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第五十三話

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 まぁ、恐喝外交というものになれている奴らが、自分たちの武器がいっさい通じない相手に出会った瞬間というものを見ることが出来たというか何というか。


 横島君自身がすでに最高責任者たちの覚えがめでたい関係で、彼らはいっさいの宗教的手札を得ることが出来ない。
 加えて言えば、神父の通称である唐巣会長も破門済みなので意味がない。
 さらに言えば、この会場で洗礼を受けているのは僕だけときている。


「み、ミスタ西条。この交渉は破棄するつもりで開かれているのかね?」


 交渉役の枢機卿の言葉に肩をすくめた。


「我々は、謝罪をしてもらえると思っていたのですが?」


 口火を切ったのは本人とは思えない口調の横島君。
 ばっと広げられた彼の書類には、英文で書きつなれられた作戦内容とその目的、そしてその指示者とその所属、加えて最上位者の名前までびっしりと書かれたもの。
 もちろん、彼らの上司の名前も入っている。


「我々は、謝罪をしてもらえると思っていたのですが?」


 全く同じ言葉で切り伏せた横島君。
 教会陣営は真っ青の顔で黙りこくっていた。


「譲歩も謝罪もしない。それが教会側の姿勢と理解しますがよろしいか?」


 もちろんそんなことはないのだが、彼らにそれに答える権限はない。


「ならば、貴方たちの神に許しを請えばいい。・・・ああ、もちろん、この前飲み会で話をしたときは、絶対に許さないって言ってたぜ?」


 かかと笑ってその席を立った横島君の気配が完全に消えるまで、教会陣営は青い顔色のままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 横島君が席を立った後、急に息を盛り返した教会陣営は、技術供与と霊具引き渡しを声高に叫び始めた。
 どれだけの面の皮だと大笑いした私をにらんだが、私は睨みかえす。


「あんたがた、どれだけ恥知らずなんだ?」


 懐からだしたマイクロレコーダを再生させて目の前に転がす。
 そこには、声高な叫びの中で横島君を罵倒する言葉が随所に吹き込まれていた。


「あんたが怖がっていた横島君は、あんたら自身が神に許しを請え、っていったんだぞ? それもせずに金をよこせものをヨコセだって? どこの強盗だ?」


 それでも、無礼だ破門だ悪魔だと叫ぶものだから、本当に腹の底から笑ってしまった。
 そして懐から書類を引っ張り出す。
 今回技術提供が行われた際に発生するリベートと癒着企業の一覧だ。
 これをみても騒げるのか? この破戒坊主ども。
 少なくとも、オカルトGメンの全世界支部で把握している情報だ。


 今は「いろいろな」理由で捜査は止まってるが、なぜか急に一斉検挙に動くかもしれないなぁ? そうだろ、西条君。


 私の言葉に苦々しくうなずく西条君。


 この中で唯一、破門のカードがきくであろう彼に食いつかんばかりの視線が集まったが、彼もまた異常な感覚を持つ人間だ。
 というか、最高責任者から直接「大丈夫」と保証を受けている身なので、まぁ、安心できるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 実に穏便に対外対応はすんだ。
 政府的にもGS教会的にも麻帆良的にも、世間的な被害者としての立場が世界的に認められたというわけだ。
 加害者は一部宗教組織となっているが、某トップが謝意を示していることで、世界的な流れが決定したといえる。


 まぁ、奥の手の従者軍団を引っ張り出さないですんだのが今回の幸運だともう。


 実際、あそこまで強硬でなければ、ある程度の情報を計画していなかったわけじゃないんだけど、「目の前」で行われていた茶番を「直接みていた」俺たちとしては態度を硬化せざる得なかった。


 なんつうか、相手のバカさ加減もすごかったんだけど、夏美ちゃんの「隠業」のレベルの高さが恐ろしすぎた。
 まさに目の前に戻ってきているのに、全く気づかれないとは。
 クーフェイも楓も心底驚いていて、まるで歴史的な偉人を見るかのような視線で彼女を見ていたし。
 実際、「隠業」を解いた瞬間、その存在に気づいた西条やら唐巣神父が、あまりの精度の高さからスカウトに走り、教会関係者をおいてけぼりにしたほどだった。
 まぁ、夏美ちゃんは自分の影が薄いせいだと拗ねたが、有様を見て唐巣神父がため息をついた。


「・・・君たち師弟は、なんで自己評価が低いのかねぇ?」


 ありゃ? 俺までこみですか?


「・・・横島君、君たちのチーム全体で、外殻団体登録でもいいから。オカルトGメンに参加してくれんかなぁ?」


 うわ、西条さん、えらく鋭角な切り口で来た。
 それなら報酬面も特別扱いで契約できるし、麻帆良から離れなくてもいいし、美神さんも満足いく関係に出来るかも・・・。


「綾瀬君や村上君みたいな優秀で素晴らしい若手実力者と契約できるなら、形態にこだわっていられないんだよ、ウチは」


 目の前の教会関係者を無視して話を転がし始めた西条さん、なんか、すげぇ。


 真っ青というよりも真っ白になって固まった彼らを無視して、一時間ばかりワイワイしてから俺たちはその場から去った。


 交渉? 無理無理。


 すでにこっちの姿勢は見せてるし、その方向性を示しているんだから。
 というか、強盗の方がまだ理屈がわかるって相手だぜ?

 

 

 

 

 

 

 


 何というか、倒れるかと思った。


 教会で、今回の交渉の結果を聞いた私は、本部がなにもわかっていないことを、なにも反省していないことを理解してしまった。
 世界全体が自分たちの配下にあると、本気で考えているのだ、と。


 確かに今の神魔構造の根幹は、教会が基礎部分にあるだろう。
 故に、真に存在する「神」があり、その神を信奉する自分たちが正義だという主張もわかる。
 が、その「神」と直接友誼がある「信徒以外」が存在するだなど、どのように理解しているのだろうか?
 彼が「神の契約」を受け入れれば、神は喜んで信徒のすべからずを「破門」するであろう事を。
 そんな彼を口汚く罵倒したり、彼の側にいる人間を脅したり、と全く理解できない。
 明らかに組織の内側で増長し、自分の力を誤認しているタイプの人間だろう。
 逆説的に彼らのようなタイプは、自分たちの組織以外に強者が居ることを認める事が出来ない。
 が、神に祝福されていること事態は「能力的に」理解できるので、正面から相手が出来ない。


「・・・つうわけで、申し訳ありませんが、いろいろと苦労をおかけすることになると思います」
「わかりました。横島君もご苦労様ね?」
「・・・その優しさを宿したその胸で慰めてくれれば!!」
「わたし一択に絞ってもらえれば、いくらでも慰めてあげるわよ?」


 正直、彼を囲い込めるなら、それもありだし。


 私の一言で血の涙を流して悔しがる横島君。
 はじめは不気味な、と思ったけど、結構可愛いところあるわよね?
 刀子なんて、本気で狙ってるみたいだし。
 ・・・しずなは、違うわよね?

 

 

 

 

 

 


 日本の政治家のシステムの中には、「トカゲのしっぽ切り」システムが本気で存在しているように感じる。
 ちょっとでもマズイ事をしたら退陣、なんてすぐに騒ぐけど、政治家がそんなにきれいなものじゃないことを知っている立場からすると、全くのナンセンスだと思うのは頭が回るようになった証拠かもしれない。


 何でこんな話になったかというと、ネット上のEUサイトで某宗教の幹部が総退陣になったというニュースが飛び込んできたからだろう。
 横島さんからも先日の話は聞いていて、そんな面白格好いい場面だったら、私も見たかったとシロねぇと一緒にゴロゴロしてしまったぐらいだった。
 美神事務所に研修に来ていたけれど、本日は座学という時間に電話で聞いた話だった。
 携帯はスピーカーモードで、美神さんたちも一緒に聞いていたんだけど、落ちが付いたところで大笑い。
 楽しい夕べ、となったわけだ。


 で、帰ってきてからネットをチェックしていたら、ネギが後ろからのぞき込んでいて、そして大騒ぎ。
 そう、某宗教幹部の総退陣、という情報に。


 私たち日本人だと、いや、日本の文化になれている人間だと、不祥事>辞任というのは結構安易に発生することだと思っていたんだけど、超級鋼鉄系保守組織である某宗教においてはあり得ないそうだ。


 美空ちゃんにも聞いてみたが・・・


「あ? わたしエセシスターだから」


 と、軽く流されてしまった。


 それはさておき、組織幹部を入れ替えるというのは、まさに身を削ぐ行為だとのことで、向こうの組織の言いたいことも明確だろうというのがエヴァちゃんの意見。


「・・・感慨無量ですわ」
「なにがよ、いいんちょ」
「あの、アスナさんと、政治談義、それも国際政治に関する話が出来るなんて。一年前なら鼻で笑っていますわ」


 あー、私も別人だっておもうわよ。
 というか、一年前の私はいわば封印された私だったわけだし。
 あの状態でよく進級してたわよね、私。
 あり得ないんだけど・・・。


 まぁ、私自身お話はさておいて、SHRが始まる前まで、私たちの国際状況分析は大いに盛り上がっていた。


 おいてけぼりの人間も少なくなったのは、誰のおかげやら。

 

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