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トップページ > 神代ふみあき書庫 > 赤松・椎名系作品 > よこしまほら(旧なろうアップ版) > 第四十一話
GS協会、というよりも唐巣会長からの要請がきた。
「・・・というわけで、様々なレベルの様々な仕事を、いろいろな事務所の人たちと研修してみないかい? 横島君の所は、いろんな権能を持つGSが一杯だからね。個々に修行をさせるより、より近い権能を持つGSに学ぶところが多いと思うんだよ。というか了解してくれないかな? 本当に突き上げが厳しくてね、毎日の抜け毛が、抜け毛が、ががががが・・・・・。」
要請じゃなくて、哀願だったけど。
そんな訳で、うちの娘(こ)達に聞いてみると、見事に流れを読み切っているようだった。
「あたしは、シロ姉のところですね?」
アスナの言葉に頷いた後、さよちゃんにも視線を送る。
「で、さよちゃんも美神さんの所だな。」
「はい。おキヌさんの権能ですものね、これ」
パクティオカードを愛おしそうに見つめる「さよ」。
アスナも同じく微笑んでいる。
「わたしは、エミさんの所ですね。」
通常状態の夏美ちゃん。
「千鶴ちゃんもエミさんの所に頼む」
「はい、忠夫さん。」
これで、村上夏美暴走編対策はOKなんだけど、積極的にいじる事もあるので悩みどころではある。
「アキラちゃんとユウナは、冥子ちゃんの所に頼む」
「はい、横島さん」
「えーっと、私も?」
ちょっとびっくり目のユウナ。
「ああ。冥子ちゃんの霊能は後衛型なんだけどな、彼女がそれに気づいていないんだ。だから逆にこっちから教えてあげて、それなりに考えてもらおうと思ってな。」
「・・・もしかして積極的に私たちを売るつもりですか?」
「いや? GSの総本家に「魔法使い」をアピールしにいくだけだぜ?」
「じゃ、優秀なセールスマンにならないと。ね、アキラ」
「うん!」
胸を張る若年巨乳コンビ。
・・・アカンアカン。
そんな俺の隣で腕組みの雪之丞。
「なぁ、横島。」
「ん? なんや?」
「・・・新人GS同士の研修って必要じゃないか?」
あー、そういうこと?
まぁ、受け入れるのは吝かじゃないけど・・・・。
「・・・おまえも苦労してるな、雪之丞」
「・・・すまんな、ほんと」
そんなわけで、弓さんと一文字さんを受け入れることになった。
「・・・ついでだからさ、六道女学院の霊能課の研修も受け入れっか?」
「そこまで自棄になることはねえだろ」
「いやいや、そうじゃなくて。麻帆良ほど退魔の研修に向いてる土地はねえだろうし、わざわざ遠出しなくても往復二時間で来れる修行場としては最強だろ?」
貸し借りで言えば借りが多くなっている最近。
ここで一気に巻き返せるカードを切れば、俺たちが麻帆良を拠点とする上で、これ以上の好条件はない。
雑霊相手の宿泊研修よりも経験値が高く、認識にも大きく役立つこと請け合いだ。
「そうか、なら、ありかもしれねぇ。」
「で、その試験運用つうことで弓さん達を受け入れればいいって事だ。」
「たすかるぜ、横島」
なーに、なんでもねえさ。
というわけで・・・・。
「愛子、関係各所への連絡と契約書の借り受け渡し準備を頼む。タマモは学園と六女の調整と打ち合わせを頼む。千雨ちゃんはマトメとGS協会への報告、あと三人で契約書の詰めを頼む」
「「「了解(ラジャ)」」」
「で、エヴァとかユエちゃん達残りは通常業務と研修受け入れつうことで、頼む」
了解の意味を込めて頷く全員を見渡して、俺は内心嘆息する。
俺、なんか柄にもないことを言ってるなぁ、と。
さすがにエヴァは無理だったみたいね。
手元の研修計画表をみて苦笑いしてしまった。
シロとおキヌちゃんは大喜びで、アスナちゃんとさよちゃんが研修にくると騒いでいる。
確かに戦力倍増だし、二人とも霊具を全く必要としないタイプなので出費は最小限と言っていい。
加えて、この契約書。
魔法世界の足場になることと二人の立場を守ることを意識すれば、給与面などは勝手にして良い契約になっている。
・・・横島め、あたしを試してるな?#
ここでガメツく給与を削れば、その分を横島君が負担するつもりなのだろう。
逆に優遇すれば、以後に続く「魔法使い達」の給与の基準にしてやろうという事に違いない。
つまり、私の基準で出しすぎではなく、今後の基準にもなりうる給与基準を出してみろ、と言ってきているのだ。
ふっふっふ、この美神令子に勝負を挑んだからには、それなりの結果を返してあげるからね、横島君♪
とりあえず、麻帆良からでるなら美神令子に頼ろうと思わせるだけの環境に浸してやるんだから。
想像以上の戦力を回してもらった。
横島には感謝、神父には大感謝なワケ。
前に行われた臨時GS試験で落ちたタイガーには悪いけど、あれは落ちてしかるべき試験だったといえる。
GS協会の一部の暴走のせいで、数年にわたって浸透するはずだった魔法世界の第一陣が、一度に一つの試験に集まったのだ。
GS見習い程度では、一撃で散らされるのが分かりきっていた。
逆に言えば、トップクラスの見習いを今回の臨時試験で潰してもらったのだから、次回のGS試験はかなり楽になることが見受けられる。
とはいえ残念なのが、補助霊能として優遇されるはずだったネクロマンサーが通常形式のGS試験に通ってしまったため、補助霊能技能者に対する優遇措置が休止してしまったことだろう。
が、今回の試験で学んだことを生かせれば、次回の試験は通るはずだとタイガーの発破をかけると、実にいい笑顔で感動して見せた。
同じ「モブ」出身とはいえ、横島とはずいぶんと離れてしまったように感じる。
ここは一つ、近づけてみるべきだろうか?
「夏美しゃんとエミさん、それに千鶴しゃん・・・。美女と美少女の最高職場じゃーーー!」
うん、うちのオフィスから離そう、というか横島預かれ。
速攻で携帯メールを打ったところ難色を示されたが関係ない。
高校は魔鈴のゲート経由で行けばいいし、なんなら横島の行っている高校に短期で入ってしまっても良いはずだし。
というわけで、横島、面倒みろ。
メールの押し問答の末、修行は引き受けるが、仕事はウチでと言うことにされてしまった。
横島め、交渉が上手くなったワケ。
まぁ、タイガーはさておき、夏美はいい感じだし、千鶴って娘(こ)も私に通じる何かを感じつつ、前衛ができるという。
うー、このままの体制でオフィス運営したいわ。
ピートも引っ張ってこれれば、美形事務所で売れるわね。
お母様からのお話で、アキラちゃんの研修がうちに来る事を聞いたの。
あんまりにも嬉しくて、みんなと大喜び。
このまえの試験のときにアキラちゃんが見せてくれた連携を私も練習していて上手く出来たこともあって、嬉しさが何倍にもなったわ。
それに加えて、アキラちゃんのお友達もうちで研修してくれるって言うの。
横島君みたいな感じの女の子、ユウナちゃん。
試験の時も格好よくて、是非ともお友達になりたいと思っていたの。
だから本当に嬉しくて。
「横島君って、本当に冥子のことを考えてくれてるわ~」
今回の研修で、私とアキラちゃんとユウナちゃんが、楽しくできる訓練やお仕事なんかを考えてくれた横島君。
嬉しいわ~、本当に嬉しいわ~。
横島君に何かお礼しなくちゃいけないと思うわ~。
何がしてあげられるのかしら~?
驚きすぎて声もでん。
横島君の事務所から提案された内容は、実に驚きに満ち溢れたものじゃった。
GS見習いや研修を受け入れて、学園防衛の穴に埋める計画もさる事ながら、六道女子と提携し、交換留学の形式で中期研修に招き入れつつ魔法生徒を送り出し、双方の事情と社会になじませるという内容には、是が非もなく飛びつくだけのウマミがあった。
さらに言えば、麻帆良運営の上で六道からの援助があることはプラスにしかならず、魔法使い達の「移民」にも大いにプラスだった。
こんな話を、何の要求もなしに持ってくる真意を問うた所、横島君は照れくさそうに言った。
「魔法側の事情からもう抜けられないほどドップリっすから。」
つまり、身内を見捨てられないと言う気持ちでワシ等をみているという事らしい。
実に甘い理由じゃが、実に嬉しい理由じゃった。
寄るべき背後組織を失った麻帆良には得難い援軍じゃろう。
「・・・ふむ。実務面はワシ等に采配させてもらえるかの?」
「よろしくお願いします、学園長(ぬらりひょん)」
・・・なんじゃろう、実にいやな感じを受けたんじゃが・・・?
横島君が正面から話を受けてくれたのは嬉しかったが、思わぬ所から、というか予想すべき方向から横やりが入った。
オカルトGメンの美神美智恵君と日本政府関連である。
美神くんは、「魔法世界との接点はうちにもあるんだから、こっちにも噛ませてほしい。」という直接的な話だったが、政府関係からは「魔法世界との折衝は政府間で行うものだ。越権行為ではないか」というバカバカしいものであった。
美神君の方へは「横島君と直接詰めてくれ」とにべもない返答をしておいたが、それなりに策を弄した後で行動をするだろうから置いておける。
ただし、政府関連については正面から受けなければならないので、関連省庁関連部署、各政治関連への圧力を強める事にした。
魔法世界との霊能的交流はすでに閣議決定で承認されており、その後の政府の不手際は協会に責任はない。
今回の臨時GS試験にしても、政府承認はあっても協賛すらない事なので、後付けで騒がれても困ると言うものだ。
それだけの先を見ることが出来ない相手に対して諭しても仕方ないので、現実を突きつけることにした。
今回の試験で、完全な魔法世界にしか戸籍が無い人間は三人だけ。ほかは魔法も使える一般人。国が国民の主権を主張すべき相手ですが、何か? と。
罵声はこなかったが、不満は数十倍もぶつけられた。
が、その不満をぶつけた部下を叱ったという事実報告とお詫びという書状が何通もきたところをみれば、こちらの意見が通ったとみていい。
あとは横島君を通して魔法世界と連携がとれれば完璧だろう。
ふぅ。私も横島君も、一年前では思いもしなかった立場に立ってしまったね。
君が高校を卒業したら、卒業祝いにワインの一本でも送ろう。
なに、聖者の血だ。
法律も何もあったものではないのだよ?
私がにっこり微笑むと、横島君も余裕たっぷりで笑う。
実に苦々しい思いを胸の奥で感じつつ、直接交渉を開始。
「うちでも研修しない?」
「年齢制限があるますよね?」
第一回戦、敗退。
「あら、六女の研修を受け入れているのはご存じ無い?」
「実務じゃなくて、訓練と見学っすよね?」
第二回戦、敗退。
・・・手強い。
「・・・そんなに、私のこと嫌い?」
「うちの子には、死なない環境で研修してほしいんすよ、出来るだけ」
「・・・うっ、ぐぅ・・・・。」
完全敗北。
血を吐いて倒れるかと思ったわ。
「しかしだね、横島君。何もGS現場一線での戦いをしてほしいわけではないんだよ」
隣の西条君、いいこと言った!!
「君の所の、綾瀬君かい? 彼女の活動は目を見張るものがあってね。出来ればこちらが研修させてほしいぐらいなのだが、オカルトGメンまで麻帆良に入り込むと、政治的にどうもね。」
「だから人員を貸してくれ、教導してくれ?」
「正直に言えば、そのとおりだ。」
なるほど、と深く考える横島君。
以前は子供の喧嘩のように争っていた二人だけど、最近は実に男の顔をするようになったと思う。
「教導、っていうなら、指揮権はないものとして考えていいっすか?」
「最低限の指揮権は持たせてもらうが、人事権は掌握しないことを保証する。あと、政府からの横やりもすべて突っぱねる方向で約束しよう」
「民間からの無茶からも守ってくれるか?」
「・・・確約する」
瞬間、横島君と西条君の手が握られていた。
・・・もしかして私、いらない子かしら?
ともあれ、ユエちゃんと何人かを派遣してもらえることになった。
実務経験者の派遣ということで、すごく期待してしまった私だった。
その期待は、いい意味で裏切られることになった。
最近、魔法使いとしての修行が進んでいないと感じている、ネギ=スプリングフィールドです。
もちろん、こんな事を打ち明けようものなら、ものすごい勢いで事態が動くこと請け合いなので、自己鍛錬にとどめています。
・・・魔改造は遠慮します。
そんな中、3Aから何人もの「GS」が生まれました。
横島霊能事務所に参加している方々で、いわゆる「横島パーティー」の参加者です。
パーティーの中で、長谷川さんはGS試験を受験しませんでした。
なぜかと聞いてみると、苦笑いで肩をすくめる。
「私は切り札の一枚だからな。露出は少ない方がいい」
実に戦略的に正しく、実に賢明な判断でした。
長谷川さんのAFは、恐ろしく強力で恐ろしく反則です。
彼女のAFが表の世界に公表されれば、かなりの確率で国や世界の干渉を受けるだろうことは間違いありません。
つまり、戦略的な判断を横島さんから任されていることに相違無いのです。
僕は心からの尊敬を込めて長谷川さんを賛美したのですが、彼女は苦々しく笑います。
「あのな、ネギ先生。自分が求めるものを相手が持っているからっていっても、相手が偉い訳じゃないからな?」
「え、で、でも、ぼくは僕の望む形の未来に近づくために・・・・。」
「で、勘違いする。何でも出来る万能型の天才なんか、この世界に何人もいない。そんな万能人間も一点集中型の天才には負けるんだ。自分の出来ること、自分のやりたいことに集中して才能を磨くべきだと思うぜ?」
「で、でもでも、何でも出来る方が・・・・」
「そんな奴に仲間なんて必要じゃないんだ。おまえには宮崎や雪広がいるだろ?」
・・・・!!!
僕はまた勘違いをしていたみたいです。
僕はあの戦いで学んだはずだったのに。
僕はあの修行で学んだはずだったのに。
僕はあの「魔改造」で学んだはずだったのに・・・。
「あのなぁ、ネギ先生。私がいくら言葉を重ねても、ネギ先生が普段どう感じてるかが一番重要だぜ? 今悩んでいることを無理に解決なんかしなくていいんだ。でっかい悩みはそのまま抱えて進め、時間が解決する問題の方が多いんだ、な。」
「・・・はい、長谷川さん!」
でっかい悩みは抱えて進め。
僕の胸の内に書き込まれた至言の一つになりそうです。
最近、横島君の関係者に純粋な霊能者が増えだした。
学園防衛を研修に使うだなんて、とガンドルフィーニあたりは怒ってるけど、私や弐集院あたりは歓迎している。
異なる体系の技術や知識、そして戦略は実に参考になるし、我々の在り方にも影響がある。
先日来、私の元に研修で来ることになった「一文字」君は、強面の私に物怖じせず、実に真っ直ぐに好意を寄せてくれる。
そんな様子に疑問を感じて正面から聞いてみたところ、彼女は微笑む。
「先生は、見た目マフィアっすけど、いい先生だって映画で知ってるっすから。」
正直に言う。恥ずかしかった。
しかしそれ以上に嬉しかった。
無理矢理、それもだまされるように出演した学生映画だったが、このような評価がいつまでもついて回り、見た目の誤解を和らげてくれる。
実に嬉しい。
しかし・・・・
「そんなにマフィアかね、私の見た目は。」
「はい。見た目はマフィア、声シチリアン、その実カモッラ、て感じっすよ?」
一文字君の意見を聞いて、周囲の魔法生徒はなぜか拍手。
そうか、そこまでか。
・・・妻に相談してみよう。
無理矢理ねじ込んだ形の麻帆良研修でしたが、いつの間にか六道の正式研修という形になっていました。
横島さんの政治力が働いた様子です。
学年だけで言えば、一学年上なだけの横島さん。
しかしその影響力は計り知れないものがあります。
GS協会、神魔、魔法世界。
聞く話によると月神族にも影響力があるとか。
わずか18、それも霊能の一族ではない一般人出身者としては破格の状態といえると思います。
そんな意味では、その影響力の庇護下に入れたことは存外の幸運であり、雪之丞のおかげの贔屓ともいえます。
むろん、その点を自分の実力と勘違いすることはありませんが、日頃の積み重ねの結果と言い切ってもいいのではないかと感じています。
「かおりさん、参りますわよ!」
「ええ、高音さん!」
魔法世界で知り合った、高音=グッドマンさん。
彼女とは呼吸が合う。
「「愛衣(さん)、遅れないでくださいね!」」
「は、はい!!」
彼女の後輩である愛衣さんも、なんだか六女の後輩みたいで可愛いかもしれない。
なにより・・・・。
「いきますわよ!」「よくってよ!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
この一体感、なんでしょう、こう、すごくいい!
「横島さんには感謝ですわ! かおりさんみたいな人を紹介してくださって!」
「私だって大感謝ですわ! 高音さんみたいな方と引き合わせてくれて!!」
「あーん、私の分も残してくださいーーー!」
ふふふ、このまま横島さんの事務所で修行ってわけにはいかないかしら?
六女のみんなには悪いけど、ウルスラへの交換留学は私が手に入れると心に決めてしまったわ。
もちろん、高音さん、六女に行っては嫌ですわよ?
「もちろんですわ、かおりさん。大歓迎ですわよ!」
「嬉しいわ、高音さん!」
躍動的で刺激的で、雪之丞が麻帆良から出たがらない理由の一端を感じた私は、この霊的な成長期を過ごすにふさわしい環境での新生活を夢見ていた。
「背中を預けることが出来る「相棒」と戦える、こんな幸せな環境が他にあるかしら? 高音さん」
「無いわ、ありませんわ!」
惜しむらくは高音さんが今年卒業だと言うこと。
お互いに惜しむ環境ですね。
「でも、かおりさん。あなたのような方に後を任せられるかもしれないと言うこと自体が私の幸せよ。」
もう私たちの中ではウルスラ留学が決定していた。
・・・横島さんに頼るしかなさそうだわ。
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