原発事故での避難指示 初めて解除4月1日 4時15分
3年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、福島県内に出されている避難指示のうち、田村市都路地区の避難指示が、1日午前0時に解除されました。
原発事故に伴う避難指示が解除されたのは初めてですが、放射線への不安などから、当面は避難先から自宅に戻らないという住民も多く、帰還をどう支援していくかが課題となります。
東京電力福島第一原発の周辺では、11の市町村にまたがって避難指示が出され、およそ8万1000人が区域の外への避難を強いられています。
このうち、田村市都路地区の116世帯、355人が避難している地域は、放射線量が比較的低いことから、住民の早期帰還を目指す「避難指示解除準備区域」に指定され、去年6月に、国による除染が避難指示区域の中で最も早く終わっていました。
このため、政府は、去年8月から、戻る準備のため、住民が特例的に自宅に宿泊するのを認めるなど、避難指示の解除に向けた準備を進めてきました。
そして、1日午前0時に、この地域に出していた避難指示を解除しました。
原発事故に伴う避難指示が解除されたのは初めてです。
解除された地区では、すでに自宅に長期的に宿泊し、原発事故前に近い生活を送っている住民がいる一方で、除染が行われたあとも、放射線量が高い場所が残っているという不安や福島第一原発のトラブルに対する不安などから、当面は、避難先の仮設住宅などに滞在し、自宅に戻らないという世帯も半数以上あるとみられています。政府は、住民に個人線量計を配布したり、除染の相談窓口を設けたりするなどしていて、住民の帰還をどう支援していくかが今後の課題となります。
避難指示区域とは
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、政府が避難指示を出している「避難指示区域」は、福島県の11の市町村の1150平方キロメートルの範囲で、対象となる住民は8万人余りに上ります。
避難指示は、▽半径20キロ圏内の地域は、事故翌日の平成23年3月12日に、▽その北西方向で、比較的、放射線量が高い飯舘村や葛尾村などの地域には、その1か月余りあとの4月22日に出されました。
この「避難指示区域」は、放射線量によって、3つの区域に分けられています。
▽年間の被ばく線量が20ミリシーベルト以下となる地域が、住民の早期帰還を目指す「避難指示解除準備区域」、▽20ミリシーベルトを超えるおそれがある地域が、引き続き避難を求める「居住制限区域」、▽50ミリシーベルトを超える地域が、長期にわたって居住を制限する「帰還困難区域」です。
避難指示区域では、原発事故の1年後のおととし7月に、田村市都路地区で初めて本格的な除染が始まり、去年6月、避難指示区域の中で最も早く除染が終了しました。都路地区は、これまで「避難指示解除準備区域」に指定されていて、今回の避難指示解除の対象となるのは、3月下旬の時点で116世帯、355人です。
避難指示の解除には
東京電力福島第一原発の事故に伴う避難指示を解除するのは、政府の原子力災害対策本部です。
解除の前提となるのは、年間の被ばく線量が20ミリシーベルト以下であることです。
そのうえで、さらに3つの条件を設けています。
1つは、▽電気、ガス、水道などのインフラや、医療、介護などの生活に関連するサービスが復旧すること、2つ目は、▽住民の生活環境で除染が十分に進むこと、そして、3つ目が、▽政府が県、市町村、住民と協議を行い、地域の実情を十分に考慮することです。政府が、ことし2月に開いた都路地区の住民との意見交換会で、赤羽経済産業副大臣は、放射線への不安などから解除に反対する一部住民に対し、「避難指示は憲法で保障されている居住の権利を制限する、極めて強制力の強い指示だ」と説明し、条件を満たせば政府が速やかに避難指示を解除することに理解を求めていました。
都路地区とは
福島県田村市の都路地区は、東京電力福島第一原子力発電所からおよそ15キロ離れた田村市の東の端に位置する山あいの地域です。
稲作を中心とした農業と林業が主な産業です。
おととし4月の区域の見直しで、「警戒区域」から「避難指示解除準備区域」に変更されたあと、去年6月、避難指示区域で最も早く国による除染が終わり、去年8月からは帰還に向けた準備ができるよう、特例として、住民に、長期の宿泊が認められています。
原発事故以前は、およそ120世帯が生活していましたが、過疎化が進んでいたうえに、田村市の中心部より大熊町など浜通りの自治体に生活圏があったことなどから、田村市は、住民に帰還を促すためには生活インフラの拡充が欠かせないとして、仮設の商業施設を整備したほか、大手コンビニエンスストアに委託して移動販売を始めています。
このうち、都路地区の中心部に建設された仮設の商業施設は、今月6日にオープンする予定です。
住民の帰還を進めるには
原発事故に伴う避難指示が初めて解除された福島県田村市都路地区で住民の帰還を進めるためには、除染後も、住民に残る放射線への不安にどう応えていくかや、住民の生活基盤をどう整えていくかが課題となっています。
都路地区の避難指示が出されている地域では、国による除染が去年6月に終わりましたが、住民からは、場所によっては放射線量が高い所が残っているとして、不安を訴える声が根強くあります。
また、林業や山林でのしいたけ栽培で生計を立ててきた住民からは、山林の除染にほとんど手が付けられていないことに対する不満の声も上がっています。
さらに、福島第一原発でトラブルが相次ぐなか、原発により近い自宅に戻ることに不安を抱いている住民が多く、原発の廃炉作業を安定的に進められるかどうかが、住民の帰還に大きく影響するとみられます。
一方、住民の生活基盤の整備も課題です。
都路地区には、もともと病院やスーパーマーケットなどがなく、原発事故の前は住民の多くが隣接する大熊町など浜通りの自治体の病院や商店を利用していました。
しかし、大熊町は、原発事故で全域が避難区域に指定され、解除の見通しが立たないままで、住民が、今、都路地区に帰っても生活の利便性の低下は避けられません。
こうした状況を受けて、国や田村市も住民への支援策を進めています。
国は、住民の放射線に対する不安を軽減しようと、希望する住民に個人線量計を配布して放射線量を把握したり、新たに設けた除染に関する窓口で個別に相談に応じたりする取り組みを進めています。また、生活基盤の整備については、田村市が地区の中心部に仮設の商業施設を作ったり、大手コンビニに委託して移動販売を始めたりしています。
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