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第四十五話

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 対人戦闘ばかりでは良くないということで、私たち、高音さんと一文字さんと共々で、麻帆良内の霊的慰撫に回ることになりました。


 日々、楓さんが行っている行為のおかげか、実に平穏な状況で、雑霊レベルでも残滓ともいえる時間をゆったりと過ごしています。


 横島事務所の方針のおかげでしょう。


 意志有る者達は尊重され、意志なき者達は平穏な時間を与えられ、そして狂気に侵された者たちは、一瞬でも正気に戻され、悔い改めさせられます。
 狂気の自分を意識させるなんて、どんなに非道なことか、と高音さんは最初怒っていましたが、輪廻転生のシステム上、狂気のままでは来世に影響がでる旨を理解していただけると、積極的に押さえてくださるようになりました。


 まことにありがたい話です。


 本来ならば宗教的はお話がじゃまをするはずなのですが、直接「キーやん」にお会いしているのが良い影響だったようで、あからさまな異宗教アレルギーは無くなったようです。


「・・・つうわけでな、最近外から変な怪異が来るらしいから気をつけろよ?」
『うん、怖かったら、横島のお兄ちゃんの所にいけばいいんだよね?』
「ああ。あと、吸血姫んとこでもいいぞ? あいつは弱い奴らにゃとことん優しいからな?」
『うん、ありがとうね。お姉ちゃん』


 にっこりほほえむ少女の幽霊を優しくなでると、少女の幽霊は一文字さんに抱きつきました。


『お姉ちゃん、ママみたい』


 恥ずかしげに微笑んでから一文字さんが抱きしめると、少女の幽霊は幸福な笑顔を浮かべて、輝き消えた。


「・・・いった、な」
「ええ」


 GSとして生きてゆくならば、何度でも出会う場面。
 高音さんは瞳の端をハンカチで押さえていた。


「さ、お次もがんばるか」
「ええ」


 ささっと高めの線香を焚いた私たちは、涙を飲み込んで笑顔になります。
 これができることこそが、GSの最低条件じゃないかと最近思います。


「麻帆良、正解でしたわね」
「ああ、大正解だったぜ」
「氷室さんには悪いことしましたかしら?」
「おキヌちゃんならわかってくれるさ」
「・・・本気でおっしゃってます?」
「・・・たぶん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひぃぃぃぃ。
 この状況、何とかしてください。


「むりやな、在学中のそれも非戦闘系の霊能でGS免許取得や。リスペクトされまくりやろ?」


 き、鬼堂先生、せめてフォローしてください。


「あんなぁ、氷室。おまえ、途中入学で美神事務所でネクロマンサーで在学中GS免許取得なんて並べたら、パニックになるにきまっとるやろ?」


 ひ、ひぃ・・・・。
 私も麻帆良に行きたかった・・・。


「氷室は無理やろ? 美神はんが手放すわけないしなぁ」


 私は、視界に広がる自称「妹の群」に冷や汗を流しています。
 美神さんやエミさんならまだしも、私をお姉さま扱いしてどうするんでしょう!?
 そりゃ、確かにネクロマンサーですよ? そりゃGS免許も取りました。
 美神さんの事務所にも所属してます。
 でも、私は私なのに!


「切れるなや、氷室。ショックで寝込む娘もおるからな」


 私が寝込みたいです!


「あんじょう、きばりや、氷室」


 あーーーーーん、助けて、美神さはーーーーーん、横島さはーーーーん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 美女美少女による除霊と言うことで、妙な評判がたたないうちに、いろいろと仕事のルートを限定した。
 メインは魔法料理魔鈴、サブは匿名メールアドレス、アンダーグランドは会員制ボードだ。
 会員制といっても紹介性と言うだけだが、結構排他的で管理が楽だ。
 私自身もアングラ色が濃いので、そっちに情報が流れたと解れば、早々に情報移転してしまう事ができる。
 土偶の力も借りれば、どこの誰が情報を流したかも解るので、そいつ以外の会員を引き連れ別サーバーに定住も可能だったりする。


 まったくのチートだ。


 この機能で「ちう」ページを作ったら、もう、伝説のアングラページとか言われてしまったのが寂しい限りだ。


 が、非公式なルートが実のところ結構ある。


「千雨ちゃん、お願いできない?」 と、横島さんの師匠である美神令子さん。
「ちさめちゃ~~ん、たすけて~」 と、これは六道冥子さん。
「ち・さ・め・ちゃん♪」 と、これは美神美知恵さん。


 GSの業界ルートで頼まれると断りづらい話が多い。
 まぁ、美神玲子さん以外は無茶な話は無いんだけど。
 それにしても横島さんの周りは美人ばっかでレベル高いよな・・・。


「・・・千雨、話があるワケ」と、今度は小笠原エミさん。


 この人は、仕事というよりもヘッドハンティングに来てるんだよなぁ。
 まぁ、この人から見れば、宝の山らしいしなぁ。
 夏美・那波は当たり前として、実はあたしも狙われてる。
 やっぱあたしのAFが狙いらしいけど。
 細かくハンティングしてきているのは、さらに奥にある魔法世界の人材の良いところを狙っているらしい。
 この人もどん欲で有能なんだよなぁ。


「千雨、この条件で移籍すれば、年収はこれで・・・・」


 どしゃどしゃ書類積まれても、あたしゃ、横島事務所を離れるつもりないんですけど?


「・・・くぅ・・・、愛で縛る横島事務所ってワケ?」


 ・・・一応、頷いとくぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞けば、おキヌちゃん、六女で「お姉さま」をさせられているそうだ。
 一応、弓さんと一文字さんとの三人でお姉さま扱いはされていたらしいんだけど、研修と称して麻帆良に二人が行ってしまったせいで「妹」が集中。
 さらには麻帆良のウルスラから来た魔法生徒たち、おキヌちゃんが横島君の元同僚と知ってからは同級生なのにお姉さま扱い。
 もう、六女の「お姉さま」、最上位の「お姉さま」という扱いに落ち着く勢いだとか。


 うっわー、伝説のお姉さまの再来かしら?


「えっと、美神さん。その話、聞きたいような聞きたくないような・・・」


 青い顔で、シドロモドロのおキヌちゃん。
 隣で、本日研修日のアスナちゃんとさよちゃんが興味津々で聞いている。
 女の子はこういう話が好きよね。


「六女にはね、全校を通して82%の生徒が認めた「お姉さま」を「エルダーシスター」として認定して、卒業後も「お姉さま」と呼ばれる名誉お姉さまシステムがあるの」
「いやーーーーーーー!!!!」


 あ、実感で82%越えてるな?
 でもこの制度、GS資格を持ってるなら結構いいわよ?


「な、何でですか?」
「開業の際、自分の妹や後輩を、無制限にヘッドハンティングできるもの」
「・・・!! ア、アスナちゃん、さよちゃん、六女に来ませんか!?」


 ん、おキヌちゃんも解ってきたわねぇ。


「あ、あはははは、私もさよちゃんも学内進学なのでぇ・・・」
「あ、ああああああ、あの、お誘いは嬉しいのですが、麻帆良進学が嬉しいです」


 くぅ、さすが横島君。
 囲い込みが半端じゃないわね。


 熱心に勧誘するおキヌちゃんはおいておいて、私は大グループ構想を推し進めることを考えていた。


 現在、群雄割拠状態でまとまりのないGSとGS協会だけど、唐巣先生が会長に納まって以降、かなりの体質変化を起こしている。
 師匠と弟子の縦のつながりしかない関係に協会が横を繋げているのだ。
 この流れを強化することで、現在麻帆良で行われている雑霊の慰撫や鎮静化を修行の一部に組み込むことが出来ると私は確信している。
 オカルトGメンが試験的に導入して成果を上げているのをみれば、GS協会だって重い腰を上げざる得ない。


 各地方、各地域の所轄GSを警察で言うところの警察署の扱いとして、修行中の見習いGSやGS見習いを交番勤務扱いにすることで、緊急な対応や恒常的な慰撫に予算を大きくかけることなく専従させることが出来るだろう。
 これにより、GS協会やオカルトGメンは、細かな依頼をまとめたり取り上げられない霊象を位置から調査したりしなくてもいいわけだ。
 なにしろ、定例的な調査が「慰撫」で行われるわけだから。
 麻帆良でも安定した地縛霊からの通報や目撃談が寄せられ、防犯や捜査の大きな力になっているという。
 これは警察側からも望まれる状況だ。


 つまり


 各省庁から予算が「がっぽり」なのよ!


 で、広域をフォローできる大グループ構想を、となるわけ。
 一応、横島君のところと美神事務所(うち)、エミのところと・・・、あと弓さんの実家あたりに声をかけられないかしら?
 ママ、は、パスね。
 薄給でグループを使われるのが落ちだし。


 あ、そうか、六女の研修でオカGに行って、有能そうなのはおキヌちゃんが「エルダー」権限でグループに引っ張る・・・。


 つながったじゃない!!
 というわけで・・・


「おキヌちゃん、エルダーシスター、がんばってね?」
「いやぁーーーーーー!!!」
「おキヌさん、がんば」「りすぺくとです、おキヌ姉さん」
「だったら六女にきてぇーーーーー!」


 なんだかおキヌちゃんも「横島君」っぽくなってきたわねぇ。
 ま、うちの助手らしく、かしら?

 

 

 

 

 

 

 


 AFは禁止されているでござるが、除霊は少し心痛むでござるよ。
 麻帆良では対話と会話で対面してきた霊たちを、力でねじ伏せねばならないのでござる。
 バカリーダー、いや、ユエ殿も始め泣いていたでござるが、コレしかないと理解すると前向きに頭を切り替えたらしく、結界や捕縛魔法で足止めして、狂気を覚ます努力を始めたでござる。
 コレについて、知っているGSはみんな「無駄」と言っていたでござるが、拙者は、ユエ殿は、横島殿は無駄とは思わなかったでござる。
 狂気を持ったまま散らされれば、輪廻の和に加わった後も狂気を帯びてしまうのでござる。
 しかし、少しでも正気に戻して除霊出来れば、輪廻に戻るときもその後も狂気から解き放たれる。
 それは神魔が認めた事実でござった。


 ゆえに、事務所方針で「狂気」から解き放ち除霊する事にしたのでござったが、思いの外予算がかかるのが解ったのでござる。
 もちろん、自分たちで霊符を作ったり、魔法の補助を使ったりしているので赤字にはなっていないでござるが、ふつうのGSが同じことをすれば、一月で事務所が潰れるという調子でござった。


「何とかしなければならないです」


 真剣に悩むユエ殿と横島殿でござったが、さすが横島殿、何かに気づいたようでござった。
 電話で数分話した後、拙者とユエ殿に微笑んだでござる。


「うまく行けば、かなりの予算削減だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 不意にひらめいたのは「ローレライ」。
 あのとき、美神さんは録音された音声に霊波をのせている状態なのに、ローレライには肉声に感じていた。
 ならば、ネクロマンサーの笛の録音を行ったものに、慈愛の霊波をのせたら?
 そんな思いつきを美神さんに話したところ、今すぐ麻帆良に行くから待っていろ、ということになった。


 魔法料理魔鈴のゲートから飛び出してきたのは美神事務所一行とアスナ&さよちゃん。


「機材は準備できるかしら、横島君!?」
「あー、大学部から色々借りてますよ」
「私も一枚かませてもらいます!!」
「もちろんワシもじゃ!!」


 大学部に機材を借りに行くと、聡美ちゃんとカオスがいて、今からする実験の話を聞いたら目を輝かせて飛びついてきた。
 まぁ、科学とオカルトのダブルトップなので、役に立つだろうと言うことになり、急遽エヴァちゃんの別荘におじゃますることになった。


「なんだ、愛子空間じゃまずいのか?」
「愛子が除霊されたらまずいだろ?」
「・・・ああ、なるほどな」


 てなわけで、おキヌちゃんとさよちゃんのAFの録音を行った後、俺のAFでも録音して音声分析して、最適化された音源ができあがった。
 音源単体で流してもきれいな曲になっており、このまま売れるかも、と美神さんの欲望を刺激したそうだが、実験はこれから。


「じゃ、ユエちゃん。この音楽にユエちゃんの霊たちを助けたい思いを乗せるんだ」
「はいです」


 はじめは音に霊波を乗せるという行為自体を理解できなかったユエちゃんだったけど、一時間ほどでそのコツをつかみ、完全に自分の霊波を乗せることに成功した。
 結果は、他の実験することなど意味がないほど解った。


 威力としてはおキヌちゃんの半分ほどの能力だろう。
 しかし、それが実行できるということ自体が実験の成果だった。
 聡美ちゃんは、オカルトと科学の融合に感動し、カオスはこの実験結果からマリアにも転用可能であることを確信した。


「で、どんな兵器にするんだ?」
「うむ、ゴットボイスかのぉ?」
「ゴットはまずいだろ?」
「小僧から、本人に使用許可をもらえんかのぉ?」
「まず間違いなくマリア自身が気に入られて、代わりに神族になれとか、部下に迎え入れましょう、とか言われるだろうぜ?」
「それはいただけんのぉ」
「確かに、茶々丸が勧誘されてますからねぇ」
「神族と魔族、両方からな」
「うむ、無垢なる魂じゃからのぉ」


 そういう理由だったのか、と思わずなっとく。


「ゴット・ラ・ムゥ、がいいところかのぉ?」
「なんでネタ技にこだわるんだよ」
「マリアがお前たちのネタ技にあこがれておってな、機構上可能なら仕込んでほしいと請われておるのじゃよ」
「ですが、マリアさんは結構完成してるので、むずかしいんですよねぇ」
「アタッチメントを追加してもだめなのか?」
「それでは満足せんほど渇望しておる」


 マリア、お前はどこに向かってるんだ?
 それはさておき、俺たちはこの音源と霊力を一緒に使える装置開発に打ち込むことになった。


「やっぱり背負うのが一番っすかね?」
「そうね、装備に関係ない位置が良いわね」
「移動も考えると背負うしかないです」
「あまり重いと困るでござるなぁ」
「補助で楽器型の音源と背負いバッテリー、楽器の方に霊波同期装置、かな?」
「ふむ、そうなるとある程度の大きさが必要じゃぞ?」
「だったら、思い切ってギター型とかどうです?」
「「「「「おおおおお」」」」」
「その形なら、パーカッションとか、キーボードも可能ですね」
「・・・なんだか除霊っぽくないです」
「それもいいやろ、なんせ俺の事務所やし」


 そんなこんなで横島霊能楽団、準備中。


 試験運用として音源と霊波伝達装置をセットにしたユニットを隊長のところで試したところ、五体投地で「是非とも完成の折りにはオカルトGメンに卸してください」と頼まれてしまったのは内緒だ。
 気まずいので三セットほどレンタルしたところ、毎日結果報告と詳細運用報告があがってくるようになって閉口したのだった。

 

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