【萬物相】スポーツ界の暴力

【萬物相】スポーツ界の暴力

 2012年、日本代表を含む女子柔道の国際試合強化選手たちが日本オリンピック委員会(JOC)に告発状を出した。監督・コーチに竹刀でたたかれたり、時には足げにされたりして夜も寝られず泣いた選手は一人や二人ではない、と訴えたのだ。園田隆二監督は辞任したが、堂々としていた。「私も現役のころは毎日、体罰を受けていた。熱心な指導を暴力だと言うのはおかしい」。同じころ、五輪柔道金メダリストの内柴正人・元九州看護福祉大学女子柔道部コーチが懲役5年の実刑判決を受けた。指導していた柔道部の女子大生に対する準強姦(ごうかん)行為のためだ。また、高校のバスケットボール部員が顧問に体罰を受けて自殺するという事件も起こった。

 1カ月後、JOCが五輪強化指定選手約1800人を調査したところ、12%が「セクハラ・暴力・いじめを受けていた」と答えた。韓国では12年に行われた大韓体育会による選手への調査で、29%が暴力を、10%がセクハラを経験したと回答している。日本の学校・スポーツ界における暴力の根源は軍隊文化とメダル至上主義だ。韓国もその二つにとらわれている。競泳界のスター、朴泰桓(パク・テファン)は中学3年のときに韓国代表になり、泰陵選手村に入ったが、これは「一族の栄光だった」という。ところが、間もなく泰陵選手村を飛び出し、個人トレーニングのためのチームを結成した。「体罰などの暗い面、メダルと新記録に縛り付けられる現実、硬い雰囲気が嫌だった」と語った。

 「大韓ニュース」は1962年、海外のカーリングという競技について「一生懸命ほうきで掃いている人たち。家でもあのようにきれいに掃除するのでしょうか」と伝えた。大韓カーリング連盟が発足したのは1994年、カーリング女子韓国代表チームが初めて世界選手権に出場したのは2002年だった。09年に京畿道庁チームができた経緯は、漫画「外人球団」のストーリーそっくりだ。大学のカーリングサークル出身者、幼稚園の補助教師、けがでリハビリ中だったスピードスケート選手らの寄せ集めだった。

 カーリングはメダルが期待されている種目ではなかったため、選手たちは泰陵選手村近くの飲食店で食べ、安宿に寝泊まりした。外国人選手が捨てたブラシパッドを拾い、洗ってまた使った。ブラシを見た人々に「窓ガラスの拭き掃除をするの?」と聞かれることもしょっちゅうだった。京畿道庁チームはそのまま韓国代表になり、12年の世界選手権でベスト4に入った。ソチ冬季五輪では8位に終わったがベストを尽くして韓国でカーリングのファンを増やした。

 カーリング女子韓国代表は一昨日のカナダ選手権で再びベスト4入りした後、退団願を提出した。コーチの暴言やセクハラに耐えられなかったという。だが、コーチ側は「しっかりしろ」と声を荒らげたことはあったが、身体接触はなかったと言っている。韓国はまだ国家が率先してエリート選手を育成する「スポーツ国家主義体制」の国だ。メダルの色や数、順位こそ国力の表れだと信じている。その思い違いから抜け出せない限り、スポーツ界を覆う暗雲は晴れないだろう。

呉太鎮(オ・テジン)首席論説委員
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【萬物相】スポーツ界の暴力

right

関連ニュース