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第六十一話

トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > よこしまほら(旧なろうアップ版) > 第六十一話



ひさしぶりの旧よこしまほらです。




 

 

 動画サイトにアップされた「銀虎」という音楽ファイルは、物凄い勢いで広まった。

 

 

 映像のない、音声だけのファイルであったが、それが何かは、結構直ぐにばれた。

 近畿剛一、本名、堂本銀一のメインボーカルなのだ、声でわかるというファンは多かった。

 が、背後に唸るようなコーラスが入っているのが解らないというファンも多かったが、この唸りは別の角度で有名だった。

 唸りの元こそ、先日放送された特番で、踊るGS撮影班を守ったGS助手であった。

 何度も聞いていると、実にしっくりとくる声と唸りで、これを録音した方も、そのままにできずにアップしたのだろうという話だ。

 

 唸りに実は軽い破魔の力が込められており、環境音楽としても人気があがっている。

 これを無償でDLできると聞いて、中小GSが損害賠償を起こしたが、音楽で出来る破魔など札いらずの物件であり、逆に虫除け程度の話であるとGS協会が公認したため、中小GSは逆境に立たされることになった。

 もちろん、意図的なものではないが、業界的な救済が必要という事になり、計画が前倒しで行われることになった。

 

 

 無作為の自縛霊慰撫である。

 

 

 これは発生金額自体低いものであるものの、高価な霊具を必要としないために採算性がよく、利益率が高いため、中小GSでも好評となり、不満は大きく削られてゆくことになった。

 そう、さほどの問題もなく、そして激動もなく、GS業界自体の再編が自然に進み始めたのだった。

 

 

 

 自然、事の中心にいた横島霊能事務所には情報は集まるし、地域霊の慰撫という地味な内容の割には積み重ねの少ない仕事のため、多くのGSが短期研修を受けに来ては色々と後ろ髪が引かれ帰るのを拒む様子。

 

 まぁ、麻帆良の現状を考えると、研修時の給料は良いし美少女ばかりの事務所内もいい。

 GS自体、尊敬される方向性の土地柄なのは横島GSの努力の結果としても、魔法使いよりもGSの方が上と見ている視線は、自尊心をくすぐられる。

 加えて、事務所で行われている独自のトレーニングは目を見張るものがあり、目から鱗の日々だとか。

 所属事務所や師匠筋に嘆願して、横島事務所へ移籍を希望するGSが絶えない。

 

 まぁ、虎こと、タイガー虎吉もその一人である。

 

 交換研修と称して横島事務所に来てはいるが、その実力はすでに一戦級であり直接霊能ではないが、前衛を維持できる実力も備えている。

 外交駐留しているナギも認めるところで、十分に「バグ」であると保証している。

 本人だけが一般人気分なのだが。

 

 

「タイガー、そろそろエミさんとこもどらんのか?」

「もう少し自信がほしいですじゃ」

 

 

 と、こんな贅沢な会話が出来るのも、横島事務所に馴染んでいる結果だろう。

 加えるならば、タイガー自身が「セクハラの虎」から卒業していると横島も認めている証拠でもある。

 なにしろ、親御さんから預かった大切なお姫様たちである。

 同級生のナンパや研修GSのナンパなど一切を遮断している横島が、タイガーには自分の除霊助手などをチームに組み込んでいるのを見れば当然なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 銀虎の影響は徐々に浸透し、麻帆良でもよく聞くようになってくると、魔法校舎などでも流れるようになり、低級霊の大半を音楽で払う事が出来ている状態になった。

 これは除霊楽器に匹敵する除霊革命だ、なんて騒ぐ人間は、実のところほとんどいない。

 威力としては破魔札に劣る霊具、採算性の低い仕事になるからだ。

 ただ、虫よけ効果としての期待値は高く、麻帆良内でも多く流されている。

 で、その期待をしていないところで流されないため、意図的な霊道が出来上がり、逆に除霊の効率を高める結果になっている。

 この活躍を夏美は羨むが、それ以上に尊敬の視線を向ける存在、そんな歪んだアホ垂なんか一人しかいないだろう。

 

 ネギ=スプリングフィールド、その人である。

 

 

 もともと、自分のできない事を出来るというだけで尊敬するという条件反射があるうえに、全世界的に有名とか、世界的偉業という修飾に弱く、自分に取り込んで力にするという妄執も大きかった。

 が、その実施によって得られる力より、周辺からくわえられる魔改造の方が恐ろしいという事を身をもって知ってからは、鳴りを潜めていたのだが、ここに来て先日の霊団除霊が印象深かったようで、霊能を鍛えたいという欲求が持ち上がってきたようであった。

 

 しかし、と少年は思う。

 彼の知っている霊能は、横島忠夫であり猿神師匠であった。

 

 正直に言えば、壮絶に死ぬか静かに死ぬかの差があっても「必死」という状態には変わりないと。

 霊能力とはそういうモノであるという説明は聞いていたし理解もしていた。

 が、ここで、彼は一つの打開策を思い出した。

 そう、心の共にしてペンパル、安倍晴明その人であった。

 もともと閉じたオカルトである魔法世界にも巫術は浸透しており、ネギ自身も経験したことのある分野であったため、かなりの手ごたえを感じていた。

 というわけで心の友への手紙へ、陰陽道への熱い想いを書き綴ったところ、「○・占事略決」なる書物が送られてきたわけだが、内容は難解にして奇怪、正直手に余る内容であった。

 相談しようにもプロである横島に相談すれば、即座にPTAが発動することは判り切っていたし、そうなれば再び魔改造会議となるだろう。

 誰かに相談したい、しかし、魔改造は嫌だ。

 

 そんな悶々とした悩みの中、一つの天啓をえる。

 

 そう、関西呪術協会の長である詠春の義父、近衛近衛門その人こそ西洋魔法使いではあるが、出自は関西。

 彼に相談が出来る、そう確認をもってネギは学園長を直撃したのだった。

 

 

「学園長!お時間をいただきたいんですが!!」

「ひょ? どうしたんじゃ、ネギ君」

 

 

 この出会いは必定、この邂逅は運命。

 なにしろその場には、なぜか横島忠夫と美神令子がいたからだ。

 

「な、なんで横島さんが・・・?」

「ん? ああ、うちの娘の卒業後の扱いとか進路とか、表はいいとして裏は色々と相談せんとならんし、美神さん経由で表のオカルトの線も太くしたいからなぁ」

「ネギ君も何か相談があるの? ・・・って、それ」

 

 ネギが手にしている書物を見て、美神の目が細まる。

 それが何かを知っている、そう言う顔であった。

 瞬間、優秀な少年であるネギは思い出した。

 ペンパルが対抗できない人物、美神令子と言う人間の素性を。

 

「・・・それ、○・占事略決じゃない、懐かしい」

「へ?」

 

 

 聞けば、出来ん坊主であった晴明の手引書として作ったのが「○・占事略決」だとか。

 

「そう、それで霊力の勉強をしようってことね。さすが我が子、判ってる選択ね」

 

 どうやらやばい改造はなさそうだと安堵したネギであるが、ジトーと言う目で横島に見られていることに気付いた。

 

「あ、あのぉ、横島さん。なんでしょう、か?」

「ネギ、おめぇ、また自分最強計画立てて、『先生』忘れてないか?」

 

 瞬間、電撃に撃たれたかのようなリアクションのネギ。

 まさに横島の言葉が図星だったからだろう。

 

 

「俺やらナギやらを見習う前に、新田先生を見習え。お前の修業は最強の魔法使いになることじゃなくて、この麻帆良で先生になることじゃなかったのか?」

 

 すでに倒れそうであったネギは、その言葉の衝撃で床に倒れ、ゴロゴロと転がり始めた。

 

「あああああああ、何度目、何度目なんだ、ぼくはぁ!! 何度も何度も何度も皆が教えてくれていたのにぃぃぃ!!」

 

 転がるネギを冷静に見ていた美神は、さすが横島君の弟子、と感心していたわけだが、その視線すらさげすみに感じているネギは落ち込みまくっていた。

 

 

「横島さん、学園長、美神さん。僕は、ぼくは…」

 

 

 がっくり落ち込んだネギの頭を撫でる横島。

 

 

「まだまだ若いんだから、間違ったぐらいで落ち込むな。これから間違えなければいいんだよ。ただ、先生って職業は無茶苦茶多くの人の人生を背負っている仕事なんだ。だから真剣に全身全霊で立ち向かう必要があると俺は思うし、新田先生を見ればわかるだろ?」

「・・・はい」

 

 ぱんぱんと埃を払い、ネギを覗き込む横島。

 その瞳におちゃらけの色はない。

 

「まずは先生をやりきって、前を向け。それが終わってからでいいだろ、今は」

「はい!!」

 

 まっすぐ見つめ返すネギを再び撫でて、そして学園長に向き直った。

 

「…とはいえ、心残りがあっては仕事も手落ちになるかもしれませんから、学園長もネギの勉強に付き合ってあげてくれませんか?」

「わしはそれでいいが、横島君は協力してくれんのかのぉ?」

「俺が協力すると、PTA総出になりますよ?」

「・・・それは勘弁してほしいモノじゃのぉ」

 

 魔法世界の有名人大集合スペシャルは、さすがに学園長も困るらしい。

 ともあれ、一人前の魔法使いへの修行優先、自分修業は後回しの姿勢を再び確認したネギは、○・占事略決を近衛門に預けたのであった。

 

「学園長、よろしくお願いいたします」

「うむ、よかろう。休みや休憩時間いなら相談に乗るぞい」

「はい!」

 

 

 

 

 以降、暫く。

 新田教員の元に日参し、教師たる者の心得や心構えを学びに行くネギの姿が有名になったのであった。

 

 

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