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「WOOD JOB(ウッジョブ!)―神去(かむさり)なあなあ日常―」(日本映画):都会育ちのモラトリアム青年が放り込まれた厳しい林業の世界

 のっけから残念なニュース。昨日(31日)に内閣府から、4月1日付けで外国特派員協会(FCCJ)に公益法人認可の内定が出たと言うのだ。噂はあちらこちらから聞こえて来る。公益法人化のための荒療治で従業員を大量に雇い止めにしその訴訟を4件も抱えている中での認可だから、協会政権は万歳三唱だが、従業員保護のために戦って来た元会長や我々準会員グループはニュースを聞いてへたり込んでしまった。

数か月前に面談した内閣府の公益法人認可の担当官は「申請があったものは余ほどのことが無い限り許可する」と言う方針だと話していた。

 僕が主宰する慈善団体の認定NPO法人を東京都に申請した時には担当官が狭いオフィスへ3人もやって来て半日がかりで帳簿を総て点検しその後提出書類を含めて6か月をかけてデューデリジェンスを行った。それほどのチェックをするのか?との質問に対して担当官はデューデリなどはしたことが無い。申請があったものは認定すると言う基本方針だから、「外国特派員協会は認可されるだろう」と言いきっていた。

 しかし昨年11月1日付に予定されていた認定が5か月遅れたのは僕らの抵抗があったからだ、と言うのは間違いない。だがいざ認定が降りてしまうと敗北感は免れない。「戦い終わって日が暮れて」の心境。

 話は変わるが、昼のTVを見ていたらタモリがお別れの言葉を喋っている。紋付袴のタケシが長ったらしい弔辞を読んでいる。昨日で「笑っていいとも!」が32年の幕を閉じたのだ。大学時代からの親しい友達だった横澤彪君がスタートさせた番組だ。
 組合活動でサンケイ出版に飛ばされた横澤君は復帰するや「俺たちひょうきん族」や「笑っていいとも!」のお笑い路線で人気最低に喘いでいたフジTVを連続視聴率三冠王の頂点に盛り立てた「中興の祖」だ。
 
 しかし男の嫉妬ほど怖いものは無い。今も院政を引いてフジを取り仕切るHに嫌われ「ヴァージンレコード」などと言う凡そ左遷を絵に描いたような出向でフジを止めざるを得なくなった。
 その後吉本の専務として関西のお笑いを関東に持ってきて花を咲かせ、最後は鎌倉女子大教授と言う理想の職場を最後に引退した。そして3年前の正月(2011年1月8日)にアッと言う間に亡くなってしまう。横澤君の遺産の最後が「笑っていいとも!」だったが、昨日で終わるのを見て横澤君を偲び、一時代が終わった思いを禁じ得ない。


「ウォーターボーイズ」「スウィング・ガールズ」や「ハッピーフライト」など数々のコミカルなヒット作を送り出してきた矢口史靖監督。「舟を編む」などの人気作家・三浦しをんの2010年の本屋大賞第4位に選出されたベストセラー小説「神去なあなあ日常」(正確には何て読むんだろう、意味も分からない)を原作として脚色し映画にした。
 
 コメディをやらせたら矢口監督は日本一だと思っている。特に短い小話を積み上げた「ハッピーフライト」は大笑いした。誰も知らない林業に今時の若者を叩きこむと言う題材も興味をひく。
高校生活をチャランポランに過ごし大学受験に総て失敗し、卒業後の進路も決まっていない平野勇気(染谷将太)。大学へ就職へと方針が決まった友だちから見捨てられ、何をしようかと街を歩いていてふと見た美人のポスター「緑の研修」。一年間林業の修業をしませんか?と美女が誘っているパンフレットを手にする。

 何もすることが無いし、軽い気持ちで1年間の「林業研修プログラム」に参加することにする。修業先は「中村林業」。トラックで迎えに来てくれた飯田ヨキ(伊藤英明)は乱暴で気も使ってくれない粗野な先輩。向かった先の「中村林業」は携帯電話が圏外になるほどの山奥のド田舎。親方の中村静一(光石研)や専務で研修リーダー(近藤芳正)は新人に優しく接してくれるが、ヨキがしごくこと、口より先に手が出て頭を直ぐに張り飛ばす。
伊藤英明のヨキは髭面のイケメン。妊娠しているカミさん、みき(優香)と痴話げんかばかり。なんでも「ニューヨークの女と浮気をしているのを知ってんだから」こんな山奥で国際的じゃん、と勇気が感心していると後で分かるが町のスナック「ニューヨーク」のホステスだ。

 元気がマイルのは都会で見かけない虫やヘビの出現。川に落っこちると体中にヒルが張り付いている。手で引っ剥がそうにも貼りついていてダメ。真っ裸になりヒルを皆がライターで炙るとポタポタと落ちる。熱いやら痛いやら痒いやら。寝ていると顔にヤモリが落っこちて来たり、お弁当を開けると蛇の丸焼きが乗っていたり、ヨキのばあちゃんが飲めやと持って来た酒はマムシがそのまんま漬かっている酒だったり、夜中に喉が渇いたとコップに入った水を飲むと、ばあちゃんの入れ歯まで飲みこんでしまったり。

 過酷な林業の現場に耐え切れず、逃げようとする勇気だったが、ようやくポスター「緑の修業」のモデルとなった石井直紀(長澤まさみ)に出会い思いとどまる。しかし過去のある直紀は元気に厳しく接する。

 ロケ地は三重県津市美杉村で森に囲まれたど田舎の山奥は物珍しいし見慣れない美しさがある。オールロケのリアリティや山奥ならではの迫力がある。大木を大勢で切り倒すシーンや山頂から巨大な男根に模した御神木に乗って一気に滑落する場面は手に汗握る。男根が猛スピードで目指すオブジェは巨大な女陰だ。総勢1600人のふんどし祭りが盛り上がる。

 すこしばかりストーリーにご都合主義が垣間見えて「ハッピーフライト」や「ロボジー」程は笑えないが、それでもコメディレベルは並みでは無い。タイトルの「なあなあ」は方言で「ゆっくりのんびり行こう」と言う意味らしい。

 若者の悪戦苦闘を通して僕らは知るよしも無い「林業」を勉強出来たのも良かった。主人公の染谷将太も伊藤英明も好演。ただロマンスが希薄なのが物足りないが。

5月10日より全国東宝系にて公開される。

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「みつばちの大地」(MORE THAN HONEY)(独・豪・スイス映画):蜜蜂が姿を消すと4年以内に人類は存続できなくなる。

韓国外務省報道官は昨日(30日)菅義偉官房長官が伊藤博文元首相を暗殺した朝鮮独立運動家、安重根は「犯罪者」との認識を改めて示したことについて、「常識以下の言動であり、嘆かわしい」と非難するコメントを発表した。

僕は菅義偉官房長官の発言を全面的に支持する。このブログでも繰り返しているように安重根は暗殺者であり日本の憲政政治国家の基礎を築いた偉人・伊藤博文を政治上の立場や思想の相違などから、ひそかにねらって殺すことは「卑怯で卑劣で最も恥ずべき行為」だと思う。それを顕彰し英雄と奉る韓国や中国の国家としての「品格」を疑う。

 菅氏は29日のテレビ番組で、中韓両首脳が23日の会談で、安重根の記念館開設を評価し、連携を確認したことに対し、「日本で言えば犯罪者、テロリストの記念館だ」と不快感を示した。当然だ!
 報道官は「伊藤博文こそ植民地支配と侵略を統括した元凶であり、安重根義士を非難することは(植民地支配と侵略を謝罪した)村山談話を否定することだ」と主張。萩生田光一自民党総裁特別補佐が河野談話の検証に関し「新しい事実が出てくれば新しい談話を発表すればいい」と発言したことなどにも触れ、「安倍内閣の歴史認識がどのようなものなのか反問せざるを得ない」と批判した。

僕は安重根を調べた。旅順へ行き独房と土壇場を見学し資料を読み、ソウルの安重根記念館で何時間も過ごしてデータや写真、それに安重根の手紙も読んだ。典型的暗殺者の狂信的パラノイアだ。客観的に観察すれば決して愛国の義士では無いことは朝鮮人でも分かる筈だ。

更に中韓両国で、伊藤博文元首相を暗殺した独立運動家、安重根を描いた合作映画を制作する構想が浮上していることが27日分かった。韓国側が世界的に有名な中国の映画監督、張芸謀(チャン・イーモー)に打診し、張も関心を示しているという。

暗殺が行われた黒竜江省ハルビン駅に朴大統領が習首席に個人的に依頼した安重根の銅像を建てる替わりに「安重根記念館」を設立し、さらに抗日朝鮮軍部隊「光復軍」の石碑を中韓共同で建立する計画も具体化している。どうにもこうにも歴史問題で中国・韓国は対日共闘姿勢を示していて益々激しくなる。

 こうなれば単に座して待つ訳にも行かないだろう。「攻撃こそ最大の防御」だ。中韓反撃の映画もキャンペーンも何かやらねば、いつまでも自虐的歴史観に囚われていイジイジしていれば世界は中韓が正しいと見る。


本当にエジソンが言ったかどうか知らないが、監督のマークス・イムホーフは蜜蜂が姿を消せば人類は4年と持たないだろう」と引用する。大昔からミツバチは花から花へ花粉を運び、地球上の生命を育んできた。人間もその恩恵を受けており、毎日の食卓を彩る野菜や果物など、私たちが口にしている食物の1/3はミツバチによって受粉されている

恐ろしいことにこの15年ほどの間にその蜜蜂が大量に死んだり姿を消す現象が世界中で起こっている。国や地域で異なるが在来種全体で50%以上所により90%までも消滅していると言う。そしてもっと恐ろしいことにその原因が分かっていない。農薬のせいだと言ったり、巣箱の移動だったり(蜜蜂は移動に弱い)種々の蜜蜂同士の遺伝的な多様性だと言われているが多くの科学者が究明しようとするが分からない。中国人が総出で蜜蜂の代わりに花粉を塗っている姿は痛々しい。
 
先祖代々養蜂家だったマークス・イムホーフ監督は三大陸にわたりその現象と原因を探りながらカメラに収めている

蜜蜂の撮影がアニメじゃないかと思える程の画期的で驚く。空を飛ぶ蜂を前後左右からクローズアップで追っかける。どうやって撮ったんだろう。スタジオの真っ暗闇の巣箱の中に黄金色に輝く蜜蜂の世界を作り上げる。女王蜂の誕生の瞬間や蜜蜂のダンス(オカシイ)など普段外の世界では見られないコロニーの実情をカメラに捕える。最新の技術を駆使し、驚異的なマクロ撮影に成功。
小さないのち、ミツバチの知られざる生態、その神秘に迫る。
太古の昔から花粉を媒介して多くの生命を支えてきたミツバチの生態を通し、自然界における人間の暮らしのあり方を問いかけたドキュメンタリー。近年、世界中でミツバチの大量死や失踪が発生しているという事実を踏まえ、祖父の代からミツバチに親しんできたというスイスのマークス・イムホーフ監督が各地で取材を敢行。最新鋭の技術を駆使したマクロ撮影でミツバチの神秘的な生態に迫り、人間の営みが多くの生命を危機にさらしているばかりでなく、自分たちの存在をもおびやかしているという事実を浮き彫りにする。

緑豊かな大地と多くの生命を支えるミツバチがこんなに人間の生活に密着しているとは知らなかった。
これからの人の暮らしの行く末を考えさせるドキュメンタリーだ。

5月31日より岩波ホールにて公開される。

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「超高速!参勤交代」(日本映画):8日かかる参勤交代を4日でせよと貧乏小藩にのしかかる幕府の無茶苦茶な命令

 桐野夏生の小説は肩が変なコンセプトや高尚な哲学を掲げなく,肩が凝らない中年女性が主人公だから楽しめる。ただ「東京島」の女王様には参ったが。あれで谷崎潤一郎賞だからね。
 毎日新聞朝刊に連載された「だから荒野」(毎日新聞社刊:2013年10月刊)はキレた中年専業主婦の怖さをつくづくと思い知らされる。

 主婦朋美は自分の46歳の誕生日に夫や二人の息子たちと新宿のレストランで食事をしながらつくづく愛想がつき、レストランからそのまま家出。
家族で乗って来た日産ティアラで、結婚前に付き合っていた恋人が住むと信じている長崎へ向かうことにした。

夫のETCカードを使い東名を走るのも初めての経験。途中大阪で男に捨てられ寒空に振るえていた若い女を乗せたのは良いが、広島の宮島SAで夜景を楽しんでいる間に車ごと盗まれる。
雨の降る中ガソリンスタンドで拾ってくれた93歳の山岡老人と弟子の亀岡の軽自動車に拾って貰い長崎へ辿りつく。山岡老人は鍼師だが今はやっていないので廃屋になった鍼灸院に住むことになる。
しばらくするとネットゲームに夢中で朋美に反抗し口もきかなかった次男、優太も家出して合流。奇妙な同居生活を山岡老人宅で送ることになる。
 だが小説は突然終わってしまう。長崎の生活に慣れたが親戚の姪が怒鳴り込んで来たのを切っ掛けに東京に戻ることにする。
 
しかし山岡の年金ばかりか謝礼までくすねていた偽大学院生の亀岡の行方も宮島で愛車ティアラを乗り逃げしホームレスに車をやってしまった若い女も何もかもホッタラかしたまま。東京へ健太と共に帰る事にした朋美は夫の許へ戻るのか家族は再び元へ戻るのか(これは無いだろうが)、オトシマエを付けずに終わるのは無責任だ。

 構成を考えずに新聞小説を書き殴っている内に予定期間が過ぎてしまったと言う感じだ。いつかしっかり決着をつける小説にして欲しいものだ。


城戸賞をとったこの脚本を読んだ覚えがあり、面白い作品になるだろうと期待していたが完成してみるとどうってことの無い詰まらない映画になっている。
  多分制作費の関係だろう。キャストに金がかかっていない。主役が佐々木蔵之助で敵役が陣内孝則、田舎の飯盛女が深田恭子ではトキめくスターが不在だ。美術にも大道具にも制作費をケチっているし時代考証もなっていない。

監督が松竹が誇るベテラン木本克英だからなんとか脚本を活かして笑わせてくれるかと期待をしたが空振り。手を抜いた演出としか思えぬ画面に隙間風が吹く。

名将軍の第8代将軍・徳川吉宗(市川猿之助)が天下を治める時代。磐城国(現在の福島県いわき市)のわずか1万5000石の弱小で貧乏な湯長谷(ゆながや)藩は、湯長谷の領地にある金山をわが物にせんと狙う幕府老中・松平信祝(陣内孝則)から参勤交代せよと命じられる。

江戸から帰国したばかりなのにオカシイ。その上通常なら8日間を要するところをわずか4日間で参勤交代をせよと無理難題をおしつけられる。実行出来なければ藩はおとり潰しになり、金山は幕府の(松平信祝)所有物になる。湯長谷藩主の内藤政醇(佐々木蔵之介)は、知恵者の家老・相馬兼嗣(西村雅彦)とともに4日間での参勤交代を可能にする奇想天外な作戦をあれこれ練る。大勢で歩く大行列にせず、殿様も含めて少人数で走ればどうだろう。

殿は閉所恐怖症で駕籠に乗れない。馬に乗せよう。50人の行列が必要なのに募集した半分しか集まっていない。宿役人のチェックを潜り抜けるには?街道を外れて山道を抜ける。道案内に雇った抜け忍の雲隠段蔵(伊原剛志)の活躍で急場を凌ぎながら歩を進める一行。松平信祝もそれを阻止せんと忍びの刺客を道々に放っていた。それを奇想天外な作戦の数々でピンチを切り抜けようとする行列。
ロマンスもある。田舎の飯盛り女お咲(深田恭子)に側室が国許にいない殿様がゾッこん。でも恋に堕ちる段取りの悪さ。盛り上がりも少ない。

期限時刻まで江戸城到着は間一髪ならず、鐘の鳴るのを数え終え、意気揚揚と松平信祝が遅れた内藤政醇に藩のお取り潰しを宣告しようとすると、「ゴーン」ともう一つ鳴る。弓の名手鈴木吉之助(知念侑孝)遠くから鐘を射て鳴らしている。矢尻が当たって「ゴーン」と鳴るか?
 将軍吉宗が内藤政醇と二人だけで慰めながら酒を酌み交わすラストシーンもあり得ない。お目見えギリギリの小藩の藩主だぜ。

「ゲゲゲの鬼太郎」「鴨川ホルモー」でコメディ得意の本木克英監督らしくない演出に幻滅を覚える作品だ。

 6月12日より松竹系で全国公開される。

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「美しい絵の崩壊」(ADORE)(豪・仏映画):二人の母親に二人の息子。互いに熟愛する「近親相姦」的な背徳の天国

なんて詰まらない邦題なのだろう。何の意味も含蓄もニュアンスも無い。映画の原題のサンダンス映画祭で「二人の母親たち」(TWO MOTHERS)US公開タイトルが「憧れ」(ADORE)、原作はノーベル文学賞受賞のドリス・レッシングの小説名は「祖母たち」(GRAND MOTHERS)。どちらもイメージが広がる。いつもは邦題の命名は苦しくてそのまま原題をカナ文字にするか直訳なのに頭の悪いPRマンが弄るとトンでも無いタイトルになる。
アメリカでは昨年1月のサンダンス映画祭で上映され9月に限定公開されたが拡大公開はされなかった。やはりキリスト教国でこの手の禁断のロマンスは具合が悪いのだろう。日本でもアートハウス限定上映の予定だ。

オーストラリア東海岸(特定出来ないがシドニーからさほど離れていない)の海に面した美しい砂浜に隣接する二軒の家。ロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)は幼いころから姉妹のように育ってきた。

現在は二人とも結婚して家庭を持ち、お互いに20歳を迎えようとする息子を持つ。二人とも陽に焼けたサーファーの美男子だ。トム(ジェームズ・フレッシュヴィル)とイアン(ゼイヴィア・サミュエル)も母親たち同様親友同士だった。トムの父親、ハロルド(ベン・メンデルソーン)は舞台演出家でシドニー大学から演劇科の講師として招聘されシドニーに住む。早くに交通事故で父親を亡くしたイアンは、ロズを2人目の母親として慕っていた。

それは時間の問題だったかもしれない。美しい中年の女性二人にハイティーンの息子たちが毎日顔を合わせ小さな水着で肌を寄せ合っている内にいつの間にか自然と結ばれてしまう。
おいおい「近親相姦」かと錯覚するが自宅で寝る以外は一緒に食事をし喋り笑い泳いで時間を過ごすのだが、自分の母親では無い。血は繋がっていない。

どう云うお金持ちの遊民かと思う。働いている訳でも無いがお金の心配はこれっぽちも無い。息子たちはサーファーに明け暮れて学校へ行っているのでも無い(多分画面には出ないがカレッジに通っているのだろう)。しかし4人でテーブルを囲んで、フレッシュなサラダに海鮮料理(美味しそう)にキリリと冷えた白ワインを飲み昼から肉欲に溺れる至福を味わっている。女性監督、アンヌ・フォンテーヌの描くセックスは淡々としてパステル画のように美しい。

「今までの人生で一番幸せ」と二人の母親の意見は一致する。この実感は観客もじっくりと共有することが出来る。しかし近親相姦的印象は拭えないが。

 4人の「背徳のパラダイス」に邪魔をする者も現れる。夫を交通事故で亡くし長い間シングルマザーのリルに憧れ付き纏う初老の寡暮し男,ソール(ゲイリー・スウィート)遂に結婚申し込みをするがリルが無言でロズに寄り添い返事をしないのを見て「レズだとは知らなかった。俺は街中の笑い者になる」と誤解してくれて大助かり。

 ロズの夫ハロルドはシドニー大学での講師が気に入り、浜辺の家を出てシドニー市内に家を買い一緒に住もうとロズとトムに強要するが、二人ともどっぷり浸った天国を見捨てる気は毛頭無い。諦めた夫は離婚しシドニーで再婚し女の子が出来る。
 
 40代半ばでやがて肉が垂れ皺が寄って老婆になる頃には若者たちは更に逞しく壮健な肉体を誇るようになるだろうと、母親たちの悩みと思惑も観客共感する。

 だからシドニーで父親の舞台演出のアシスタントをしている時、ヒロインのメアリーに惹かれ結婚したトムには登場人物たちは皆納得する。更にイアンは気に入らないが付き纏うハナ(ソフィー・ロウ)とベッドを共にするようになる。その気は無いがハナは妊娠している。出来ちゃった婚で、リルもロズもお婆ちゃんになる。(原作の小説名「Grand Mothers」)絵に描いたような幸せな二つの家族。

 だがこのままで終わる訳が無い。破綻は幸福の絶頂から真っ逆さまに雪崩落ちて来る。

「ココ・アヴァン・シャネル」のフランス人女性監督アンヌ・フォンテーヌが繊細なタッチで怖ろしい背徳ドラマを演出する。

 ナオミ・ワッツとロビン・ライトは二人とも流石に演技派に名に恥じない熱演。殆どをビキニで画面に現れるが夫々45歳、47歳と言う引力に負ける年齢ながら見事なシェイプ・アップした裸体を披露する。余り馴染みが無いが、二人の息子たちもサーファーとして恥じない肉体を見せてくれる。
真っ青な海の沖合に浮かぶブイに4人が並んで水着姿で横たわる。オーストラリアの太陽が一杯に照りつける俯瞰は印象に残る美しいシーンだ。誰が何と言おうと4人で築く天国の城は不滅なのだろう。

 5月31日よりヒューマントラスト有楽町他で公開される。

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「マンデラ―自由への長い道―」(MANDELA:LONG WALK TO FREEDOM)(英・南ア映画):南アフリカの「アパルトヘイト」と戦い27年間も牢獄で過ごしたネルソンの生涯

 ネルソン・マンデラを描いた作品は多い。
6年程前の「マンデラの名もなき看守」を良く覚えている。白人看守が主人公でマンデラとの友情を描き、そこには厳しい取り調べも拷問も無い。もっともロベン島の刑務所からポールスムーア刑務所に移ってからの話だ。ペントハウスと呼ぶ監視の緩い仲間たちと広い同室で寛いで拘置されていると言う雰囲気では無い。デニス・ヘイスバートがマンデラを、看守グレゴリーをジョセフ・ファインズが演じた。
この「自由への長い道」の中でマンデラが娘ジンジ(リンディウェ・マッシキツザ)に会うときに面会室に付いてきた太めの看守がグレゴリーでジェレミー・バートレットが扮している。

 2010年にはクリント・イーストウッド監督でアパルトヘイトが解除された直後のネルソン・マンデラ大統領と南アフリカのラグビー・チームとの交流を描いた「インビクタス/負けざる者たち」もある。イーストウッドの映画としては出来が余り良くない。ネルソン・マンデラにモーガン・フリーマン、ラグビー・チームのキャプテンはマット・デイモンで実話再現映画だ。

 4月12日から日本で公開される「ネルソン・マンデラ釈放の真実」もエスピオナージ風にその釈放の秘話を描いている。当時南アに滞在し、謎のフランス人ビジネスマンとして重要な役割を担ったジャン=イブ・オリビエを語り部に、関係者の証言を交えて解き明かしていくドキュメンタリー映画だ。外国特派員協会ではこの謎の人物イブ・オリビエ氏を招いて試写会が4月10日の夜7時から上映を予定している。関心の向きはどうぞお出で下さい。無料です。

 信じられない長期の拘留と言えば、昨日(27日夕方)1966年に静岡県旧清水市で4人が殺害された「袴田事件」で「再審開始」の決定が言い渡され、袴田巌元被告が釈放された。「48年振り」で自由の身になった。実に半世紀近くも自由を奪われ拘置されていたのだ。

 高橋伴明監督「BOX 袴田事件 命とは」(2010)で、強盗放火殺人事件の容疑で死刑が確定したが無罪を主張する元ボクサー袴田を新井浩文が主人公。その判決を下した萩原聖人扮する裁判官の後悔と懺悔を描いていた。静岡地裁の熊本典道元判事がその人で、状況証拠は「無罪」だと思ったが判決は合議制で先輩判事2人の意見に押し切られる。その苦悩の心理状況を高橋監督は的確に画面に表現していた。熊田判事は死刑判決文を書いた直後に判事を退官して弁護士に転身している。
「再審開始」の理由の中で証拠がねつ造された可能性にまで言及し、裁判のやり直しを決定した判決文の中で「耐えがたいほど正義に反する状況」だと強い表現が光っている。

 ネルソン・マンデラも「耐えがたいほど正義に反する状況」で27年間も拘置されていた。袴田事件と違い世界中が「マンデラを釈放せよ!」(FREE MANDELA!)との声を挙げて南ア政権を追い込んだ。
「マンデラ―自由への長い道―」は白人たちが優位に立ち、黒人たちが迫害される「人種隔離政策アパルトヘイト」に抵抗して終身刑の判決を受け28年間拘束されたネルソン・マンデラ。ノーベル平和賞を授与され、大統領に選出されたマンデラのことは誰でも知っているが、若い頃の軽薄で傲慢な性格や浮気性で最初の結婚に破れたこと、再婚した妻と運動方針の違いから離婚するなど知られざるエピソードを伝えてくれる。

 映画は大きく3つのパートに分かれる。1918年南アフリカ、トランスカイ自治区のムヴェンゾに首長の息子として生まれた少年時代。生まれ故郷の広大な麦畑の中を夕陽を浴びて走る廻るマンデラのスローモーションの映像は美しい。同じティーネージの少年たちが集団で成人の儀式を受ける様子など淡々と描かれている。

 やがて25歳で資格をとり白人虐待される黒人の人権を守る弁護士として働いていたネルソン・マンデラ(イドリス・エルバ)は、差別や偏見が当然のように存在している状況に疑問と怒りを感じ始めていた。同じ主張を持つ同志たちと一緒に反アパルトヘイトを訴えた「アフリカ民族会議」(ANC=AFRICAN NATIONAL CONGRESS)に身を投じたのが26歳、当局から目を付けられるようになって行く。そんな中で女性との遊びはお盛んで、最初の妻エヴリンと知り合う。4人の子供を設けるが浮気は収まらずエヴリンは去る。その直後に18歳も年下のウィニー・マデキゼラ(ナオミ・ハリス)と結婚する。プレイボーイの面目躍如。「英雄色を好む」のだ。

 ガンジーのように無抵抗主義を貫いていたが南ア政権の黒人への弾圧と圧政は激しくなるばかり。1961年43歳の時武装組織「民族の槍」の司令官に就任し破壊工作やサボタージュな活動は熱を帯びついには1964年46歳で「国家反逆罪」終身刑という重い判決を下されてしまう。大勢は「死刑」判決だったが世界がこの裁判の行方を注目しており、ともかく命だけはとらないでおこうと言う姑息な思惑が描かれている。それから延々とCANの仲間6人と27年間自由を奪われ収監される。

 2013年12月5日に95歳の天寿で逝去した元南アフリカ大統領、ネルソン・マンデラの自身の著による700ページを超える「自由への長い道 ネルソン・マンデラ自伝」(NHK出版刊)の映画化。人種隔離政策アパルトヘイトに挑む闘士から大統領となった彼が歩んだ波瀾万丈の人生を2時間半の長尺で重厚に描く。
監督は「ブーリン家の姉妹」などのジャスティン・チャドウィック。「パシフィック・リム」や「マイティ・ソー」などのイドリス・エルバが青年から老人に至る数十年に及ぶマンデラを好演している。ただチビのマンデラに扮するのにガッチリした長身には違和感を覚えるが。
実際にマンデラと親交の深かったU2のボノが作品のために書き下ろした主題歌「オーディナリー・ラヴ」はエンドクレジットにフルコーラス流れるメロディアスな歌だ。今年のアカデミー賞歌曲賞候補になった。

 5月24日より全国公開される。

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