世界の科学者や政府代表からなる国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は31日、横浜市で地球温暖化に関する最新報告書を公表した。20世紀末に比べて気温が2度以上上昇すると、生態系や気象などへの影響が大きくなり、食糧生産の減少や大規模な移住、紛争、貧困といった深刻な問題を引き起こすと指摘。世界各国は温暖化被害の抑制や温暖化ガス削減の加速が必要だとした。
報告書は横浜市での温暖化の影響を議論する総会で承認された。改定は2007年以来で、温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の基礎資料となる。
同日会見したIPCCのラジェンドラ・パチャウリ議長は温暖化について「地球上に影響を受けない人はいない。もし何も手を打たなければ影響は拡大する。不可逆的な影響が起こる臨界点を超えうることを考慮しないといけない」と警鐘を鳴らした。
報告書では気温が上昇した場合にあらゆる地域や分野に影響を与える懸念材料を挙げた。
2度上昇すると、各地域の農作物の生産や水資源などに影響を与える。3度では生物多様性は広範囲で損なわれると分析。地域別ではアジアで洪水や熱ストレスによる死亡、食糧安全保障などのリスクが高まると指摘した。「世界経済への損失は収入の0.2~2.0%」との試算結果もまとめた。
これらの現象を背景に8項目のリスクも列挙。海面上昇や高潮被害▽大都市での洪水▽極端な気象によるインフラの機能停止▽都市部で熱波による死亡や疾病▽気温上昇や干ばつによる食糧安全保障の脅威▽水資源不足と農業生産減少▽海洋生態系の喪失▽陸上生態系の喪失――が起こるとした。
IPCC、COP