きょう、多くの若者が社会人としての第一歩を踏み出す。ほぼ全員が高度成長もバブル景気も知らない。厳しい就職活動の中、働く意味を真剣に考えたうえで職場に加わる。その意欲を引き出し成長させるのは上司や先輩の仕事だ。
日本生産性本部が毎年春と秋、その年の新入社員を対象に仕事に関する意識を調査している。その中に気になる結果がある。
2013年春、新社会人に「今の会社に一生勤めようと思うか」と聞くと55.5%が「はい」と答えた。しかし秋の調査では34.3%まで減っている。会社に人生を託そうとしていた5人のうち2人が心変わりをしたことになる。
春に「はい」と答える人の割合がほぼ一貫して増える一方で、秋は08年から減少傾向にある。最初の半年で失望する割合が増加しているのだ。「仕事を通じてかなえたい夢があるか」という質問も、半年で「はい」から「いいえ」に転じる比率が高まっている。
同じ会社に一生居続ける時代ではないとしても、仕事そのものに若者がやる気を失うのは、社会の活力をそぐ。不幸なすれ違いを減らすヒントの一つが調査にある。「自分のキャリアプランに反する仕事を我慢して続けるのは無意味だ」と考える新人が13年秋、過去最高の42.4%に達したのだ。
今の学生は長い就職活動で自己分析を重ねる。「こんな長所があり、こういう仕事で生かしたい」とスムーズに答えるべく練習も積む。その結果、会社も自分の夢や長所を理解して採用してくれたと思う学生が意外に多いという。
しかし本当の向き不向きは時間をかけ、様々な仕事を通じて見つけるものだ。そうしたことを丁寧に説いてはどうか。目の前の仕事にまず取り組むことの意味を、きちんと解説するのも効果的だ。
新人の希望にも丁寧に耳を傾けキャリア形成になるべく生かしたい。これは若者を甘やかすということではない。合理的な説明と、きめ細かいやり取りが若者の焦りや失望を防ぐのではないか。