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第五十一話

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 人界の鬼札、横島忠夫の面目躍如。といったところだろうか?


 僕の出張中に始まった麻帆良侵攻は、手元に届く情報を追いきれないほどの早さで推移していった。


 まず始まったのが、日本国内の秘匿部署による麻帆良接収計画の発動。
 じつはこの計画の大本は、コメリカのFEDAによる極東戦略の一環であり、コメリカ国内や各国にある魔法使いたちの町への侵攻モデルケースとなるはずだった。
 が、呼び水となる部隊の遅延により、逆に政治的反撃を喰らい、次々と命令系統が分解されていった。
 オカルト犯罪と分類される範囲はオカルトGメンが魔法世界の出張要員達とともに追いつめ、非認定部署で権力を振るっていたもの達は、今後の関係を断ち切ることで政治取引を行い組織を完全に分解させてしまった。
 日本国内で分解されていないのは現地スタッフのみであり、すでに詳細動作に至るまで把握されてしまっていた。


 もちろん、中には開明的な研究をしている組織もあったそうだが、得ている権力が余りにも黒すぎるので全ては研究停止になったはずである。


 そんな騒動の一夜を越えて未だ動いているのが、未だ策動の大本で被害を免れているモノ達だった。


 つまり、コメリカであり、そのコメリカをも動かすことを決意した存在だった。


 まぁ、某宗教の中心だと言えば分かりやすい。


 彼らにはどうしても欲しいモノがあったのだ。


 それは、あの「横島君」がノリと勢いで作ってしまった新霊具であった。
 適正のある者が神楽音曲で霊波を紡ぎ、除霊を行うというもので、威力としてはネクロマンサーの笛に劣るものの、その適正範囲の広さは大きく上回るとされているものだった。
 これを科学的に考察したとされている「百合子レポート」では、本霊具を単一の宗教で独占することの危険を高らかにうたいあげており、宗教や風習の違うオカルトの弾圧や宗教の違いを大本とした戦争が再び発生するであろうことを予期していた。
 だからこそ、「某宗教」にだけは渡してはダメだ、と。


 なんというか、横島君のとばっちり、と思わなくもないが、麻帆良侵攻の表向きの理由は「魔法世界からの異宗教移民流入の防止」なわけで。
 真実を知っていると、どうにも納得がいかない話だともいえる。


 で、この麻帆良侵攻の背後にある事実にぶち当たった日本国内政治家や反コメリカ国家は大いに騒ぎだした。
 表だって抗議し始めた国や、非公式ルートで「真実」を求める声明を出した国やら、アジアの大国を自認する某国などは、西側大国の謀略によるアジアの混乱と大騒ぎとなった。


 なんにせよ、今のところは麻帆良及び日本の国自体は被害者扱いであり、表向きの加害者はコメリカ、となっている。
 国内汚職やら陰謀野望にまみれた政治家官僚にあふれていようとも、踊らされた被害者、と。

 

 

 

 

 

 

 


 学園長からの緊急召集で来てみれば、麻帆良を囲い込むように軍勢が集まっていた。
 すでに戦争だな、と思わなくもなかったが、よくよく考えれば超の田中軍団の方が数は多かったな、と。
 むろん、向こうは実弾を発射してくるのだが、事前に横島事務所経由で配られた「矢避けの加護」符は実弾でも証明されている。


 ここのところストレスの多い魔法先生軍団は大いに乗り気であり、集団戦闘訓練に明け暮れていた魔法生徒達も鼻息が荒い。
 が、誰もが引くほどに盛り上がっているのは横島事務その一部だろう。


「はふーはふー、旦那様、旦那様、うち、もう、しんぼうたまらん・・・・」
「ただおただお、あれ、くっちまっていいんだよな? 死なない程度に全滅させていいんだよなぁ・・・?」


 両手でゴスロリ狂人と真祖の二人を抱きすくめながら、どうにかこうにか押さえている横島さんだが、そろそろ限界が近そうだ。


「が、学園長、そろそろ、戦いの猟犬を放っていいっすか!?」
「あー、いいじゃろ」
「いけーーーーー!」


 声もなく音もなく、二つの陰は森の中に消えた。


「つうわけで、戦闘開始じゃ。各員、同士討ちには気をつけるんじゃ。あと、後詰めで横島事務所がおるから、おもいっきり飛ばしてくるんじゃ!」
「「「「「おう!!」」」」」


 おやおや、刀子さんやシスターシャークティーまで目をぎらつかせて散っていったよ。


「マナちゃん、遠距離狙撃を頼む」
「わかったよ、横島さん」


 私は通信用に得たアイテムを片手に、持ち場へ走る。

 

 

 

 

 

 

 


 実質上、見える戦力全てがおとりだ。
 じゃぁ本隊はというと、麻帆良と侵攻部隊を挟んだ反対側に潜んでいたりする。
 夏美をチャンバーに入れた状態の逆天号が。

「艦長、C20方面で穴が発生しました」
「魔鈴さん、照準できる?」
「・・・はい、総数12、捕捉しました」
「夏美、呪縛」
『・・・・!』


 アスナがチャンバーに入ると凶悪無比の攻撃になるが、夏美がチャンバーに入ると回避不可能な個人攻撃の呪いになる。
 正直、その呪いは「急におなかが痛くなり、一歩も動けなくなる下痢になる呪い」とか「家のコンロがつけっぱなしになっている気がする呪い」とか「同僚からBLっぽい視線を常に感じる呪い」とかとんでもないものばかりだが、絶対にカカる呪いばかりだとエミさんを驚愕させていたのは記憶に新しい。


「楓さんから『逃走兵を纏めた』との報告です」
「愛子さんに喰ってもらってくれ」
「了解」


 通信端末を操作するアキラ。


「艦長、そろそろ夏美が限界っぽい」
「了解、じゃ、次弾装填!」
「了解ネ! クーフェイ、チャンバーはいるヨ!!」


 瞬間、ストーミング効果が薄れ、逆天号がレーダーに写った。
 そう、何の前触れもなく、巨大な空中戦艦が現れたのだ。


「艦長、実体弾の砲門が、こちらに向きました」
「了解。・・・艦内全員に通達! これより変態機動戦開始だ、ハーネス強度最強で待機!!」
「「「「「了解!!」」」」」


 さーて、初公開の超機動戦モードだ、その驚きで戦意を叩き折るぜ?


『さー、いくあるよ!!』


 珍しく言葉をしゃべる逆天号。
 それ以上に信じられない現実が彼らを襲うことになるとは、夢にも思わなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふはははははははは!!
 まるで、人がゴミのようではないか!!


 掌握し取り込んだ魔法が、我が身と共に敵を吹き飛ばす。
 なに、殺しはせん。
 骨折すらしておるまい?
 そうさ、かなり気を使っているからな。
 ほれ、あれだ。
 おもちゃは大切にせねばならん。
 末永く遊ぶためにはな!!


 ふははははははははは!!


「エヴァちゃん、のりのりやなぁ」


 ん? 忠夫か。何だ、私の勇士を見に来たのか?


「んにゃ、死にそうなバカの回収」


 ん? おかしいな、気絶はさせても怪我はさせてないぞ?


「あんな、エヴァちゃん。極寒の中気絶してりゃ、凍死するって」


 ・・・ああ。


「変態機動中の逆天号から、死にそうな人マップが送られてきたんや」


 見せられた地図では、確かに私の周辺の動かないバカども大半が死にそうだというサインになっていた。


「忠夫、このエリアの死にそうサインの色が違うが?」
「それ? ああ、夏美ちゃんの呪いやな」


 思い出して本気で背筋が寒くなった。


 あれ、私にもレジスト出来ないし。
 一般人になんて恐ろしい。


「じゃぁ、私は戦場を変えた方がいいか?」
「んにゃ、この地域制圧を続けてくれ。バカの回収はバックアップの茶々姉ズでやっとくから」
「ん、ではたのんだぞ」


 あの人形達、外での活動のために忠夫の魔力線を繋げたら、おもしろいぐらいに人間的になったな。
 うむ、おもしろい。
 本当に忠夫はおもしろいな。
 ふふふふ、絶対にはなさんぞ、忠夫。

 

 

 

 

 

 

 


 結局、正面の砲撃装備の部隊全員が投降してきた。


 まぁ理解できるよ、うん。
 実際あり得ない光景が続いたからね。
 なにしろ、自走砲やら戦車やらの砲弾を、「戦艦」が「動作」だけで受け流したのだから。
 あれを無理矢理説明するとするなら「化剄」とよばれる中国武術の技法だろう。
 手や足や体の動きで攻撃を受け流す技法のことなんだけど、まさか戦艦の羽や砲身の動きやアンテナで砲弾を受け流すなんて、誰が信じられるだろうか?
 正直、僕らも声を失って見入っていたもの。


 あんなのを見せられたら砲科の人間は白旗を揚げるほかないだろう。


「あー、私は、麻帆良の魔法教師、瀬流彦ともうします。基本、彼らはでたらめですので、これ以上の抵抗は無駄とご理解ください」


 まるでブリキのおもちゃのような感じで、ぎぎぎっとこちらを向く兵士達。


「投降していただけるなら、無碍な扱いはしません。投降していただけませんか?」


 彼らは涙を流してうなずいた。
 視線を逸らした向こうでは、空中戦艦が「カモンカモン」としているようだった。
 僕でもあの光景を見たら戦意喪失だね。


 というか、近接砲弾やらロケット弾をどうやってそらすのか、本気で聞きたいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 周囲展開していた自衛隊の部隊全てを捕縛した魔法先生達は、実にやり遂げたという顔だったが、茶々丸と雪之丞が愛子と共に連れ込んだ人間をみて息をのんだ。


 そう、とらえられ、眠らされていた人員の半分までが魔法陣営であり、さらに言えば、麻帆良に勤めていたことのある元魔法先生だったのだ。


 元々はMM本国からの警備増員だったのだが、教師である部分が余りにも疎かすぎたので、学園長が送り返した人員でもあった。
 いわゆる魔法至上主義、というやつだった。


 そんな人間が、なぜ、この集団、コメリカ海兵隊と共にあるのか?


「ま、読めなくもねぇだろ?」
「そうじゃな」


 顎髭をしごく学園長の隣で、エヴァは苦笑い。


「体のいいスケープゴート、か」
「そんなところじゃろうな」
「で、そのノウハウで、他の魔法使いの町を襲う、と」
「あからさまじゃな」
「ということは、このバカどもは、仮想敵(アングレッサー)兼道案内か?」


 雪之丞の問いに、周囲は苦々しい顔になる。
 魔法秘匿、それは名目上の話ではあるが、ここまで浸透されるのはおもしろくない、と。


「ふむ、MMのイリーガルが、母国を失って野良犬になったといったところかのぉ?」


 存外きつい言いぐさだったが、野良犬発言はうなずける魔法先生達だった。


「このままコメリカに引き渡すのもおもしろくないのぉ」
「とはいえ、麻帆良で飼うのは反対ですね」

 学園長の言葉に応えるはマフィア先生、ではなく、神多羅木教諭。


「まぁ、発動体の破壊と封印というのが基本では?」

 ガンドルフィーニの台詞に魔法教師たちはうなずくのだった。

 

 

 

 

 

 

 


 横島たちは周囲警戒をしていた。


 コメリカ海兵がいることは予想していたが、現在の乱戦状態であれば、簡単に進入できる、乱戦で攪乱できる、そして目的のものを手に入れられる、とうわけだ。
 一応、開発設備のすべてを魔法球に放り込んで、さらに愛子空間に入っている関係上、ほぼ入手不可能なのだが、となるか、というよりも一般人にすら手を出しかねない相手であると認識しているので、武闘派の事務所員で虱潰しに迎撃をしていた。


 さすがにプロではない魔法先生たちは警戒がゆるんでいるが、マナの補助で警戒がゆるんでいない横島事務所は、次々に捕縛者を増やしていった。


「なんつうか、多すぎやろ、宗教」
「あはははは、こりゃ、ドンだけ必死なんだよって、かんじっすね」


 避難の関係上、逆天号に乗鑑した一文字は苦笑いだった。


「横島さん、そろそろ最高責任者様にご連絡なさった方がいいのではないですか?」


 弓のそのひと事に、顔をゆがめる横島。
 実は、すでに連絡を入れているのだが、予想を斜めゆく答えが返ってきたのだ。


『つまり、よこっちは私の加護を受け入れてくれるんですね? 聖人(セイント)よこっちの誕生ですね?』
『まちや、きーやん。そりゃ抜け駆けやろ!』


 てな会話があったからで。


 まぁ、向こうもこの騒動の見物に飽きれば介入してくるんだろうけど、今のうちはじっくり対応しなければならない。
 なにしろ、某宗教の象徴様は、なぜか自分のところの信者がイジられるのを喜んでいらっしゃる。
 そんなわけで、しばらくは魔法球隔離だ、と苦々しい横島の視線の先に、山積みで呻いている怪しげな男たちを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 


 MMの弱体化に起因する騒動の最高潮こそが、今回の麻帆良侵攻であると歴史書にはかかれるだろう。
 表向きにはそうしなければならない。
 政府関係者の指示による暴走、権益を求めた海外からの圧力。

 

 そうでなければならない。


 ・・・はずだった。


 はじめに漏れたのは、某宗教関係者の収監に関する情報だった。


 不法入国、銃刀法違反、不法侵入、暴行、施設破壊。


 あり得ない罪状の羅列であったが、防犯ビデオに残る姿や、オカルト警備システムに残った証拠は動かし難く、証拠として完全だった。
 もしこれが西欧諸国であったなら、宗教的圧力でどうにかなったかもしれない。
 しかし、それは「日本」で起こったこと。
 宗教の坩堝にして、もっとも権威がない世界。
 圧力をかけるまでもなく、情報が流出し、世界を席巻した。
 名誉毀損だ、偽情報だと声を上げる某宗教関係者だったが、事件背景や作戦目的なども明らかにされるうちに宗教的な攻撃が行われているわけではないことが判明した。
 そう、某宗教と言っているが、某島国の固有派閥や大陸北部の派閥を指しているのではないのだ。


 バカをやったのは、宗教本部のある一部。


 この指摘をどう受け止めるかは、様々であろうが、基本的に保守的である宗教関係者は大きく動いた。
 修飾や回りくどい表現を抜粋して、直接的な表現に意訳すると・・・


『悪いのはあいつらだ。わいらは関係あらへん』


 実にすがすがしい尻尾切りだ。
 一時的な保身を計れるだろうが、近未来的にみればその発言は終了宣言と言っていい。


 ・・・自分自身の。


 事態からの保身をはかった者たちは、多く国家機関からつけねらわれることになる。
 そう、彼らは保身のために組織を裏切ったのだから。
 いや、彼らは、保身のために信教を裏切ったともいえる。
 むろん、神を裏切ったわけではない。
 が、信教を裏切ると言うことは、生きる立場を捨てる事と相違無い。
 それこその強権であり、それこその強欲でもあったのだ。
 が、その力が通用しないとみるやいなや、その力と心中するならまだしも、生き残ることを選んだ彼らは、安らかな生涯を失ったと等しい。

 

 

 

 

 

 

 


「誘導したとはいえ、こりゃひどい話ね」
「この結果を見通していたのに、その一言がでる羽川さんが怖いっす」


 麻帆良の事態収束とお礼に直接EUオカルトGメン本部まで挨拶にきた横島は、にこやかで邪気のない笑顔で恐ろしいことを言う羽川つばさ女子を恐ろしいモノをみるかのようにみていた。
 隣で立っていたおキヌちゃんは、名状不明な笑顔だったわけだが、その種類の特定を横島もあきらめていた。


 羽川つばさに挨拶にいく、という時点で、逆天号の出動は決定していたが、実は同行者はほとんどいなかった。
 茶々丸とエヴァ、そしてアスナだけであった。
 まぁ、横島事務所の人員露出を避けるという意味ではこの三人を連れ出すのが一番なのだが、これに今期のエルダーシスターとして前期のエルダーシスターに、と挨拶に行きたいと言い出したのは氷室キヌ、その人であった。


 先日お披露目で挨拶したばかりで張ったが、この件について協力を求める際に名前を借りているので、渡りに船と行ったところだろう。


「あら、横島君だって色々とやってるでしょ?」
「いえいえ、人道の真ん中をいく横島忠夫ですから・・・」
「あら、おもしろい冗談」
「またまた~」


 あはは、おほほ、と笑う二人の横で、氷室キヌは強い力を発した。


「・・・横島さんは、羽川さんと仲がいいですね?」


 それも、見当違いの方向に!!


「ま、まって、まってくれ、おキヌちゃん!」
「ふふふ、とーっても仲がいいのよ、わたしたちぃ~」
「このおばはん、ここぞとばかりにいい加減なことを!!」
「あらあら、こんなに若くてスタイルのいい女性にひどい事言うわぁ・・・ないちゃおうかしら?」
「横島さん、最低です・・・・」
「誤解やーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 


 まぁ、横島さんがこういうノリなのはいつものことだし、いいんだけどね。


「(アスナ、諜報は?)」
「(霊的なのと魔法的なのは全部つぶしたわ)」
「(機械的なモノも全滅させました)」


 いやいや、このオカルトGメンってとこ、伏魔殿もいいところよ。
 視覚聴覚霊覚あらゆる面で盗み見てる目が山盛り。
 本当は音楽霊具を持ってこようかという話もあったけど、中止して正解ね。


 ・・・あ。


「(どうした、アスナ)」
「(いや、この新しい視線、麻帆良(うち)の学園長じゃないかなーと)」
「(・・・む、本当だな。よし、茶々丸、めくらましだ)」
「(了解です、マスター)」


 なぜか指をブイの字にした茶々丸さんが、「ふんっ」と言う気合いとともに、虚空にそれを突き立てた。
 瞬間、「ぎゃーーーー」という怪物の叫びのようなモノが聞こえたせいか、盛り上がっていた三人が、何事かとコチラを見た。


「ああ、気にするな。視覚をとばしてのぞき込んでいたバカに、めつぶしをしただけだ」
「・・・あ、あのね、一応、本部内保安のための監視の目もあるから、手加減してくれると嬉しいかなぁ、なんて思うんだけど」
「ああ、それなら大丈夫。たぶん無許可の妖怪視線を潰しただけですから」
「はい、あの視線は日本の妖怪大将のものです」


 私と茶々丸さんの言葉で納得がいった横島さんは、すでに気にしていないようだけど、氷室先輩と羽川さんは疑問が残っているようだった。


「えー、妖怪大将というのは、うちの学園長のことです。あだ名の理由は容姿です」


 私の説明で納得のいった二人だった。

 

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