日韓両政府はいがみ合うのをやめなくては FT社説

フィナンシャル・タイムズ(翻訳gooニュース)2014年3月31日(月)16:30

(フィナンシャル・タイムズ 2014年3月30日初出 翻訳gooニュース) 

オバマ米大統領が両政府の喧嘩を止めさせようとしたのは正しい。

日本の安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領は先週、オランダ・ハーグで開かれた核安全保障サミットを機に会談した。米政府が間に立っての3カ国会談だった。よくぞ会談できたものだと、そこが予想外と思われたこと自体が、ショッキングな事態だった。

日本と韓国は隣国同士で、首相も大統領もそれぞれ就任から1年以上たっているというのに、まだ会っていなかったとは。どうしてそんなことがありえたのか。歴史認識をめぐる悪感情や未解決の領土紛争でもめる北東アジアの空気は、今やあまりにギスギスしている。米政府にとって日韓両国は同地域における最も重要な同盟国だが、両国の指導者たちはろくに口を利くこともできない状態なのだ。

3カ国首脳会談における3者の様子は、多くを物語っていた。日韓の両首脳がつかみ合いになるのを防ぐかのように、オバマ大統領は2人の間に座ったのだ。会談では厄介な争点には一切触れず、3首脳は一定の共通認識が得られているたったひとつの課題について、つまり北朝鮮の核保有がいかに言語道断かを話し合った。この首脳会談の意義は、会談が実際に開かれたという象徴的なものにとどまり、内容的にはこれといった中身はなかった。

どうしてこんなことになってしまったのか? アジアの経済主要国同士の関係が、これほどまでに悪化してしまったのは、実に残念なことだ。報道の自由や政府から独立した機関による権力抑止が機能しているはずの民主国家同士が、これほど敵対してしまうのならば、日中関係にどれほどの希望がもてるというのか。中国の場合はむしろナショナリズムと反日感情を煽っておいた方が、中国共産党にとって好都合なのだし。

日本と韓国は、お互いに幼稚だった。無反省な軍国主義の象徴として韓国では唾棄されている靖国神社に安部首相が参拝したのは、愚かで挑発的だった。第2次世界大戦中に何千人もの女性に性的隷属を強要したと認めたいわゆる河野談話を、政府として見直すかもしれないと示唆したのも、同様だ。

韓国政府も、いろいろと馬鹿げた真似を重ねてきた。日本の初代総理大臣、伊藤博文を暗殺した人物の記念碑建立を、朴大統領が中国に要請したのは、不要な真似だった。朴大統領は、日本軍に所属し戦後も日本政府と近かった自分の父親との間に距離を置きたいのだろうが、そのせいで判断が曇っている。

その一方で日本はあまりにあっさり挑発にのりすぎだ。性的奴隷にさせられ、多くは本当に酷い目に合った朝鮮人慰安婦たちの記念碑がアメリカで建立されるたびに、日本は自分たちの言い分をまじめに主張するべく議員団を派遣する。しかしこの件について日本が共感や同情を得るなど決してありえない。だから、たとえ自分たちの歴史が歪曲されていると感じても黙って耐え忍ぶべき時もあるのだと、日本は学んだほうがいい。

両国のこうした摩擦はただ不愉快なだけではない。アメリカ政府にとっては、両同盟国が仲良くしてくれた方が実際、都合がいいのだ。数年前にはアメリカが仲介してせっかく取り付けた機密情報共有の合意が、日韓両国の対立のせいでダメになってしまった。今回の3カ国首脳会談が明らかにしたように、ほかに何もなかったとしても、こと北朝鮮に対しては日韓は共同歩調をとれるはずだ。

ハーグで日韓両国が築いたものは確かにもろくて心もとないが、それを基礎に今後の関係性を築きあげてくれるよう、期待するしかない。両国の首脳は対立の火に油を注ぐのではなく、争いを沈静化させる責任がある。マスコミも同様で、状況をより細やかに説明する報道が必要だ。韓国でも日本でも、最も下劣なたぐいの愛国感情が危険なレベルにまで高まっており、韓国のマスコミも、そして日本のマスコミも日に日に顕著に、そうしたナショナリズムに媚びへつらっているように見える。

安倍首相は、河野談話の見直しは考えていないと述べて、小さな一歩を踏み出した。朴大統領はそれに応えて、会談に応じた。関係性のもととしては心もとないが、それでも両首脳はここから築いていかなくてはならないのだ。


フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。

(翻訳・加藤祐子)

From the Financial Times © The Financial Times Limited [2014]. All Rights Reserved. Users may not copy, email, redistribute, modify, edit, abstract, archive or create derivative works of this article. NTT Resonant is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

ブログ
   Facebookでシェア
   

この記事の内容に類似する記事

関連写真ニュース

最新の国際・科学ニュース


注目のトップニュース
電車に飛び込み死 客3人巻き添え
山形知事がサクランボかぶり訓示
7年ぶり水準に 昨年度の新車販売
発砲で集会後デモ隊5人死傷 タイ
勉強足りぬ…得意分野の軸増やせ
平等院修理、板裏に父の「伝言」
川崎 逆転で1次リーグ突破に望み
香取慎吾、午前7時までタモリと

東日本大震災におけるNTTグループの取り組み

 
注目の国際・科学ニュース
発砲で集会後デモ隊5人死傷 タイ
露軍撤収は確認できず 米国防相
国籍不明の無人機が墜落 韓国
当局、不明機の最後の言葉を訂正
STAP論文の疑問点6つ…要旨は
理研理事「小保方さん動揺され」
STAP細胞、若山教授が自責の念と
韓国が北の朴大統領非難に反発
gooニュースのおすすめ
安心・安全のコンビニ収納代行って?安心・安全のコンビニ収納代行って?お客さまも事業者も安心して利 用できるコンビニ代行、選択のポイントはいったいどこに?
企業の成長を加速させる最新ICTの活用事例企業の成長を加速させる最新ICTの活用事例ICT導入により飛躍的に成長した企業を厳選し、課題から解決までのプロセスをお伝えします
かしこい生き方のススメ魚にも「心理」がある?京都大学フィールド科学教育研究センター 准教授 益田玲爾さん
理系若手人材が活躍する企業理系若手人材が活躍する企業 IT系、製造系をはじめとするフィールドで活躍する理系若手人材と企業を紹介します
日本デザイン探訪日本デザイン探訪大内塗雛人形の裏話 大内塗×大内人形
女性リーダー/マネージャーが活躍する企業女性リーダー/マネージャーが活躍する企業 日本の産業界で活躍する女性リーダー/マネージャーと企業を紹介します
ロイター銘柄レポートロイター銘柄レポート ・株式投資の初心者からプロ級の方までしっかりサポート
・上場全銘柄の最新詳細データを掲載
ビジネスクラウド総合評価調査の結果は?ビジネスクラウド総合評価調査の結果は?コストよりも品質へ関心が移った今回の調査。総合評価で最高ランクAAAに輝いた8社は。
東日本大震災情報
東日本大震災情報 東日本大震災情報震災・原発事故、被災者の方への最新情報はこちらから
メガサイズ写真で振りかえる1日のニュース

メガサイズ写真をもっと見る

 
投票

あればいいなと思う才能は?

音楽の才能の有無について、そのカギとなる遺伝子の解明研究が行われていると。あればいいなと思う才能は?

  • 音楽
  • 絵画
  • 映像・写真
  • 語学
  • 数学
  • ヒューマンスキル
  • ビジネス
  • 教育
  • スポーツ
  • お笑い
  • 料理
  • 予知・予言
  • その他
写真ギャラリー
写真ギャラリー
世界の出来事
喜びも悲しみもある世界の出来事
おすすめコンテンツ
gooのお知らせ
おもいやり食堂gooヘルスケア「おもいやり食堂」「ヘルシープレート」。ヘルシーなランチプレートをつくってみよう!具だくさんスープも添えてみたり。これだけ盛って643kcal。
いまgooいまgoo「いま」の話題が楽しめる「いまgoo」が登場!リリースを記念して、「驚きニュース万博」を開催中
シム通スマホをお得に!SIMフリー端末、格安SIM情報あなたのスマホライフに使える、役立つ、得する情報をお届けします
災害用伝言サービスから節電サポートまでNTTグループ内の災害対策リンク集で、万が一のための情報を知っておこう。
goo電子書籍特集愛犬を失った彼女を立ち直らせたのは、英一郎(犬)との出会いだった。2人の種族を越えた愛が始まる!?
gooニュースサービス説明