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この世界がゲームだと俺だけが知っている 作者:ウスバー

第二百三章 愚か者の物語

最近、年度が変わる時期のせいか、予定が詰まりすぎてて怖い
特に土日は月末までもう……
お誘いは嬉しいけど、交際費も馬鹿にならないんだよなぁ

ということで、せめて連載くらいはオフピーク更新!
 翌日。
 俺たちは洋上の人になっていた。

 邪神を倒すためには、全ての邪神の欠片を破壊する必要がある。
 そこで、邪神大戦の映像記録最終話を見たという真希からの情報で、もう一つの欠片があるという未実装エリア、南の孤島に向かっているのだ。

 ちなみに、船はミツキが手配した。
 ゲームでも船自体はあったが、それはプレイヤーが自由に行先を決められるものではなかった。
 しかし、ミツキが交渉すればものの数分で話がまとまり、俺たちは南の孤島まで送ってもらえることになった。
 本当に、この国におけるヒサメ道場とミツキの人気はとんでもない。

 甲板に立って海を見ていると、後ろから真希が声をかけてきた。

「そーま。その……あの時は、ごめんね」
「あの時って、俺を偽者だって言った時のことか?」
「……うん」

 猫耳の件でちょっとしたすれ違いのあった真希だが、その誤解はすぐに解けた

「わたし、本当はそーまはそーまだって、分かってたはずなのに……。
 だけど何だか、そーまが急にわたしの手の届かない、遠いところに行っちゃったような気がして……」
「いや、いいよ。俺も、知り合いが急に猫耳になっちゃったら、動揺すると思うしな」

 猫耳の件でちょっとしたすれ違いが生まれてしまったが、幸いにして真希の誤解はすぐに解けた。
 俺と真希は長い、本当に長い付き合いだ。
 念のため、ということで、真希に元の世界の記憶にまつわる質問をしてもらって、俺がそれに答えていく、という形式を取って俺が本物かどうかの証明とさせてもらった。

 もちろん、従兄弟同士で長い時間を共に過ごした間柄。
 一個だけ、「わたしが小学校低学年の時にキスをした相手は?」というよく分からないものがあったが、ほとんどの質問に俺は正答した。
 たぶん、あれで真希の不安も完全に拭い去ることが出来たと思う。

「お、着くぞ。……ほら、真希」
「……うん!」

 真希に、手を伸ばす。
 その手を元気よく握って、俺たちは並んで新たなる冒険の舞台を見据えて、

「……あ、れ? ど、どうしてだろ? 変な幻影が見えちゃってる。
 ソーマとちんちくりんが手をつないで楽しそうにしてる幻が目にこびりついて……。
 は、早くデスブリンガー取ってきて、あの幻を消さなくちゃ!!」

 後ろから聞こえたヤンデレった声に、あわてて手を離したのだった。



「ふむ、なるほど。これが、来るたびに構造が変わるという不思議な島、ブラックカースアイランドか」
「勝手な設定つけるなよ。ここで生活してる人もいるんだぞ」

 サザーンの妄言にそう返したものの、確かにそんな名前をつけたくなるほどのどんよりとした雰囲気の島だった。
 瘴気、とまで言うと大げさだが、黒い霧のようなものが島全体にかかっていて、どことなくゲームのダンジョンを思わせる。

「……とにかく、話が出来る人を探そう」

 しかし、ここで立ち止まっていても仕方ない。
 俺は先に進もうとして、


「――んきゃ!」


 何かちっこいものにぶつかった。

「あ、悪い!」

 サザーンに注意するために後ろを向いていたのがよくなかった。
 小さな子供にぶつかってしまったらしい。

 だが、考えようによっては好都合だ。
 この子に道を教えてもらおうと俺は下を見て……固まる。

「え? ネイ、ティア……?」

 しりもちをついた少女の姿が、邪神大戦映像記録で見た封印の一族の少女とダブって見えた。

「もしかして君は、封印の一族の末裔?」
「え? あ、あの……。ご、ごめんなさい、違います」

 しかし、女の子はびっくりしたような目をして、首を振り……。

「……そうか。そういうことだったんだ。もう、――してたんだ」
「真希?」

 見たことがないほどに真剣な顔をした真希が、俺に、いや、女の子に向かって歩み寄る。 

「そういうことって、何だ? この子が、どうしたって言うんだ?」

 不吉な予感に駆られて俺が尋ねると、真希は薄く笑った。

「そーまは、不思議には思わなかった?
 あれだけの力を持った勇者アレクスたちが、どうしても邪神を倒せなかったのか」
「確かに、不思議ではあるけど……」

 それが今の状況とどう関係するのか。

「そーまだって、映像記録の最終話を見れば分かるよ。
 それには、どうしようもできない理由があったの」
「理由って、何なんだよ」

 焦らされるのはもうたくさんだ。
 俺が声を荒くして尋ねると、真希はそっと、俺の隣に立つ少女を、幼い女の子を、示して……。


「――それは、邪神の正体が ょぅι゛ょ だったからだよ!」


 とんでもないことを、言ったのだった。




 それから、俺たちはその ょぅι゛ょ に案内され、 ょぅι゛ょ の家にあがらせてもらっていた。
 しかし、突然聞かされた真実に、俺たちはいまだに戸惑っていた。
 いや、はっきり言ってしまえば、どうしても信じられない。

 だが、辻褄だけは合っている。
 いくらアレクスたちがたぐいまれな戦闘力を持っていても、邪神の真の正体が ょぅι゛ょ であれば戦えるはずはない。
 しかし、だからといって……。

「あ、あの、粗茶、ですけど……」
「あ、ああ。ありがとう」

 こんな ょぅι゛ょ 、いや、幼い女の子が、邪神の正体だなんて、そんなの信じられるはずがない。
 すると、俺の視線に気付いたのか、幼い女の子が自らあいさつしてくれた。

「あ、あの、みなさん、はじめまちて!」

 ……噛んだ。

「う、ううぅ。あ、あらためまして、ディズ・アスターちゃんです!
 み、みなさん遠慮なく、ディズ・アスターちゃんって呼んでください!」

 ……いや、え?
 ディズ・アスターちゃんって呼んでくれって言われても……。

「ええと、じゃあ君は、本当に邪神なのか?」

 俺が尋ねると、ディズ・アスターちゃんの目にうるうると涙が溜まっていく。

「う……。じゃ、じゃしんって、いわないでください……」
「わ、悪い! そんなつもりじゃなかったんだけど」

 一体何が地雷なのか分からない。
 俺はあわてて謝った。

「あ、わたしこそ、ごめんなさい。
 で、でも、わたしだって好きで邪神なんて呼ばれてるわけじゃないんです。
 名前だって今はディズ・アスターちゃんってなってますけど、昔はレディスタスって呼ばれてて……」
「レディスタス!?」

 それは確か、この世界の唯一神の名前だったはず。
 いや、そういえば結婚イベントの時、魔王がディズ・アスターのことを唯一神と呼んでたのは、まさか……。

「はい。でも、人の世が乱れ、神を敬う気持ちが薄れた時、わたしは厳格で恐ろしい側面、暗黒神ディズ・アスターちゃんとしての顔を持つようになったんです」
「そう、だったのか……」

 平和な世の中には優しい神が、乱れた世の中には人を叱ることが出来る恐ろしい神が必要なんです、とディズ・アスターは語った。

「そして、それは今も変わっていません。
 一番神への信仰大事にしなくてはいけないはずの神社ですら、神様へのお供えをつまみ食いするし、おみくじで商売するし、お賽銭で金融業を始めるし、境内の掃除はポーズだけで同じところしかやらないし、ほんとダメダメです」

 神社ってまさか……あの巫女ェ。

「もちろん、神社だけじゃありません。魔物との戦いに人の心は病み、家では夜も電気は点けっぱなし。
 ゴミは分別しないし、残業はサービス残業ばっかりでバグ取りは社員にやらせる。
 こんな世の中では、神様だって心休まりません!」

 まるでエコ大使みたいなことを言う人だ。
 いや、エコ大使って何かは知らないけど。

「そういや俺も、ゲームを一晩中つけっぱなしにしてたことが結構……」
「あ、ゲームはいいんです! ゲームは頭の体操になりますし、単価が高くて市場の活性化につながりやすいですし、ガンガンやるべきです!」
「……あ、そう」

 俺が相槌を打つと、ディズ・アスターちゃんは拳を握りしめて、アニメ声で言った。

「――そういう人々の闇が、わたしという邪神を作り上げたんです!
 だからわたしはやむなく覚醒したわけで、うかつに復活しちゃったわけじゃないんです!
 分かりますか、これ!」
「ああ。分かった」

 このディズ・アスターちゃんの明らかに偏った憤り。
 これは、きっとあれだろう。


 ――猫耳猫スタッフが冗談で適当に作った設定が、実体化しちゃったってことだ!


 どうせあの猫耳猫スタッフのことだ。
 きっとこんな会話を繰り広げていたに決まっている。

「どうせなら邪神の正体、 ょぅι゛ょ にしねぇ?」
「おーいいねー。じゃあょぅι゛ょ女神様が怒りによって闇落ちしちゃったことにするか」
「最近サビ残ほんとひどいもんなぁ、そりゃあ ょぅι゛ょ も怒るわ」
「あははははは! ……はぁ、仕事すっか」

 みたいなね!!

「って、ちょっと待てよ。邪神の本体は西に封印されてるんじゃなかったのか?
 それに、それじゃあ邪神の欠片は一体何なんだ?」
「あ、封印はだいぶ前に解けたので、人里離れたここにやってきたんです。
 あと、欠片の話ですが、あー、うー。そのせつは、大変ごめいわくをおかけして……。
 あれはわたしのその、老廃物なんというかというか……」
「つまり、垢とかそういう……」
「う……。せめて、抜け殻とかそういう風に言ってくださいよぅ」

 ロリ声で言っているが、抜け殻に殺されかけた身としてはたまったものじゃない。

「あいつらが人間を襲ってるのは、やっぱり邪神化の影響が?」
「い、いえー。おそっているというか、その、欠片になると本能が全開になっちゃいますから」
「え? いやでも、キルビームとか凄い飛んできたけど」
「そ、それは……何かを見ようとすると、つい集中しすぎて光線が出ちゃうんですよ。
 今も、ほら」

 ――ピューン!

 瞬間、とんでもない速度で俺の横を光線が通り抜け、俺は冷汗をかいた。

「ち、ちなみに、ジェノサイドウェーブは?」
「わたし、興奮すると声が大きくなるので……」

 はずかしいです、と顔を伏せるディズ・アスターちゃん。

「な、なら、死んだ相手の装備を見せつけるのは?」
「むー! 落し物は、ちゃんと届けなきゃいけないんですよ!」
「で、でも! あれ! あの、たくさんうねうねしてる触手は?」
「しょ、しょくしゅじゃ、あーりーまーせーんー!!
 あれはオシャレですー!! ドレスのひらひらみたいなヤツですー!」

 両手をブンブン振り回しながら力説するディズ・アスターちゃん。
 もうついていけない。

「……じゃあ、ええと、とにかく。
 ディズ・アスターちゃんは人間滅ぼそうとか思ってないってことでいいんだな」
「はい。あたりまえですよぉー。これからみなさんがサビ残をやめ、神へのお供えものをつまみ食いすることがなくなったら、きっと欠片たちもおとなしくなると思います」
「……帰ったら、王様にそう言ってみるよ」

 俺は力なくそう答えて、首を振った。
 予想外の、本当の予想外の流れだが、これで邪神の脅威は去ってしまったようだった。
 なんとなく釈然としないが、猫耳猫の世界じゃこんなものだろう。

「じゃあ後は、元の世界に帰る方法と、それからこっちに戻ってくる方法さえ見つかれば……」
「あ、それなら何とかできるかもしれませんよー!」
「え?」

 俺の独り言に反応したディズ・アスターちゃんを見ると、彼女は小さい胸をむんっと張っていた。

「忘れてませんか? わたしの超・能力! 次元の(ディメンション)破壊者ブレイカーを!」
「それって公式の名前だったんだ……」

 俺が呆れる間に彼女はディメンションブレイカーを発動させ、そして、あっという間に、

「はい、じょうずにできましたー!」

 次元の穴を開けてしまっていた。
 そこに広がっていたのは、懐かしき場所。

「……俺の、部屋?」

 呆気にとられる俺に、ディズ・アスターちゃんは言う。

「はいー! もちろん、何度でも行き来できますよ!」
「え、ええー!」

 驚く俺をしり目に、仲間たちはもう、すっかり乗り気なようで……。

「…ソーマのへや。みたい」
「ふむ。向こうの両親にご挨拶をしなければいけませんね」
「あー、また部屋散らかってるー!」
「これが、ソーマさんの部屋!」
「あのベッドに、いつもソーマが……」
 ――ニタァ。

 俺の狼狽なんてまるで無視して、そんな風に口々に騒ぎだし……。

「あーもう、じゃあみんなで行くぞー!」
「「「「「「おー!」」」」」」
「って、なんでディズ・アスターちゃんまで返事してんだよ!」

 結局俺たちは、全員で次元の扉をくぐったのだった。




 こうして……。
 ゲーム世界に飛ばされた俺の冒険は、幕を下ろすことになった。

 だけど、俺たちの物語は終わらない。
 今度は仲間たちと一緒に、ゲーム世界と現実世界を股にかけた大冒険が、ここから始まるのだ!
『この世界がゲームだと俺だけが知っている』完!!

web版未収録の書き下ろしを加えた最終第四巻は3月31日に発売です!
ウスバー先生の次回作にご期待ください!


















……はい!
まあここまで全部嘘(エイプリルフール)なのは当然なんですが、気付いているでしょうか?
全部嘘だということは、本編だけでなく、前書きも……


では、これから人の像使って邪神、もといデュナ様にリベンジしなくてはならないので、失礼します

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