●巻頭特集 頑丈肥料 ケイ酸 VS カルシウム
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ケイ酸は作物を覆う「ヨロイ」、
カルシウムは作物の細胞骨を強化。
気象変動が激しい今、作物を頑強にするケイ酸とカルシウムに注目。「身近なケイ酸・カルシウムを活かす」コーナーより
黒砂糖で発酵スギナ汁
東京・福田 俊
そこらにいっぱいあるスギナで
スギナがウドンコ病に効くということは『現代農業』(2009年6月号など)で知りました。「そこらにいっぱい生えているスギナで、ウリ科野菜に必ず発生するウドンコ病が防げるならやってみるか」とはじめたのがきっかけです。
そのエキスの抽出法は、ただ水に浸けたり、煎じたり、焼酎に漬けたりする方法があるようですが、私の場合、永年、天恵緑汁を作っていて、その原料のヨモギをスギナに置き換えればよいのではと考えました。ですから、天恵緑汁の範疇に入ります。天恵緑汁は野菜を丈夫に元気に育てるので、病気にもかかりにくくなります。
スギナをむしりとる筆者 黒砂糖でエキスを抽出
作り方は、まず4〜5月の朝できるだけ早く生育中のスギナの葉を集めてきます。春から初夏だけでなく、秋にもスギナがはびこっていれば作れます。スギナはハサミか包丁で数cmぐらいに切り刻んで、その重量の3分の1から2分の1の量の粉黒砂糖をまぶして、かめなどの容器に漬け込み、重石をして液が抽出されるのを待ちます。抽出中にハエなどが産卵するとウジが湧くので、容器の上からすっぽりポリ袋などで覆っておきます。
1週間もすると黒褐色の液が出てきます。それがスギナの天恵緑汁です。重石をはずして容器を横倒しにして尻を若干持ち上げると、抽出液だけが出てきます。時間があれば何時間もそのままにしておくと、ほとんどの液を自然に分離できます。液を抜いた粕は堆肥として畑に入れてしまいます。
スギナには3〜16%のケイ酸が含まれる 発酵力がすごい
スギナ汁には粉黒砂糖のミネラルやスギナの葉の中のエキス、そしてスギナの葉にいる天然酵母などの微生物も入っているので、しばらくは自然発酵します。ペットボトルなどに入れて保管する場合、ガス抜きできるよう栓は必ずゆるめておきます。栓をきつく閉めた場合、破裂しないまでも、栓を開けたとたんに液の中から炭酸ガスが湧き上がり、せっかく抽出したスギナ汁の大半が外に噴き出してしまうことがあります。そうならないよう、くれぐれも注意が必要です。
スギナ汁は、ヨモギの天恵緑汁ほどではありませんが、いい香りで、そのまま1年以上常温で保存できます。スギナ単体で作ったり、ヨモギと半々のミックスで作ったりしています。
スギナ汁の作り方(天恵緑汁の場合) (1)スギナをハサミで細かく刻み、粉黒砂糖と混ぜ合わせ、かめに仕込む (2)重石をのせ、かめをポリ袋で覆う (3)仕込んでから約1週間後、液をとる。ペットボトルなどに入れて保存 予防散布で、ウドンコ病を抑える
スギナ汁には、ウドンコ病だけでなく、あらゆる野菜の生長促進剤的な効果があります。生育中の野菜全般にかけると元気に生育します。
使うときは、スギナ汁を500倍に薄めます。6リットルのジョウロなら12ミリリットル入れればよいのです。
キュウリやカボチャなど、ウリ科野菜には、ウドンコ病が発病する前に葉の表と裏にかかるようジョウロで散水します。つるが高く伸びている場合は、葉裏に十分かかるように噴霧器で散布すれば完璧です。ウドンコ病が出てからやるのではなく、出る前にやることが大事なようで、貸し農園の他の区画と比較する限り、予防散布であきらかにウドンコ病の発生は抑えられています。
とはいうものの、カボチャなど収穫期になればウドンコ病は多かれ少なかれ発病します。でも、そのときは完熟しているので、問題なく収穫できます。
(東京都練馬区)
この記事の掲載号『現代農業 2013年10月号』特集:頑丈肥料 ケイ酸 vs カルシウム
炭素は肥料だ/サトウキビでぜいたく堆肥/全国の畑に響き渡るヤマカワプログラム/混ぜてもっと効かせる光合成細菌/借りた畑、私はここから手をつけた/トロ箱栽培 最新事情緑肥、肥料で土壌病害・センチュウを防ぐ/「元肥一発施肥で増収」のワザ ほか。 [本を詳しく見る]『天恵緑汁のつくり方と使い方』趙漢珪 監修 日韓自然農業交流協会 編 ヨモギ、タケノコ、杉の実など、身近な素材を黒砂糖とあわせ、容器にいれて待つこと1週間、発酵して染み出てきた濃緑の液体は自然の精気そのもの。漬物感覚でできる手づくり資材で作物も家畜も人間も元気になる。 [本を詳しく見る]