月に研究ユニットリーダーとして採用されても、研究所内の定例セミナーで、発表することはなかった。セミナーは、論文発表前に研究の矛盾点や課題を指摘し合う重要な場であり、若手研究者にとって避けて通れない鍛錬の場だ。

 ある理研研究者は「セミナーに一度も出ないのは極めて異例。(競争の激しい)幹細胞分野で隠したい側面があったかもしれないが、結果として不幸なことになってしまった」と話す。

 11年に博士号をとったばかりでリーダーとなった小保方氏の助言者に、笹井芳樹・副センター長と丹羽仁史プロジェクトリーダーというベテラン研究者がついたことが、秘密主義を加速させたとみられる。

 あるCDB研究者は「秘密主義は笹井先生の方針だった」と指摘する。「極秘にするのが笹井先生のやり方。共同研究者にすら自分のデータを渡さない。その悪い面が出てしまった」。笹井副センター長は、日本を代表する再生医学研究者。研究資金も多く、英科学誌ネイチャーなど一流科学誌に毎年のように論文が掲載される実力者で、表立った批判は少なかった。

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