浅倉拓也
2014年4月1日03時01分
面接場所に指定されたのは、東京・渋谷のスターバックスコーヒーだった。
2012年、渋谷教育学園幕張高校3年だった林由季さん(19)は米国の名門エール大に出願した。面接はアドミッション・プロセス(入学者選抜)の一環。相手は同大の卒業生だ。
現れたのは、ジャケット姿の大柄な男性。経歴と顔はインターネットでチェック済み。日本の大学教授で、日本人だが米国生まれらしい。力強い握手であいさつし、英語で語りかけてきた。「あなたの学力を試すのではなく、あなたがどういう人か知りたいんだ」
好きな本を尋ねられ、オルダス・ハックスリーのSF小説「すばらしい新世界」をあげると、教授も読んでいて、「あなたの幸せの定義って何だろう」と問われた。話題は中、高と打ち込んだテニスにも及び、厳しい上下関係や理不尽なクラブのルールを変えたことを話すと「それはいい」と喜んだ。温和でよく通る声。店の雑音も気にならず、すぐに1時間が過ぎた。
合格発表の日。ウェブサイトに「ウエルカム」のメッセージが現れた。
定員約1400人のエール大には毎年、世界中から約3万人が出願する。基礎学力を筆記で問う全米共通の大学進学適性試験(SAT)や高校の成績に加え、志望動機や共通テーマの作文、複数の推薦状などが必要だ。面接は希望すれば受けられる。出願者には自分を売り込む貴重な機会だ。
選考を担うアドミッションオフィスでは、約25人の専門職員が、担当地域の出願者全員の書類をじっくり読み、会議を重ねる。
「選考は9月中旬から3月末まで続き、この間は1日12~14時間ほど働く」とキース・ライト副部長。「テストで学力はある程度分かっても、創造的な才能は測れないからね」
林さんを面接した教授によると、報告は人物像が伝わるよう詳細に書く。「例えば『緊張のせいで、ストローの包み紙をちぎり続けていた』とかね」。ポイントの一つは、主体的に行動する人物かどうか。「高校の嫌いな面は」と聞き、「それを変えるために何をしたか」と続ける。「エールはリーダーとなる人物を出したい。指示待ちの子より、新しいことに挑戦する、ある意味『いたずらっ子』を求めている」
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